Making of the Moon【翼宿side】

入寮してから一ヵ月・・・
翼宿は、養成所でコツコツと音楽の勉強を始めた
ボーカルとベースの両立はハードではあったが、それなりに充実していた
『最近、ますます伸びているね。感心だよ』
MICHEALも、その稽古ぶりを感心して見ている

「翼宿さん。今日もお疲れ様でした」
「玲さん。いつも悪いな。遅くまで残ってもろて」
「いいえ・・・外人に話しかけられたりしたら、翼宿さんも大変ですから・・・」
「おおきに。感謝してるわ」
「はいは~い!!翼宿!!今日も勉強!!」
突然、杏が横から突っ込んでくる
「玲さん。いつもすみません!!うちの翼宿、中学時代馬鹿だったもんで、英語に手つけてないんですよ~でも、今が頭の使い時なんで、フル作動させて英語もしっかり覚えさせますんで!!」
「お前なぁ・・・」
「じゃ、お疲れ様でしたぁ!!」
「あ・・・お疲れ様でした」
杏は翼宿を引っ張り出すと、そのまま部屋へ連れて行った

「はい!!三人称単数は完璧ね!!次、過去形の使い方!!」
「へいへい・・・」
「本当にやる気あるん~?天下のアーティストが英語の一つも喋れないなんて恥ずかしいで!?」
「やる気あるがな・・・毎日毎日部屋にあがりこんで遅くまで勉強・・・敵わんわ」
「そんな事言って~感謝しとる癖にv」
杏は毎日稽古が終わると、二時間みっちり翼宿の英語の勉強に付き合っていたのだ
「それにしても、通訳の玲さん?綺麗な人やね~vあんたに惚れとるんとちゃうの?」
「阿呆な事言うなや。あの人、こっちに旦那おるやろ?」
「そうなん?まぁ、外人さんが黙っちゃいないだろうけどね~v」
コンコン
「翼宿さん。Pole氏がお呼びです」
「あ・・・はい」
そこに、玲のノックの音
「すまん。ちょいと行ってくるわ」
「は~い。行ってらっしゃい」
翼宿が退室したその時
♪♪♪
着信が鳴った
「あ・・・電話」
翼宿の携帯だった
着信相手をチラリと見て
言葉を失った

『WORLD CALL 柳宿』

(柳宿・・・?って・・・あの同じメンバーの子・・・?)

そのまま、固唾を飲んでその場を見守る
留守電の応答が入る
ピーーーー
『翼宿・・・。あたし・・・。久し振り。元気してた?久々にあんたと話がしたくて・・・時間ある時でいいので、電話待ってます』
静かに電話が切れる
杏はその携帯を手に取る
翼宿の小指の指輪がフラッシュバックした
(まさか・・・まさか・・・やっぱり、あの二人は・・・)
指は勝手に携帯を開いていた
震える指で「留守録音」消去
そして・・・「着信履歴」一件削除

やっと見つけた運命の人を・・・手放したくはない
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