Making of the Moon【鬼宿side】

「鬼宿・・・よく言ったな!!お前も遂に進学か!!俺達は実の息子が第二の人生を歩んでくれるようで嬉しいよ!!だけどな・・・鬼宿」
「何?お師匠」
「誰がお師匠だ!!てめぇ、俺らの居酒屋はプライベートルームじゃねえんだぞ!!勉強くらい家でやれ家で!!」
「いいじゃないですか~俺らのプライベートルームですよ。ここは」
鬼宿は、それから居酒屋「白い虎」で、朝から晩まで勉強するようになった
「まぁ、いいじゃないか。あんた!!あたしらは、空翔宿星お墨付きの居酒屋なんだしさ!!」
女将の昴宿が、呆れ顔の亭主の奎宿を宥めながら、鬼宿の机に茶を置く
「さっすが女房!!話が分かりますねv」
「あたしをナメないでおくれよvその代わり、絶対頑張るんだよ。鬼宿!!絶対合格v」
「分かってますよ~」
「鬼宿v差し入れ貰ってきたよv」
「美朱!!丁度腹減ってたんだよ!!」
「おめえら~・・・ここはデートスポットじゃねえって・・・」

「美朱ぁ?何やってるんだ?」
「ん~?あ。お兄ちゃん!!鬼宿の合格祈願のお守り作りv」
「合格・・・?」
「あれ~?お兄ちゃん知らないの~?鬼宿、専門学校受験するの」
「何だってぇ!?」
「お酒ばっかり飲んでないで、お兄ちゃんも少しは鬼宿の話聞いてあげなよ!!」

「よし・・・ここのリズム譜は完璧・・・っと。次は・・・」
♪♪♪
「夕城プロ・・・?」
鬼宿は、勉強中に突然の着信を受けた
「もしもし?」
『鬼宿か?勉強中か?』
「夕城プロ・・・急にどうしたんすか?」
『ちょっとだけ・・・「白い虎」に来てくれないか?』
「え・・・?」

ガラガラッ
「おう。鬼宿。お目見えだぞ」
「夕城プロ。一体どうしたんすか?」
「鬼宿・・・お前という奴は・・・」
突然、夕城プロががばと机に顔を伏せた
「えぇ!?」
「どうして美朱には言って、俺には言ってくれなかったんだぁ!!」
「何の事ですか・・・?」
「鬼宿。あんた、奎介に言わなかっただろう?受験の事」
「あぁ!!言ってませんでしたっけ!?」
「お前・・・仮にも空翔宿星の親に向かって・・・」
「すみませんでしたぁ~・・・俺すっかり言ったものだと・・・」
「まぁ、お前が腱鞘炎になった時は、俺が美朱より先だったから・・・無理もないかもしれないが・・・正直お兄ちゃんショックだったぞ」
「すみません~」
鬼宿は、半ば土下座状態で夕城プロの前に座った
「で・・・鬼宿。ものは提案なんだが」
「何すか?」
「その専門学校なら・・・うちの事務所が提携している。お前ほどの実力、すぐにコネで入れてやってもいいんだぞ?」
「夕城プロ・・・?」
「お前の夢・・・素直に応援したい」
「夕城プロ。コネはいいですよ」
鬼宿は、笑顔で返した
「鬼宿?」
「俺・・・一般人と同じく自分の力で入りたいんです。受かっても落ちても・・・」
それが、第二の人生
普通の人間
「・・・そうか。それは余計な提案をしたな。何かあったら・・・いつでも俺に相談するんだぞ」
「ありがとうございます!!」
奎宿も昴宿も、その光景を温かく見守っていた
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