Making of the Moon【翼宿side】
♪♪♪
ベース音が、今日も真夜中の稽古場に響く
左手もだいぶ回復してきた
だけど、まだ以前のような完璧さは見せない
後一ヵ月も、自分がここに残れる時間は残されていないのだ
業績など、以前の自分にはどうでもよかった事
だけど、今はどこか心細さを覚える
「よう」
途端に後ろから声をかけられて振り向く
「魄狼さん・・・」
「久し振りだな」
「どこ行ってたんすか?稽古場に全然見当たらないから心配して・・・」
「ちょっとな」
横に腰掛ける魄狼
「だいぶ、指動けるようになったじゃん」
「・・・前よりは・・・ですけどね」
「それでも進歩だよ。俺、お前がここでこっそり夜中に練習してた事は知ってた」
「そうだったんすか」
「なぁ・・・翼宿。最後にもう一度メディアに出演して帰りたくないか?」
「え・・・?」
「俺、地元のライブハウスとテレビ局に頭下げてきたんだ。少し不自由なベーシストのライブをさせてくれませんかって」
「魄狼さん・・・」
「弾きにくい箇所は、俺がフォローするよ。そういうのお前は嫌だろうけど」
「嫌だなんて、そんな・・・」
そこで沈黙になる
「・・・・・・・・・・・・完璧にやろうとしてないか?」
「え・・・?」
「そういう姿勢は大事だ。この世界は甘えが通用しないって、お前自身が一番よく分かってる事だからな」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「だけどさ。甘える事は悪い事じゃないと思うぜ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「お前は、たくさんの人を支えてきた。そんなお前になら、みんなは喜んで力を貸してくれる筈だ」
「俺・・・」
「俺も、お前がここで頑張ってた証を残したいんだよ」
証を
「・・・・・・・・・・・・・俺は」
1月31日
雪が今日もちらついている
そんな中、「バンドパワーミュージック」が行われたライブハウスは今日も人がごったがえしている
「・・・・・・・いよいよですね」
『こっちまで緊張するな』
『大丈夫なのだろうか』
「翼宿の晴れ舞台やぁvvv」
玲、MICEHAL、Pole、そして翼は心中複雑そうにライブハウスのポスターを見上げる
『Return to TASUKI』
「よう。準備は万端か?」
「まぁ、何とか」
「いつも通りやろうぜ。俺がフォローしなくてもぶっちゃけいいくらいの腕に戻ったよ。お前」
「気のせいですよ」
楽屋で言葉を交わす翼宿と魄狼
かつての憧れとの夢のツインベース共演
「あいつも・・・見てくれているよ」
その言葉に、翼宿は懐から一枚のパスケース
「・・・・杏。俺、もう一度やってみるからな」
『翼宿ぃ!!失敗したら承知せぇへんよ!!アイス一個奢って貰うでv』
あいつが来ていたら、きっとこんな嫌味が聞こえてきただろうか
「魄狼さん・・・俺」
魄狼が、翼宿を向く
「・・・・・・・・・・・・・本当に幸せでした。この三年間」
「・・・・・・・・・あぁ」
「また・・・・・・・・・・どこかで会えますよね」
「・・・・・・・・・・・・・当たり前だろっ!!本番前から泣かせるな!!!」
『出番です』
その声で、バックバンド、魄狼、そして翼宿の順に、彼らは華やかなステージへと歩を進めた
ベース音が、今日も真夜中の稽古場に響く
左手もだいぶ回復してきた
だけど、まだ以前のような完璧さは見せない
後一ヵ月も、自分がここに残れる時間は残されていないのだ
業績など、以前の自分にはどうでもよかった事
だけど、今はどこか心細さを覚える
「よう」
途端に後ろから声をかけられて振り向く
「魄狼さん・・・」
「久し振りだな」
「どこ行ってたんすか?稽古場に全然見当たらないから心配して・・・」
「ちょっとな」
横に腰掛ける魄狼
「だいぶ、指動けるようになったじゃん」
「・・・前よりは・・・ですけどね」
「それでも進歩だよ。俺、お前がここでこっそり夜中に練習してた事は知ってた」
「そうだったんすか」
「なぁ・・・翼宿。最後にもう一度メディアに出演して帰りたくないか?」
「え・・・?」
「俺、地元のライブハウスとテレビ局に頭下げてきたんだ。少し不自由なベーシストのライブをさせてくれませんかって」
「魄狼さん・・・」
「弾きにくい箇所は、俺がフォローするよ。そういうのお前は嫌だろうけど」
「嫌だなんて、そんな・・・」
そこで沈黙になる
「・・・・・・・・・・・・完璧にやろうとしてないか?」
「え・・・?」
「そういう姿勢は大事だ。この世界は甘えが通用しないって、お前自身が一番よく分かってる事だからな」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「だけどさ。甘える事は悪い事じゃないと思うぜ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「お前は、たくさんの人を支えてきた。そんなお前になら、みんなは喜んで力を貸してくれる筈だ」
「俺・・・」
「俺も、お前がここで頑張ってた証を残したいんだよ」
証を
「・・・・・・・・・・・・・俺は」
1月31日
雪が今日もちらついている
そんな中、「バンドパワーミュージック」が行われたライブハウスは今日も人がごったがえしている
「・・・・・・・いよいよですね」
『こっちまで緊張するな』
『大丈夫なのだろうか』
「翼宿の晴れ舞台やぁvvv」
玲、MICEHAL、Pole、そして翼は心中複雑そうにライブハウスのポスターを見上げる
『Return to TASUKI』
「よう。準備は万端か?」
「まぁ、何とか」
「いつも通りやろうぜ。俺がフォローしなくてもぶっちゃけいいくらいの腕に戻ったよ。お前」
「気のせいですよ」
楽屋で言葉を交わす翼宿と魄狼
かつての憧れとの夢のツインベース共演
「あいつも・・・見てくれているよ」
その言葉に、翼宿は懐から一枚のパスケース
「・・・・杏。俺、もう一度やってみるからな」
『翼宿ぃ!!失敗したら承知せぇへんよ!!アイス一個奢って貰うでv』
あいつが来ていたら、きっとこんな嫌味が聞こえてきただろうか
「魄狼さん・・・俺」
魄狼が、翼宿を向く
「・・・・・・・・・・・・・本当に幸せでした。この三年間」
「・・・・・・・・・あぁ」
「また・・・・・・・・・・どこかで会えますよね」
「・・・・・・・・・・・・・当たり前だろっ!!本番前から泣かせるな!!!」
『出番です』
その声で、バックバンド、魄狼、そして翼宿の順に、彼らは華やかなステージへと歩を進めた