Making of the Moon【鬼宿side】

「明日面接!?」
「ああ。ほぼ受かったようなもんだけどなv」
既に、鬼宿の手元には様々な会社案内の資料
「きっといち早くやる気が認められたんだよ!!頑張らなきゃね、鬼宿v」
もう、4月は目前に迫っている
最後の賭けだった
「美朱・・・ありがとな。応援してくれて」
「ううん!!その代わり、あたしの受験も応援してもらうからね!!」
鬼宿は、そっと美朱の手を掴んだ
「へ・・・」
静かに、寝台に押し倒す
「鬼・・・宿・・・?」
「そろそろ・・・・・・・・・・・いいかなって」
鬼宿は、静かに微笑んだ
「・・・・・・・・・・・・そう・・・だね」
美朱は、静かに目を閉じる
後少しで唇が重なりそうになる
Plllllllllllllllllllll
「「へ・・・?」」
二人は、携帯を見る
『ただいま、電話に出る事が出来ません。ピーという発信音の後にご用件をどうぞ』
ピーーーーーーー
『たーまーほーめー。もう寝る時間だよなー?試験に響くから、とっとと寝ろよー?美朱に手を出そうもんなら、俺はお前を・・・』
ピーーーーーーー
そのまま、留守電の時間切れ
「寝るか・・・」
「そうだね」
二人は顔を見合せて、笑った

試験当日
「う・・・帰りてぇ」
「何言ってんの!!ここまで来て尻尾巻いて逃げるの!?」
美朱が、後ろから思い切り背中を叩く
「・・・・・・・俺、受かると思う?」
「あたしは・・・信じてる!!だから、思いきって行ってきなさい!!」
「・・・おう!!」
鬼宿は、意を決して歩を進めた

コンコン
「失礼します・・・」
鬼宿は、約束の五分前に会議室の扉をノックする
「初めまして。今回お誘いをいただいた鬼宿です」
「おお・・・よく来てくれたね、鬼宿君」
蔵本が立ちあがる
「さあ。とりあえず座りなさい」
真ん中の社長格といった感じの男性が、椅子を薦める
「さて・・・君は芸能界出身のトップのドラマーだ。だけど、贔屓にするつもりはない。君の音楽に対する価値観を聞かせてもらおうか」
鬼宿は、ひとつ深呼吸をした
「はい・・・」
「鬼宿君。君にとって音楽とは何ですか?」
俺にとっての音楽・・・
「・・・・・・・・・・・音楽とは、自分と大切な人全てを繋ぐネットワークだと思っています。俺は、この世界を通して様々な人間との出会いがありました。恩師や親友、ファンの存在。どれが欠けても成り立たない。喜びも悲しみもみんなで共有していける。音楽を始めるという事は、新しい自分が始まる事なのだと思います。音楽に引っ込み思案になっている人たちに、俺は教えてあげたい。一歩踏み出す勇気が新しい世界への架け橋なのだという事を」
あまりにもベタすぎる自分なりの言葉
格好つけすぎただろうか
「すみません・・・出しゃばった事ばかり」
「いいや。素晴らしい」
社長は、パンパンと手を叩いた
「生半可な気持ちで音楽をやっている者からは、決して出ない言葉だよ」
蔵本も、笑った
「君を是非採用したい。新しい世界を切り開いていこう、我々と共に」
次は、このパワーを未来の子供たちへ捧げよう
35/41ページ
スキ