Making of the Moon【翼宿side】

『先日、LAのライブハウスで元「空翔宿星」のベーシスト翼宿さんが復活ライブを行いました。観客は国内国外合わせて3000人が招待されました。小さなライブハウスが溢れかえる事態になりました。応募は、このライブだけでも1万通を超えていて、今後の翼宿さんの活躍が楽しみです』
一ヵ月経っても、このニュースは全国で鳴りやまない

「よし・・・」
そんな報道を横目に、翼宿は荷物の整理を終えた
「翼宿~Poleさんが車の準備出来たってよ」
「はい。今、行きます」
今日は・・・日本に帰る日

車には、稽古場の大勢の子どもたちが集まっていた
「翼宿。お疲れ。三年間よく頑張ったな」
米原も清々しい笑顔で立っていた
「おう。お前もオーディションに引き抜かれたそうやないか。しっかり気張って来いや」
「お前なんか抜かしてやるからな~見てろよ!!」
『翼宿』
『元気で』
かつて、Wolfでギターとドラムを務めてくれた外国人のメンバーも声をかけてきた
『ああ・・・また、どこかでな』
「翼宿・・・」
そして、小さな小さな存在
「翼。練習怠けてないか?」
「怠けてへん!!高次にライバル宣言されてから、死に物狂いや!!」
高次とは、米原の下の名前だった
高次は、へへへと悪戯っぽく笑う
「お前ら、えぇライバルなんやな。お互い頑張れや」
翼宿は、翼の頭を撫でた
翼の頬には、たくさんの涙の跡
「母ちゃん、大事にしたれよ」
「うん・・・うん・・・」
「泣いてばっかいたら、頼りないやろが」
「俺・・・俺・・・いつか日本に帰って・・・翼宿を抜かすベーシストになるんや」
「そら、楽しみや」
「俺の事・・・忘れないでいてくれな!!!」
「覚えてたら・・・な」
「馬鹿にすんなぁ!!!」
そのまま、翼宿は笑いながら車に乗り込んだ
静かに車は発進する
翼は、その後を追いかけた
「翼!!」
「翼宿!!俺は絶対に忘れへんからなぁ!!!!お前が俺にベース教えてくれた事も、母ちゃん助けてくれた事も全部全部・・・絶対・・・・・・・・・・・・・・・絶対、また会おうなぁ!!翼宿ぃ!!!!」
聞こえたかは分からない
だけど、確かに見えた
車の中から、翼宿が片手をあげて合図してくれたところを

『Left for Japan is 15:30 PM・・・』
「じゃあ、俺らはここで」
魄狼、玲、MICHEAL、Poleは搭乗口まで翼宿を見送った
「ああ・・・皆さん。どうもお世話になりました」
「また、いつでも連絡しろよ!!俺ら、いつでも待ってる」
「日本でもお体にお気をつけて・・・あまり無理をなさらないように」
「ありがとうございます・・・お二人には偉い感謝してます」
『翼宿・・・先日のライブ本当に素晴らしかった。私はお前を選んで本当によかったと思っているよ』
『私も・・・お前をプロデュースして学んだ事がたくさんある。お前のようなアーティストをこれからも生み出していくよ』
MICHEALとPoleも笑っていた
『・・・ありがとうございます。色々ご迷惑をおかけしました。本当にこんな俺を拾ってくださってありがとうございます』
「そろそろ、時間だな」
翼宿は頷く
玲と一瞬目が合ったが、静かに微笑む
「じゃあ・・・・・・・・・・・・・・また」
「翼宿さん・・・」
涙が零れる
静かに翼宿は歩きだした
「翼宿さんっ!!!」
ゲートに響く大声で名前を呼ぶ
翼宿は振り向いた
「私・・・・・・・・・・・・絶対に忘れません!!翼宿さんと・・・杏さんと・・・みんなで過ごした三年間を!!翼宿さんも・・・忘れないでください!!」
翼宿は微笑むと、静かに頷いた
飛行機は飛び立つ

飛行機の中、居眠りをしている時夢を見た
とてもとても懐かしい香りのする空間
そこに、翼宿はいた
「たぁすきっ!!!!!」
うざったいくらい元気なその声
振り向くとそこには、杏がいた
「杏・・・?」
「終わったんやね・・・何もかも」
「お前・・・どないして」
「あんまり時間ないから、さっさと用件言うで!!」
「え・・・?」
「ずーっと、見とったよ!!空の上で・・・あんたの事」
「杏・・・」
「色々あったなぁ。玲さんのスキャンダルが一番ハラハラしたで~」
「お前・・・」
「やけど、また更にかっこよくなったで、翼宿。怪我して妥協したって、翼宿はかっこいいまんまやった!!」
「・・・・・・・・・・・・・」
「あたしは、そんな翼宿が世界一好きや!!」
「杏・・・」
「日本でも走り続けるのやめんでよ!!ずっとずっとみんなの一番星でおってな!!」
「・・・ああ」
「ずっと見てるで・・・あたしも・・・みんなも・・・」
そのまま、杏は消えていく
最後に見た杏は、泣きながら笑っていた

ザワザワザワザワ
溢れかえる日本語
溢れかえる日本人
うざったいくらい人が多い東京・朱雀駅
「・・・・・・・・・・・・カルチャーショックや」
キャリーバッグを引きずり、ベースを背負い翼宿は歩く
何人かが雄たけびをあげるのが分かる
きっと自分が何者か気づいているのだろう
サングラスの内側でそんな事を思った
すると
ニャ~vvv
懐かしいその声
見下ろすと、小さな小さな愛しき存在
「タマ・・・・・・・・・・・・・・・・久し振りやな」

きっと無駄じゃなかったこの三年間
そしてこれからも道は続く
また、あいつらと夢を奏でよう
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