Making of the Moon【翼宿side】

「翼宿さん!!柳宿さんの発言は真実なんですか!?」
「いい加減教えてください!!日本でも騒がれ続けていますよ!!」
LAのライブハウスでのライブを終えた翼宿に駆け寄る報道陣
しかし、それをひたすら無視する翼宿

「お疲れ・・・みんな。いいライブだったよ」
LAでのライブは大成功は大成功だったのだが・・・
この騒動で、客のほとんどは報道陣ばかりだった
「すんません・・・色々と騒ぎに巻き込んでしまって」
「翼宿のせいやないよ・・・」
「俺、抜けますわ。しばらくソロでやっていきたいんです」
「え!?」
杏はその発言に驚いたが、無理もない
魄狼は動じることもなく、こう返す
「仕方がないな・・・君と演奏出来て光栄だったよ」
そのまま、ギターを背負って翼宿の横を通り過ぎる
「・・・苦労人だな。せいぜい頑張れよ」
かつて尊敬した人物から浴びせられた侮辱
それにも顔色ひとつ変えない翼宿
杏は、それに気付いていたが

「翼宿・・・翼宿!!」
「何や」
廊下で、杏は翼宿を呼びとめる
「あんた・・・えぇの?魄狼さんとは、もう・・・」
「えぇんや。あんまソリ合わなかったようや。やっぱ理想と現実はちゃうんやな」
いつも通りの微笑み
しかし、杏は叫んだ
「弱音吐いてえぇんやでっ・・・たすき・・・」
「は?」
「だって・・・辛いやん。毎日養成所の中でも外でも睨まれとって・・・」
翼宿は呆気に取られていたが、笑うと杏の頭をガシガシと撫でた
「お前に俺を支える覚悟があるんかぁ?とてもさっきまでビクビクしてステージ立ってた奴には出来んでv」
「冗談やないて・・・あたしっ・・・」
「おおきにな。けど、平気や。きちんと玲さん達と帰れや」
翼宿はそのまま片手をあげて、出て行った

「翼宿さん。相当参ってますよ」
陰から出てきた玲
「玲さんっ・・・!?今の聞いて・・・」
「ごめんなさい。お邪魔してはいけないと思って。だけど・・・翼宿さん、私も心配です」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「私は許せません・・・日本であんな発言を軽率にした柳宿さんに対して」
「玲さん・・・?」
「アメリカで翼宿さんがどんな目に遭うか分かっていた筈です。スキャンダルは日本だけにしてほしかったです」
杏と玲は、同じ事を考えていた
あのままだったなら、いつかこっちでの騒動はおさまっていた筈なのに

『だから、知らないと言っているだろう!!部外者は入らないでくれ!!』
MICHEALも、必死に養成所の門を閉めている
『大変な事になったな』
『Pole社長・・・すみません』
『まぁ、その方が売上が伸びる。会社としては都合がいいものだ』
『Pole社長・・・?』
「すんません・・・今、戻りました」
『おぉ・・・翼宿。平気だったか?』
「何とか・・・」
どうやら、杏から教えられた英語も板についたようだ
日常会話程度の英語ならこなせるようになった
『君も疲れているだろう?今日は、休みなさい』
「すんません・・・」
しかし、一歩進み、翼宿はその場に身を崩した
『おい・・・翼宿!!平気かね!?』
「平気です・・・どうも、すんません・・・」
疲労が溜まる
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