Making of the Moon【翼宿side】

「翼宿ーv」
杏は、翼宿の元へ駆け寄る
「よ。今日もお疲れさん」
「毎日忙しいのに・・・ありがとね。ライブ来てくれて」
「何言うてるん。最近、調子えぇやないか」
杏のバンドは、最近ライブ出演に引っ張りだこだった
まだ地元枠ではあるが、確実にファンを集めている
「この調子だと、翼宿を抜かしてまうかもねv」
「何やと?それだけは、許さん」
杏は、嬉しそうに笑う
「おい。スタッフが呼んでるぞ」
「はーい。あ。今日、打ち上げにみんなでご飯行くんだv翼宿も行かへん?」
「・・・・・・・・ま、たまにはえぇか」
「やったぁvほな、後でなーv」

杏は、パタパタと駆けて行った
「だいぶ伸びてますね」
「あぁ。特に杏がなぁ・・・頑張ってるから」
翼宿は、魄狼と喫茶室で話をしていた
「ありがとうございます。杏の面倒見てくださって」
「いやいや~最初はあいつ一人残るって聞いて、どうなるかと思ってたけどさ。あいついると、賑やかで楽しいや」
そんな魄狼を見て翼宿は勘付いた事があるが、敢えて口に出さなかった
「そういえば・・・Poleさんに何かされてないか?」
「へ?別に・・・連絡もありませんよ」
「いや。なら、いいんだけどさ。翼宿の事毛嫌いしてるみたいだし」
「気にしてません・・・俺には、MICHEALさんがおりますし」
「玲さんも・・・か?
翼宿は、吸っていた煙草の煙でむせた
「ごめんごめん~そんな動揺しなくても~」
「みんな・・・からかうんですよ、そうやって」
その場に沈黙
「正直・・・困ってますわ。玲さん、ストレートやし」
「やっちまったのか!?」
「何言うてるんですか!!積極的とゆーか・・・何とゆーか」
魄狼は、はぁと腕組みをした
「ビジネスと私情ごっちゃにされるとまずいよな。俺からMICHEALさんに相談してみようか?」
「いやーそれは、彼女に悪いですよ」
「お前も・・・本当にお人よしだな」
「よう言われますわ」
「・・・・・・・・・・・・じゃあ、杏は?」
「杏・・・?」
「どうなんだよ?中学から一緒らしいじゃねぇか」
「杏は、大事な友達ですよ。妹みたいで手かかるし・・・」
「大事な友達ねぇ」
「何ですか?」
「いや」

『へ・・・?』
『杏。来月にドーム公演のゲストに「Wolf」がゲスト出演する事になったよ』
スタッフから聞かされた驚きの真実
『ホンマですか!?あたし達がドームに・・・』
『そこで、各界の有名なメディアも来る。もしかしたら、メジャーデビューも有かもしれないぞ?』
夢のようだった
遂に、自分の夢が叶う

「翼宿に報告せなv」
一旦、寮に荷物を置いてから翼宿を迎えに行く事になっていた
途中、Poleの部屋の前を通りかかった
『翼宿の奴、最近売上が落ちているな』
Poleの声に、杏の足が止まる
『残っていれば、私が大物にしてやれたのにな。そうしたら、うちの事務所の株もあがる。いい金づるだったのに・・・もったいない』
「なっ・・・」
『まぁ、あんな顔だけの男、その内泣いて日本に帰るのが落ちだろ。あの頭なら、暴走族にでもなれる・・・』

同じ頃、翼宿も事務所に来ていた
魄狼に、ベースの機材など余ったものを貰いに来ていたのだ
「これで、全部だな」
「すんません・・・こんなにたくさん」
「いいんだよ。いずれは、俺が腕を認めた弟子にでもやるつもりだったし」
「弟子?」
「お前は、もう俺を越してるか」

「翼宿を侮辱するんやない!!!!」

杏の怒鳴り声
Poleの部屋から聞こえてくる
「杏・・・?」

「あたしの大好きな翼宿は・・・絶対に暴走族なんかやらん!!音楽の為におるような男や!!あんたみたいに金に使う汚い男に使われてたまるもんか!!!」
『杏・・・何を興奮しているんだ!?』
日本語が通じないPoleは、ただ興奮している杏に首を傾げる
「翼宿はなぁ!!!誰よりも優しくて強い男なんやで!?あたしは・・・昔から知ってる。絶対に尻尾巻いて逃げん!!!!」
「杏・・・」
「あいつ・・・」
翼宿と魄狼は、部屋の外からその光景を目の当たりにした
「あいつ・・・阿呆」
翼宿が、興奮する杏を制止する
「翼宿・・・」
杏の目には、涙が浮かんでいた
「変に顔しかめるなや。せっかくの化粧が崩れるで」
「だって・・・」
魄狼が、間から英語でフォローを入れた
片手では、行けの合図
「ほれ。行くで」
翼宿は、杏を連れ出す

嬉しかったけど、悔しかった
妹に庇って貰うなんて、兄として失格だ
そう。いつしか杏は・・・二人目の妹的存在だった
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