Making of the Moon【翼宿side】
『杏。君のライブハウスデビューが決まったよ』
翌朝、MICHEALは笑顔で杏に話しかけてきた
『MICHEAL・・・あたしは・・・』
『まぁ、良い機会だろう。Pole氏は、私が説得しておいた。思う存分やってみるがいい』
MICHEALは、いつも親切だ
しかし・・・何より一番申し訳なかったのは翼宿だった
翼宿は、レコーディング中だった
既にたくさんの地方からオファーが来ているという事で、翼宿の音源を配布する事が既に決定済だった
ちゃんと・・・お礼を言わなければ
スタジオの前に着いた時、そこにいたのは魄狼だった
「魄狼はん・・・」
「やぁ。今度のバンドに君も来る事になったんだって?」
彼の瞳は冷たかった
「あの・・・あたしは・・・」
「いい迷惑だよね。大して努力もしていない君がさ、俺らと一緒にやるなんて。本当に自信あるの?大体、翼宿をボーカルにしたかったのに、お前がボーカルになったせいで、あいつはベース。俺はギターに回されたんだぜ?」
その冷たすぎる言葉に、杏の心は深く傷ついた
「翼宿だって・・・迷惑な筈だ。断るなら、今の内だぞ」
魄狼は、ゆっくりと近づいてきた
「それとも・・・僕の女になったら考えてやってもいいぞ」
「・・・・・・・・・・・・嫌っ!!!」
パンッ
杏は、魄狼の頬を殴るとそのまま駆けて行った
その光景を、玲は陰から見てしまった
「お疲れ様です~」
その数時間後、翼宿のレコーディングは無事に終了した
『きっといい音源が出来るよ。ご苦労だった』
Poleも、手を叩いている
「ありがとうございます・・・光栄です」
「翼宿さん。お疲れ様でした」
玲が珈琲を手渡す
「ありがとうございます。何かすんません」
「いえ・・・・・・・・あの。翼宿さん。私、さっき見ちゃって・・・」
「何をですか?」
『杏さんがバンドに引き抜かれた件について・・・スタジオの前で魄狼さんに杏さんが責められていたのを見たんです。結構ひどい言葉かけられてて・・・杏さんも傷ついたと思うんです』
今日も浮かない顔をして、英語を教える杏
そんな彼女をじっと見つめる
「なっ・・・何なのぉ?さっきから人の顔じろじろ見て!!」
「や・・・何でも」
「ほれ!!集中せぇって!!もう少しで養成所出て、外に出るんやろ!?英語喋れんと、恥ずかしいで」
その言葉に、杏は自ら気落ちする
「翼宿・・・あたし」
「すまんな・・・」
翼宿は謝罪した
「え・・・?」
「玲さんに聞いた。偉いきつかったやろ」
「そんな・・・・・・・あたし、あんたにお礼が言いたくて・・・」
「あの人、ベースにプライド持っとったから、少し頭に血が上ってるだけやと思うんや。俺も恨まれてると思うで」
「翼宿・・・あんたこそ、憧れの人やのに・・・」
「俺はえぇねん。女のお前にはきつかったやろ」
迫られて、とっても怖かった
自分の前には、今こんなにも安心できる優しさがある
杏の頬を涙が伝った
「あ・・・・・・あたし・・・やってける自信ないんや。大して上手くもないのに・・・翼宿達とやるなんて・・・やっぱりあたしには・・・」
「それは・・・あかん」
翼宿の制止の言葉
「MICHEALは、お前にチャンスを与えたんや。俺が言うたからとか結局関係ない。あんなに音楽好きやったやないか・・・。泣き言言うな。いずれはお前も外に出ていかなきゃならんのやで?」
「翼宿・・・」
「俺がおる・・・一緒に頑張るで。・・・・・・・大体、外はお前に英語フォローしてもらわんとな」
苦笑いする翼宿に、杏は泣きついた
「翼宿・・・たすきぃ~・・・」
そこで微かに思い出した日本で待つ妹の姿
それが重なり、翼宿は杏の頭をそっと撫でた
柳宿の着信に気付かずに・・・
翌朝、MICHEALは笑顔で杏に話しかけてきた
『MICHEAL・・・あたしは・・・』
『まぁ、良い機会だろう。Pole氏は、私が説得しておいた。思う存分やってみるがいい』
MICHEALは、いつも親切だ
しかし・・・何より一番申し訳なかったのは翼宿だった
翼宿は、レコーディング中だった
既にたくさんの地方からオファーが来ているという事で、翼宿の音源を配布する事が既に決定済だった
ちゃんと・・・お礼を言わなければ
スタジオの前に着いた時、そこにいたのは魄狼だった
「魄狼はん・・・」
「やぁ。今度のバンドに君も来る事になったんだって?」
彼の瞳は冷たかった
「あの・・・あたしは・・・」
「いい迷惑だよね。大して努力もしていない君がさ、俺らと一緒にやるなんて。本当に自信あるの?大体、翼宿をボーカルにしたかったのに、お前がボーカルになったせいで、あいつはベース。俺はギターに回されたんだぜ?」
その冷たすぎる言葉に、杏の心は深く傷ついた
「翼宿だって・・・迷惑な筈だ。断るなら、今の内だぞ」
魄狼は、ゆっくりと近づいてきた
「それとも・・・僕の女になったら考えてやってもいいぞ」
「・・・・・・・・・・・・嫌っ!!!」
パンッ
杏は、魄狼の頬を殴るとそのまま駆けて行った
その光景を、玲は陰から見てしまった
「お疲れ様です~」
その数時間後、翼宿のレコーディングは無事に終了した
『きっといい音源が出来るよ。ご苦労だった』
Poleも、手を叩いている
「ありがとうございます・・・光栄です」
「翼宿さん。お疲れ様でした」
玲が珈琲を手渡す
「ありがとうございます。何かすんません」
「いえ・・・・・・・・あの。翼宿さん。私、さっき見ちゃって・・・」
「何をですか?」
『杏さんがバンドに引き抜かれた件について・・・スタジオの前で魄狼さんに杏さんが責められていたのを見たんです。結構ひどい言葉かけられてて・・・杏さんも傷ついたと思うんです』
今日も浮かない顔をして、英語を教える杏
そんな彼女をじっと見つめる
「なっ・・・何なのぉ?さっきから人の顔じろじろ見て!!」
「や・・・何でも」
「ほれ!!集中せぇって!!もう少しで養成所出て、外に出るんやろ!?英語喋れんと、恥ずかしいで」
その言葉に、杏は自ら気落ちする
「翼宿・・・あたし」
「すまんな・・・」
翼宿は謝罪した
「え・・・?」
「玲さんに聞いた。偉いきつかったやろ」
「そんな・・・・・・・あたし、あんたにお礼が言いたくて・・・」
「あの人、ベースにプライド持っとったから、少し頭に血が上ってるだけやと思うんや。俺も恨まれてると思うで」
「翼宿・・・あんたこそ、憧れの人やのに・・・」
「俺はえぇねん。女のお前にはきつかったやろ」
迫られて、とっても怖かった
自分の前には、今こんなにも安心できる優しさがある
杏の頬を涙が伝った
「あ・・・・・・あたし・・・やってける自信ないんや。大して上手くもないのに・・・翼宿達とやるなんて・・・やっぱりあたしには・・・」
「それは・・・あかん」
翼宿の制止の言葉
「MICHEALは、お前にチャンスを与えたんや。俺が言うたからとか結局関係ない。あんなに音楽好きやったやないか・・・。泣き言言うな。いずれはお前も外に出ていかなきゃならんのやで?」
「翼宿・・・」
「俺がおる・・・一緒に頑張るで。・・・・・・・大体、外はお前に英語フォローしてもらわんとな」
苦笑いする翼宿に、杏は泣きついた
「翼宿・・・たすきぃ~・・・」
そこで微かに思い出した日本で待つ妹の姿
それが重なり、翼宿は杏の頭をそっと撫でた
柳宿の着信に気付かずに・・・