Making of the Moon【翼宿side】

定期から取り出した一枚の写真
それは、学生時代に撮ったたった一枚の宝物
杏の笑顔を見ながら、考える
俺から、杏へのアンサーソング
最高の恩返しになると思う
この笑顔に支えられたから
海外に来て、誰よりも不安だったのは自分自身だ
それを見抜いてか、杏は毎日明るく接してくれていた
だから、自分も自分であれたのだ
翼宿は、万年筆を走らせた

『翼宿!!』
「たま・・・元気やったか?」
『お前こそ・・・心配してたんだぞ!!よかったよ・・・連絡取れて』
「すまんな。色々立てこんでて・・・」
『無理すんなよ。辛かったら、いつでも帰ってきていいんだぞ』
「いや・・・まだ、帰る訳にはいかない。まだ、やる事があるんや」
『そっか・・・お前がいいなら、俺は何も言わないよ』
「お前は、どうなんや?」
『ああ・・・先日、バイト先の奴を脅してた暴力団が捕まったよ。俺は、怪我しちまったけど』
「ホンマか!?大丈夫なんか!?」
『平気だよ。もうすぐで完治する』
「お前こそ、無理すんなや」
『お前もな!!また、連絡する!!』
元気な親友の声に、安堵する

バタン
玲が帰る音だった
「玲さん?」
「あ・・・翼宿さん」
玲の表情は、強張っていた
「・・・どないしたんですか?」
「え・・・何でもないです」
玲の息は、少しあがっていた
走ってきたみたいだ
「晩御飯すぐに作りますね!!」
何かを隠されているようだった

Plllllllllllllll
『もしもし?』
次の日、大体歌詞が書き終わった翼宿に、一本の電話
『翼宿か?俺だよ』
「魄狼さん・・・元気でしたか?」
『それは、こっちの台詞だぞ!!少し落ち着いたかなと思って』
「ライブでは、お世話になりました」
『あれ以来、顔出してないだろ?心配してたんだぞ!!』
「今度・・・稽古場に遊びに来てください」
『おぉ・・・じゃあ、酒持って訪ねてってやるよ!!・・・・・・・・あのさ。翼宿』
「はい?」
『玲さん・・・最近、様子おかしくねーか?』
「特に何も・・・」

『どうやら、旦那さんにつけられてるみたいなんだよ。この前、MICHEALに相談しながら泣いてたの聞いちゃって』

なぁ。杏
俺は、大事な人を今度こそ護れるだろうか
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