Making of the Moon【鬼宿side】

『私・・・葉山梨香っていいます!!もし良ければ・・・連絡ください!!』
受け取った花束と手紙を眺め、鬼宿はため息をついた
まさか・・・自分のファンが自分にドラムを教えてほしいなんて
確かに、自分はもう芸能界の人間ではない
しかし、自分の経歴がこんな形で関わってくるなんて、思わなかった
「どうすっかなぁ・・・」
Pllllllllllllllll
「どわっ!?」
『着信 美朱』
「美朱・・・」
何てタイミングが悪い
恐る恐る電話に出る
「もしもし」
『もしもし?鬼宿?』
「おぉ・・・美朱か。どうした?」
『今日・・・専門学校に行ったんだよねぇ!!』
その言葉にドキリとする
「そっ、そうだったのか!?」
『・・・見ちゃった』
鬼宿はため息をつく
「あ・・・あのな。美朱!!」
『ま・・・しょうがないよね。どうするの?鬼宿』
「・・・どうするったって・・・」
『一度、お兄ちゃんに相談してみたら?』
「へぇ!?」
『いいアドバイスしてくれるかも』
その淡々とした口調に、やはり怒っているのかと感じた
「・・・怒ってるか?」
『別に』
「ごめんな。せっかく迎えに来てくれたのに。今度・・・ランチ行こうか?美味いトコ連れてってやるよ!!」
『・・・うん』

「ファンに指導ねぇ・・・」
久々に「白い虎」で顔を合わせた二人は、うーんと頭を抱える
「良いものかなぁ。そんな事したら、お前更に引っ張りだこだぞ?」
「そうなんすけどねぇ・・・」
「いいじゃねえか!!稽古のひとつやふたつ!!来週から夏休みなんだろ!?」
「あんた馬鹿だね!!美朱ちゃんは、どうするのさ!?」
一緒に、奎宿と昴宿も話を聞いていた
「まぁな。夏休みくらいなら・・・その代わり、美朱にもちゃんと会ってやれよ?」
「分かりました」
「あいつ・・・昨日相当拗ねてたからなぁ」

「あ・・・そういえば、鬼宿」
奎宿と奎介が話に盛り上がっている間を縫って、昴宿が鬼宿に声をかけた
「どうしたんすか?」
「ちょっと・・・」
裏に呼び出される
「あんた・・・柳宿ちゃん。今、どうしてるか知ってる?」
「え・・・どうしたんすか?」
「あの子・・・ストーカーに遭ってるみたいなんだよ」
「ストーカー!?」
「そりゃあ・・・無理もないよね。あんな美女が大学に通ってるんだもの」
「それで・・・今、柳宿は・・・?」
「親御さんに言うと、大学行かせて貰えなくなるって。呂候さんは今日から出張みたいだし、心配かけるから夕城プロには言えないみたいだし、あんたにしか面倒頼める人いなくてね」
「分かりました・・・。俺が、大学に送り迎えくらいはしてやれますから」
大事なメンバーの危機を放ってはおけない
しかし、この決断が大きな誤解を招く事になる
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