Making of the Moon【鬼宿side】

ブロロロロ
「柳宿・・・大丈夫か?」
「うん・・・平気」
「帰りは17時頃だよな?その辺りにここで待ってるから」
「ごめんね・・・わざわざ」
「平気平気!!」
あれから・・・鬼宿が夏休み中、柳宿を大学まで送る毎日になった
柳宿は、実習があり夏休み中も学校へ行かなければならなかったからだ

「はぁ・・・」
そのまま向かうは、自分の専門学校
今日は梨香との初練習日
「大丈夫かな・・・」
不安が募る

「おはようございます!!」
スタジオに入ると、梨香が元気よく挨拶をした
既に個人練習をしていたらしい
「早いな!!何時からいたんだ?」
「7時からです!!教えてもらってばかりも悪いので、自分で勉強してました!!」
その情熱に、鬼宿は感動した
(ちゃんとドラムへの情熱がある子なんだな)
安心した

「鬼宿先輩!!お疲れ様でした!!」
「いやいや。梨香ちゃん、思ったより上手くてびっくりしたよ。もっと自信持っていいから!!」
「ありがとうございます!!嬉しいです!!鬼宿先輩、今度ランチでも行きましょうねvさよならv」
返事を返す前に、梨香はパタパタと駅へ走っていってしまった
「んー・・・これで、よかったのかなぁ」
溜息をついて、車に乗ろうとしてふと噴水の傍を見た
「あれ?幸樹」
友人の幸樹が、噴水のベンチで俯いていた
「幸樹!!」
「・・・鬼宿」
「お前。どうしたんだ?夏休み中に、こんなとこで!!」
「お前こそ・・・どうしたんだよ?」
「あ・・・俺は、その・・・かくかくしかじか。何か暗くね?」
「・・・鬼宿。ちょっと時間あるか?」
「・・・・・あぁ」
柳宿との待ち合わせまで少し時間があった

専門学校の向かいに建つ喫茶店に入る
「どうしたんだよ?」
「俺・・・実は」
幸樹は俯いたままだった
「借金取りに追われてて・・・」
体はブルブル震えていた
「え・・・借金取りって・・・お前一人暮らしだろ?」
「先日お袋が死んで・・・反抗してた俺に、親父が返済先を指定したんだよ。お陰で、夏休みに入ってから毎晩追われる始末で・・・。鬼宿。俺を助けてくれ!!頼む!!」
「お・・・俺に出来る事なら、するよ・・・。だけど・・・どうすれば」
「金を貸してほしい・・・」
「いくらだ・・・?」

「300万」

芸能界引退の身といえど、大きすぎる額だった
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