Making of the Moon【翼宿side】
「UNIVERSAL MUSIC FES. GUEST:Wolf」
そのポスターは、ユニバーサル・ドームの壁一面に大きく貼られていた
客や報道陣が詰めかけている
「ひぇ~・・・すげー人だな」
「さすが・・・世界規模のフェスタですね」
車の中から、「Wolf」一行はドームを見上げる
「翼宿さん・・・平気ですか?」
「えぇ・・・」
口数が少ない翼宿に、同行していた玲は声をかける
♪♪♪
本番前・・・一服中に着信が鳴る
向こうで待つ彼女からだった
「もしもし・・・」
『もしもし。翼宿・・・?』
「・・・・・・・・・・久々やな」
『あの・・・翼宿・・・あたし・・・』
「すまんな。メール返せんで」
『あの・・・杏さん・・・』
その言葉に、翼宿は黙る
『やっぱり・・・・・・・・・そうなんだね』
「何や・・・知ってたんか」
『裏で流れてるニュースで・・・教えてもらった』
「・・・・・・・・そか」
『翼宿・・・あたし・・・』
「心配すんな。こっちは大丈夫やから」
『大丈夫って・・・』
「すまん。これからライブなんや・・・後で、ちゃんと電話する」
『分かった・・・』
動揺を隠せない自分がいた
もはや、彼女の事などすっかり忘れていたから
『それでは、本日のゲストをご紹介します。今、最もUSAで熱いインディーズバンド「Wolf」の皆さんです!!』
司会者も観客も、誰も杏の死を知らない
普通の紹介、普通の歓声
「行くぞ・・・」
魄狼が、皆を促した
バックバンドがステージへ出て、チューニングを始める
ボーカルは、最後まで舞台袖にスタンバイする
しかし、翼宿は今回ベースボーカルに再び復帰した
魄狼は、またギターに出戻り・・・それは、本望ではあったが
舞台の中央には、翼宿のベースが輝いていた
そして、遂に翼宿の登場
翼宿が出てくると思わなかった観客は、一斉にざわめき始める
『どういう事!?』
『このバンドって、翼宿のバンドだったの?』
『こんばんは。Wolfです』
珍しい翼宿のMC
『本来・・・ボーカルは別にいました。水無月杏という女です』
神妙な雰囲気に、皆が静まり返る
『だけど・・・あいつは、11月の夜明け前天国へ旅立ちました』
分かっていた
翼宿は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・泣いていた
必死に唇を噛みしめている
『ここに立つのは、あいつの夢でした』
翼宿は、すっと顔をあげる
『俺が・・・・・・・・・歌います』
奏でられたのは、魄狼のギター
演奏は始まった
彼女が歌った「Life」「No name」「GAP」
彼女の名曲は、いつまでもドーム内に響いていた
そして、「Wolf」は解散した
「曲が書けないって・・・」
それから年が明けた
翼宿は・・・相変わらずあの稽古場にこもりっきり
様子を見にきた玲に、Poleはそう告げた
「・・・・・・こっちの養成所に戻らないという要求は飲んだが・・・一人になりたかったのかもしれない。よほどショックだったんだろう」
翼宿は、完全に杏の死に呪縛されてしまっていたのだ
そのポスターは、ユニバーサル・ドームの壁一面に大きく貼られていた
客や報道陣が詰めかけている
「ひぇ~・・・すげー人だな」
「さすが・・・世界規模のフェスタですね」
車の中から、「Wolf」一行はドームを見上げる
「翼宿さん・・・平気ですか?」
「えぇ・・・」
口数が少ない翼宿に、同行していた玲は声をかける
♪♪♪
本番前・・・一服中に着信が鳴る
向こうで待つ彼女からだった
「もしもし・・・」
『もしもし。翼宿・・・?』
「・・・・・・・・・・久々やな」
『あの・・・翼宿・・・あたし・・・』
「すまんな。メール返せんで」
『あの・・・杏さん・・・』
その言葉に、翼宿は黙る
『やっぱり・・・・・・・・・そうなんだね』
「何や・・・知ってたんか」
『裏で流れてるニュースで・・・教えてもらった』
「・・・・・・・・そか」
『翼宿・・・あたし・・・』
「心配すんな。こっちは大丈夫やから」
『大丈夫って・・・』
「すまん。これからライブなんや・・・後で、ちゃんと電話する」
『分かった・・・』
動揺を隠せない自分がいた
もはや、彼女の事などすっかり忘れていたから
『それでは、本日のゲストをご紹介します。今、最もUSAで熱いインディーズバンド「Wolf」の皆さんです!!』
司会者も観客も、誰も杏の死を知らない
普通の紹介、普通の歓声
「行くぞ・・・」
魄狼が、皆を促した
バックバンドがステージへ出て、チューニングを始める
ボーカルは、最後まで舞台袖にスタンバイする
しかし、翼宿は今回ベースボーカルに再び復帰した
魄狼は、またギターに出戻り・・・それは、本望ではあったが
舞台の中央には、翼宿のベースが輝いていた
そして、遂に翼宿の登場
翼宿が出てくると思わなかった観客は、一斉にざわめき始める
『どういう事!?』
『このバンドって、翼宿のバンドだったの?』
『こんばんは。Wolfです』
珍しい翼宿のMC
『本来・・・ボーカルは別にいました。水無月杏という女です』
神妙な雰囲気に、皆が静まり返る
『だけど・・・あいつは、11月の夜明け前天国へ旅立ちました』
分かっていた
翼宿は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・泣いていた
必死に唇を噛みしめている
『ここに立つのは、あいつの夢でした』
翼宿は、すっと顔をあげる
『俺が・・・・・・・・・歌います』
奏でられたのは、魄狼のギター
演奏は始まった
彼女が歌った「Life」「No name」「GAP」
彼女の名曲は、いつまでもドーム内に響いていた
そして、「Wolf」は解散した
「曲が書けないって・・・」
それから年が明けた
翼宿は・・・相変わらずあの稽古場にこもりっきり
様子を見にきた玲に、Poleはそう告げた
「・・・・・・こっちの養成所に戻らないという要求は飲んだが・・・一人になりたかったのかもしれない。よほどショックだったんだろう」
翼宿は、完全に杏の死に呪縛されてしまっていたのだ