Making of the Moon【翼宿side】

パタパタ
「翼宿!!もう平気なのかね?」
廊下で翼宿とMICHEALはすれ違う
「平気です。すぐにレコーディングの準備してください」
顔色も戻り、翼宿は微笑む
MICHEALの後ろからは玲
「玲さん・・・どうもすんませんでした。その件はご迷惑をおかけして」
「いえ・・・お元気になられて何よりです」
玲も、何事もなかったかのように微笑んだ

「少し休憩~」
休憩室に飲み物を買いに行こうとした杏は、そこで翼宿とばったり会う
ちょうど、煙草を買うところだった
Pi
黙って、翼宿の立っていた煙草販売機のボタンを押す
カコン
「・・・おい」
「どうせいつもこの銘柄やん。えぇやろ?」
「・・・練習どうなんや?」
一本煙草をくわえて、翼宿は問う
「あのベースに出戻りしたお兄さんが腹立つけど」
「まぁまぁ」
翼宿は笑う
「すっかり元気になったみたいやね」
「すまんな。お前にも心配かけたみたいやな」
「・・・・・・・・・・・・・玲さんのお陰やないの?」
杏はそっぽを向いている
「何拗ねとんねん」
そんな杏の頭をごつく
「何する・・・」
翼宿の顔を直視して、杏は顔が赤くなった
見てしまったキスシーン
「もう!!翼宿の阿呆!!」
そのまま駆けだしてしまった
「何や・・・あいつ?」
翼宿は首を傾げる

見てしまったキスシーン
そして、自分がしてしまった行い
二つの過去が、杏の心を締め付ける
「あたし・・・一番格好悪いやん」

『話がある』
そんなメールを受信したのは、夕方
柳宿からだった
Plllllllllllll
『もしもし?』
「もしもし」
『ごめんね・・・いきなりメール・・・』
「いや。こっちも、ちと体調崩してて・・・」
『平気?倒れたんだって?』
「一日で治ったから、平気やて」
『あたしのせいだよね・・・』
「いや。そんな事は・・・」
『あたし、重いでしょ?いつまでもいい人ぶらなくていいよ』
「柳宿?」
『あんたには・・・今やるべき事があるもんね。今いるべき人もいるし。部外者だもんね、あたしは・・・』
「どないしたんや?柳宿・・・」

『距離置こう・・・・・・・・・・・・・あたし達』

世界的規模の距離へ
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