Making of the Moon【鬼宿side】

「兄ちゃんーvv」
日曜日、家族が全員でやってくる
「親父!!忠栄、春敬、玉蘭、結蓮!!」
鬼宿の顔が、ぱっと輝く
「兄ちゃん、会いたかったぁ~」
「いきなり、海から落ちたなんて連絡が来た時はどうしようかと思ったぞ」
「ごめんな~みんな。親父。ちょっと脱臼しただけだよ。もうすぐ治るからさ」
鬼宿は、まだ包帯が巻かれている右腕を曲げて見せた
「あまり無理をするな。家事も、春敬や玉蘭も手伝ってくれるようになったし、もう少し休んでもいいんだぞ」
「本当か!?やっぱ、お前ら二人も兄ちゃん姉ちゃんになったんだなぁv」
春敬と玉蘭は二人で胸を張る
「結蓮も~もうお姉ちゃんだもん!!」
「結蓮は、もう少し先かなぁ~」
「まぁ、その調子だとしばらくドラムは無理だな・・・」
父親がため息をつく
「大丈夫だよ。俺、鍛えてた分回復も早いから。前も腱鞘炎になったけど、何ともなかったし」
「こんな時にこんな話をするのも何だが、お前将来はどうする?」
そうだ。季節はもうすぐ新年を迎えるのだ
そんなこんなしている内にあっという間だ
選手権以前の問題だ
「どうするかな・・・結局野放しのまんまだ。こんな事になっちまったし」
「そういえば、兄ちゃんに郵便が来てたよー!!」
「あかおにってトコからー!!」
「へ?あかおに?」
鬼宿は、春敬から封筒を受け取る
「どこなんだ?その会社。資料請求でもしていたのか?」
「いや・・・どこにも請求してないよ」
首を傾げる鬼宿
「おっと。そろそろ買い出しの時間だな。みんな、今日は帰るぞ」
「えーもっと兄ちゃんといたーい」
「もうすぐ帰れるんだから、それまで親父の言う事聞いて待ってろ」
鬼宿は、一人一人の頭を撫でる
「早く元気になってね!!」

みんなが帰り、鬼宿はそっと封筒を開ける

「鬼宿様。突然のお手紙失礼いたします。

あなたさまのご活躍常々拝見させていただいておりました。楽器販売会社「AKAONI」の蔵本といいます。

楽器店「Phoenix」でアルバイトしている事も、つい先日知りました。

貴方様ももうすぐ就職でしょうが、どうでしょう。一度、私どもの会社に来てみませんか。

近々、ドラムをプロデュースする予定なのです。鬼宿さんのアイデアが是非ほしい。

また、たくさんの子供たちに楽器を教える教室も、我がチェーン店では同時開講しています。

純粋に音楽の輪を広げる為に、あなたの力が欲しいのです。良いお返事お待ちしております。

「AKAONI」 蔵本健治」

これかもしれない
自分が次に立つべき「スタート地点」
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