Making of the Moon【翼宿side】

ティールームで・・・ひとまず落ち着いた二人
「すまんね・・・いきなり泣き出してしもて」
「いや。別に気にしてへん」
「あたし・・・こっちでも中々友達出来ひんくて・・・。結構孤独やってん」
「まぁ、ここで友達作るんは難しいんとちゃうか?」
いかにも個性派揃いといった感じだろうか
翼宿は、苦笑いしながら煙草を吸う
「相変わらず煙草ぉ~中学からずっとその銘柄やね?」
「何覚えとんねん」
「全部覚えとるよ~あんた、今より派手やったやん。あの頃!!」
「じゃかあしなぁ・・・昔の事ばっか」

「ずっと・・・忘れへんかった」

杏は、頬を染めていた
「しっかし、あんたまで歌手~?あたしの真似すんなや!!」
「たまたまやって。メンバーの中で歌えるのが俺しかいいひんかったんや!!」
「「空翔宿星」も、全部見とったよ!!あんたらのアルバム輸入されとったからねぇv」
「そら・・・おおきに」
「まさか、ここに来るなんて思わんかったよv」
杏はすっかり笑顔に戻っていた
「どないするん?寮とか入寮するん?やっぱ・・・あんたは売れっ子やから、高級なホテルに泊まるんかいな?」
「いや・・・あの固いベッドはもうえぇわ。俺も入寮する」
きゃあっ
その時、ティールームの外から女子の歓声が聞こえてきた
「あんた・・・早速モテモテやんv迂闊に入寮して襲われでもしても知らんよ?」
「外人は・・・勘弁せぇや」
「あんた、英語一回も受けとらんかったもんね!!あたしが教えたるよ!!」
「えぇやん。今更~・・・」
その時、翼宿の小指で光るリングに杏は気づいた
「あんた・・・もしかして付き合ってる人おるん?」
翼宿は珈琲を飲む手を止めた
「ま・・・なぁ。付き合ってるいうか・・・」
「せやけど、日本におるんやろ?反対されなかったん?」
「反対・・・そら、めちゃくちゃされたで」
「どんな子なん~?写真とかないん~?」
「んなもん、持ち歩いとらんわ」
さすがに杏も、同じメンバーの柳宿と付き合っているなど気づく筈はなかった
その時が来るまでは・・・

『翼宿。本当にいいのかい?部屋ならもっといい部屋を用意してやるのに』
「えぇですよ。普通の生活で。んな身分違いみたいな事したくありませんし」
『そうか?窮屈になったら、いつでも言うんだぞ?』
その夜から、翼宿は養成所の寮に入った
MICHEALから鍵を渡され、翼宿は部屋に入る
中はホテルほど立派な設備はないが、かなり整っていた
「こっちのが自由やわ」
コンコン
ノックの音がした
「はい?」
翼宿がドアを開ける
そこには・・・どこかで見かけた顔の青年が立っていた
「翼宿だね」
「はい・・・」
「君を待っていたよ」
途端に差し出された手
「あの・・・?」
「俺は魄狼。君と同じ日本のベーシストだ」
その名前を聞いて、翼宿はハッとなった
中学時代、自分がベースにハマった頃に憧れを抱いた人物
「魄狼はんっ・・・ホンマですか!?あなたもLAに・・・」
「君が大活躍している間にね・・・日本は君が何とかしてくれるだろうと思ったから。よく来てくれた」
憧れの存在との再会だった
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