Making of the Moon【柳宿side】

♪♪♪
『今日は、平気か?』
今日もほぼ決まった時間に、翼宿からのメール
柳宿は満ち足りた気持ちになった
『今は、平気。ありがとう。翼宿』
すぐに返信してやる
たったこれだけのやりとりだけど、それだけでもよかった
連絡がつかなかった地獄の春に比べれば

「ただいま~」
そこに、兄の声
「呂候。お帰り」
母親が出迎える声も聞こえた
「いや~大成功だったよ。社長褒めすぎで、後が不安だなぁ」
呂候の笑い声
「兄貴・・・お帰り」
柳宿は、精一杯笑顔を作って出迎えたが・・・
「柳宿・・・痩せたかい?」
呂候は、すぐにその異変に気づいた
「え・・・そんな事ないよ。ダイエットダイエットv」
「でも・・・呂候。この子、最近変なのよ。部屋に閉じこもってばっかりで・・・」
「え・・・そうなの?」
「あ~もう!!お母さんも心配しすぎだよ!!課題があるから、部屋にこもってるだけだってば!!それより、兄貴!!仕事成功おめでとう!!」
家族にだけは、言ってはいけない

今日も、午後から学校だった
鬼宿も午後登校だったので、送ってもらった
「じゃあ、また帰りにな」
「ありがとう」
バタン
鬼宿の車は発進していった
すると、メール着信
翼宿からだった

『やっと時間空いたから、来週帰るわ』

目を疑った
(え・・・帰ってくるの・・・?)
遂に、翼宿と会えるのだ
「やったぁぁぁvvv」
思わず叫んでしまった
数日ぶりの喜び
今日はいい事がありそうな・・・そんな気がした

しかし、帰りに鬼宿の迎えが遅くなると連絡があった
仕方がないので、自習室で譜読みをしていた
「お。柳宿。居残りか?」
そこに、仲の良い教授がやってきた
「はい・・・連れの迎えが遅くなるので」
「デートかぁ?ったく・・・のろけるなよv」
「そんなんじゃないですよ~」
「あのなぁ。柳宿。まだ時間あるか?レポート用紙・・・そこまで買ってきてくれないかな。僕、論文があって、手が離せなくてさ」
「いいですよ!!」
仲の良い教授の頼みなら、断れなかった
今日は・・・大丈夫だろう。
そう思ってしまった

「あれ~?柳宿、帰らないの?」
途中、薫と鏡花に会った
「ちょっと、教授の買い物行ってくる!!じゃあね!!」
柳宿は、手を振りながらその場を通り過ぎる
「何か珍しくご機嫌じゃない?」
「・・・・・・・・・・・・」

大学から少し離れたスーパー「朱雀マーケット」
レポート用紙を購入し、柳宿は元来た道を引き返す
しかし・・・何か違和感がした
コツコツコツコツ
自分より数メートル離れた背後から足音がする
しかし、速度を緩めると、その足音の速度も遅くなる

つけられてる

全身の血の気が引いた
やはり、まずかったか
後ろは振り返れない
その時
Pllllllllllllllll
鬼宿から、タイミングよく着信
『柳宿か!?おい。お前、今どこだ!?』
「たま・・・助けて・・・!!」
『柳宿・・・!!』
「つけられてる・・・こっち来る・・・」
『おい!!落ち着け!!今、どこだ!?』
「朱雀マーケットのすぐ裏の路地・・・」
『待ってろ!!すぐ行くから!!』
しかし、携帯を切った柳宿に、犯人は襲いかかった
「大人しくしろ!!!」
「嫌・・・離してっ!!!」
犯人は覆面を被っていて、誰だか分からない
襟に手がかかる
「たまっ!!!」
「このやろっ!!!!」
鬼宿が路地裏から飛び出してきて、間一髪犯人をねじ伏せた
「何やってんだ!!言え!!誰に言われたんだよ!?」
「ぐっ!!鏡花って奴に・・・言われたんだよ。柳宿・・・ムカつくからつけてやれって・・・!!」
柳宿の震えは止まらない
(鏡花が・・・!?)
「警察だ!!動くな!!」
その後ろから、警官も駆けつけ、事態は御用
「柳宿・・・平気か!?」
鬼宿が来てくれた
「たま・・・ごめ・・・あたし・・・」
ショックで、震えが止まらない
鬼宿は、静かに抱き寄せてくれた
「大丈夫・・・もう大丈夫だから・・・な?」

カシャッ
静かに茂みの中からシャッター音が聞こえた
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