Making of the Moon【翼宿side】

『そうか・・・そっちも大変なんだな』
「すんません・・・ぬか喜びさせて」
『いいんだよ。また落ち着いたら、連絡くれ。こっちも柳宿をつけていた犯人が捕まったとこなんだ』
「ホンマですか!?・・・あいつの事、頼みます」
翼宿は、電話を切って溜息をつく
あっちも大変だが、こっちも大変だ
魄狼の杏への嫌がらせ
しかし、杏には言ってはいけない
明日も、また稽古があるのだ
「翼宿・・・」
そこに、杏がやってきた
「何や。どないした?」
「あんた・・・まさか、日本に帰らんの?」
「・・・あぁ。聞いとったんか」
「何で・・・?あたしのせい?」
「ちゃう言うてんねやろ。お前に悪い虫がつかんように、少し見張っておきたいんや」
「翼宿・・・」
杏は、頬を染める
「平気か?明日の稽古くらい休んだらどうや?」
「平気・・・頑張る」
意外な返事に、翼宿は驚いた
「あたし・・・知ってんねん。多分・・・あんたとの出演を妬んだ誰かがやったんやろ?」
「それは・・・分からんが」
「だったら、あたしはそれを見返せるように頑張らなあかんねん」
「杏・・・」
翼宿は微笑んで、杏の頭を撫でた
「よう・・・言うたな」
「あんたにも申し訳ないしね」
「ほな、明日からみっちり稽古つけるで」
二人は、笑い合った
そんな光景を、玲は心中複雑そうに見守っていた

しかし

翌日の朝食を終えた席に、杏が飛び込んできた
「翼宿!!翼宿!!」
「何や。騒がしい・・・」
「ちょっと来て!!今朝のネットニュース!!」
パソコンのところに、無理矢理連れてこられて・・・目を疑った
『「空翔宿星」鬼宿と柳宿熱愛か!?』
『翼宿がいない隙に、ライバルから奪い取った鬼宿』
『報道連続に、鬼宿遂に御用!?』
「何や・・・これ」
そこには、鬼宿と柳宿が抱き合っている写真が掲載された報道の数々があった
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