Making of the Moon【柳宿side】

ガラガラッ
「柳宿!!鬼宿!!大丈夫だったか!?」
「白い虎」の扉を開けて、真っ先に駆けつけたのは夕城プロ
「夕城プロ・・・みんな・・・」
そこには、奎宿、昴宿、呂候、天文、そして美朱の姿があった
皆既に事情を知っている
「柳宿・・・鬼宿さん。この度はご迷惑をおかけしました」
呂候も駆け寄る
「みんな・・・ごめんなさい」
柳宿は、左腕に包帯を巻いていた
「今・・・警察と病院に行ってきました。柳宿は掠り傷です・・・。男は逮捕されました」
「大変だったろ・・・。とりあえず座れ」

事の詳細を、柳宿と鬼宿は交互に説明した
「よく・・・耐えたな」
「あたしには相談してくれたんだけど・・・何も出来ずにごめんね?」
「年寄りの俺らにしてやれる事は、限られてるからな」
夕城プロ、奎宿、昴宿は、柳宿の心中を思うと胸が張り裂けそうになった
「柳宿先輩・・・しっかりしてください」
美朱も後輩ながら、懸命に励ます
「僕の仕事の邪魔をしまいと・・・話さないでいてくれたんだね」
呂候は、申し訳なく感じていた
「とりあえず・・・柳宿のご両親にはこの事は黙っていてほしいそうです」
鬼宿が釘をさす
「しっかし、その友達鼻持ちならねぇな!!どうせ、柳宿が芸能人だからだかで、やってきた嫌がらせだろ!!」
「気にしない事だよ。柳宿ちゃん」
奎宿と昴宿は、怒りを隠せないようだった

「・・・翼宿」

そして、絞り出た言葉
皆が一斉に息を呑む
「来週・・・帰るんだよね?」
「そう・・・だよな。それで、きっとお前も元気になれるよ・・・」
「・・・いや」
夕城プロが重たい口を開く
「翼宿は・・・帰らない。さっき、事務所に連絡があったんだ」
「え・・・!?」
「どういう事!?お兄ちゃん!!」
「どうやら・・・あっちもあっちで、もめてるらしくてな。翼宿の友人が養成所内で嫌がらせを受けていて、帰るに帰れないと・・・」
「あいつ・・・」
鬼宿は、頭を掻き毟る
「柳宿先輩・・・」
それっきり、柳宿は口を噤んでしまった
天文は・・・何も言えなかった

ブロロロロロ
「じゃあ、ここで・・・」
「柳宿先輩。元気出してください」
「みんな・・・ありがとう」
柳宿は、自宅前で呂候と下車した

「柳宿・・・平気かい?」
「うん・・・大丈夫」
「今度から、何かあったら僕に何でも言うんだよ。遠慮なんていらないから。兄妹だろ?」
「ありがと・・・疲れたから、寝るね」
家に入ると、真っ先に柳宿は自分の部屋へ入っていった
バタン
♪♪♪
部屋に入ると、すぐに鳴る携帯
翼宿からのメールだった
『犯人捕まったん?よかったな。
すまん・・・事情があって、帰れなくなった。また近い内に電話するわ。ホンマにすまんな』
「うっ・・・・・・・・・・・・ひっく・・・」
唯一の希望だったのに
事情って何?友人って誰?
「翼宿・・・・」
一晩、突っ伏して泣いていた

しかし、次の日、世界は衝撃に包まれる

『「空翔宿星」鬼宿と柳宿熱愛か!?』
『翼宿がいない隙に、ライバルから奪い取った鬼宿』
『報道連続に、鬼宿遂に御用!?』

そんな見出しが、週刊誌やスポーツ紙を独占していたのだ

「これ・・・どういう事!?」
「信じられない~たま、柳宿と付き合っちゃったの?」
「いつの間に乗り換えてたの!?」
その写真には、鬼宿が柳宿を抱きしめている姿が捉えられていた

「柳宿。お前、どういう事なんだい?」
「翼宿さんとお付き合いしてるって・・・」
柳宿の両親は、驚きの表情を隠せない
「柳宿・・・」
呂候は、事情を知っている
しかし、言える訳がない

柳宿は、週刊誌を手に唖然とする事しか出来なかった
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