Making of the Moon【鬼宿side】

「そっかぁ~翼宿と連絡取れたかv」
『ありがとぉ~たまのお陰だよ!!』
「俺のお陰じゃねえよ。とりあえずよかったな。柳宿」
柳宿の喜びの電話を受け、鬼宿も安心した
しかし、きっと翼宿は海外でもモテているに違いない
変な虫が寄り付かなければいいがと・・・鬼宿も不安になった

・・・が、心配は他人だけに留まらなかった

「きゃ~~~~~~~~~~~~~~鬼宿~vvv」
「こっち向いて~~~v」
専門学校の方はというと
女性が黙っている訳ではなかったのだ
実習を行う度に、聞こえてくる女性の黄色い声
鬼宿は、現役時代にはこんなに人気があると思っていなかったので、少々戸惑う毎日である
「お疲れ。大変だな」
「幸樹!!」
専門学校で初めて友達になった男性・幸樹
有名人だからといって一目置かない、好青年で優しい男性だった
「彼女怒るんじゃねえかぁ?毎日毎日こんなんで」
「もう慣れたよ。美朱が学校に来なければとりあえず平気」
「だけど、お前偉いなぁ~今のままでも十分腕立つのに、自主練とかもしてんだろ?」
「まぁなぁ。もうあの頃みたいに夢なんてないけどさ。可能性があるだけやってみようかなって。お前だってベース頑張ってるだろ?」
「そうだな。お宅のベースには及ばないけどな」
幸樹は、ベースを始めたきっかけが翼宿の影響だと言う

「きっかけか・・・」
その日の講義を終え、鬼宿は帰路についていた
自分たちの音楽が今でも色々な人に影響を与えているのは嬉しい事だ
そんな生の声も、日本に帰ってきたから聞ける事
リーダーだった鬼宿は、無邪気にそれを喜んでいた
その時
バサッ

「鬼宿・・・もう講義終わった頃だよねvこっそり迎えに来ちゃったv」
美朱は、専門学校の校門に来ていた
そこで見た光景
「・・・誰・・・?あの子」

「鬼宿さん!!ずっと・・・ずっとあなたに憧れていました!!」
その花束を持った少女は、まっすぐに鬼宿にこう言い放った
「私のドラムの師匠になってください!!」
きっかけは、時に思いもかけない波乱を呼ぶ
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