Making of the Moon【翼宿side】

『今は、平気。ありがとう。翼宿』
今日も、柳宿のメールを見て安堵する
あれから、翼宿はなるべくまめにメールをしてやるようになった
別に、今柳宿が大変だからとかじゃなくて
やはり恋人を心配してやるのが、彼氏として普通だろうと

「今日の練習はこれまで!!」
魄狼の号令で、皆の動きが止まる
「杏」
魄狼の声で、杏は恐る恐る振り向く
「よくなったじゃないか。もっと頑張れ」
まさかの言葉に、杏は驚いて声も出なかった

『翼宿。お疲れ様。ライブが決まったよ。10月にLAのライブハウスで予約が取れたよ』
MICHEALがニコニコ顔で、文書を渡す
「何かすんません。何から何まで・・・」
『楽しみだよ。なぁ?玲』
「はい!!頑張ってください。翼宿さん!!」
「あの・・・それで、MICHEAL。俺・・・来週、ちょっと日本に報告に行ってもえぇですかね?」
『日本に・・・?・・・そうだな。お前もだいぶ頑張ったからな。向こうのメンバーの事も心配だろう』
「ありがとうございます・・・」

『そっかぁ!!来週日本に!!分かった!!酒用意して待ってるよ!!』
久々の電話の夕城プロの声は弾んでいた
『忙しいだろ!!二人には、俺から連絡入れとくよ!!』
「ありがとうございます」
電話を切って、すぐさま柳宿にメールを入れる
『やっと時間空いたから、来週帰るわ』

「ふふっvやっぱ、努力は実るもんやなぁv魄狼はんに褒められたって事は、自信持ってえぇよねv」
杏はるんるん気分で、階段を降りていた
ヒュウッ
嫌な風が吹いた

『本当!?嬉しい・・・待ってるね』
その返事を確認して、翼宿は携帯を閉じた
見ると、階下に杏の姿
そして・・・次の瞬間、翼宿は目を疑った
「杏!!!!!!!!!!!!!!!!」
杏の頭上から、花瓶が降ってきていた
ガシャーーーーーーーーーーーーーン
「・・・・・・・・・・・・・っ!!!!翼宿!!!」
翼宿が間一髪杏を庇った
そして、翼宿の足には花瓶の破片が突き刺さっていた
頭上では、何人かの外人の女性の笑い声

「ひどい・・・誰がこんな・・・」
玲が騒ぎを聞いて駆けつけ、MICHEALの部屋で手当てをした
『この養成所に・・・こんな事をする奴がいるのか?』
MICHEALも頭を抱えた
「大事に至らなくてよかったですね・・・」
「ああ。こんなん平気です。すんません」
杏はその横で泣いている
「おい。泣くな。えぇ歳してみっともないで」
「ちゃう・・・ちゃうよ・・・。翼宿・・・あたし・・・ごめんなぁ・・・」
「杏さんのせいではないですよ」
『そうだ。責任を感じるな』
玲とMICHEALが励ます
「ちょっと・・・杏の身が心配で・・・しばらく寮の部屋、MICHEALはんの部屋の隣にしてやってくれませんか?」
翼宿の心配
『構わないよ。秘書室を使うがいい。玲と同室なら安心だろう』

とりあえず、事態を報告にと、翼宿は魄狼の部屋を訪れた
しかし、そこにはこんな笑い声が
「はははっ・・・ざまぁみろだよ。杏の奴」
「これで、ステージ立てなくなるんじゃねえかぁ!?」
「しっかし、魄狼。女使うなんて、さすがマダムキラーだなv」
「まぁ、翼宿とバンド組む時点で、杏に反感持ってた女なんていくらでもいたしな!!ちょろいちょろい!!」
魄狼が仕掛けた事だと、すぐに分かった
「お・・・煙草切れた。買ってくるわ」
そこで、魄狼が外に出てきた
「・・・翼宿」
そこで、魄狼は事の事態に気づいた
「・・・・・・・その足」
「杏が逃げ足遅かったんで」
翼宿の表情は冷たかった
「魄狼はん・・・俺、あんたの事買い被りすぎてました」
そのまま、足を引きずるようにその場を後にした
そこで気づいた事の深刻さ
あいつを置いて・・・今、日本には戻れない
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