Making of the Moon【鬼宿side】

「よう。鬼宿」
「夕城プロ・・・」
「体調はどうだ?」
「俺は何とか。夕城プロこそ・・・」
「俺は元々掠り傷だよ!!逃げ足だけは早いんだ!!」
無理に笑う夕城プロを見て、鬼宿は何かあったのだと悟った
「あの・・・夕城プロ。どうしたんですか?」
「あー・・・やっぱ分かるか?」
「夕城プロ、顔に出ますから」
「まぁ、俺の事じゃないんだけどな」
「誰が・・・」
「翼宿・・・・・・・・・・・・・・・・あいつの所にいる杏っていう女の子知ってるよな?」
「ああ・・・」
「その子が・・・交通事故で亡くなったらしいんだ」
「え・・・・・・・!?」
「翼宿から連絡来ないし、こっちもこっちでいつまで距離置いたらいいんだってさ・・・」
「まぢっすか・・・」
「お前も今は大変だろうけど、落ち着いたら励ましの言葉かけてやってくれよな?」
「はい・・・」
「じゃ、俺これから仕事だから」
「あ・・・夕城プロ!!」
「・・・・・・・・・・ん?」
「・・・・・・・・・・・・・・あ。やっぱいいです」
「何だよ~気持ち悪いな~」
今の現状を理解し、自分の事は相談出来ないと悟る鬼宿

「どうすっかな・・・」
小田島からの提案に、色々悩んでいる
確かに、選手権に出られればまたドラムを叩ける
あの時見た夢をもう一度、ステージ上で見られる
だけど
コンコン
こんな夜遅くに誰だろう
「はい」
「鬼宿v」
「美朱?お前、こんな遅くにどうして・・・」
「夜になって、たまちゃん寂しがってるかなーと思ってv」
「別に寂しくなんか・・・」
「何か悩んでるんでしょ?聞くよ。お兄ちゃん代理v」
「美朱・・・」

鬼宿と美朱は病院の外を歩いていた
たくさんの星が見える
「「空翔宿星」ってさぁ~鬼宿がつけたんでしょ?名前」
「ああ・・・そうだったなぁ」
「いい名前だよねvこんな星空の下でつけたの?」
「・・・・・・・・・・・・そうだな。家族でキャンプに行った時、この空よりもたくさんの星が見えたんだよ」
「へえ・・・東京、あんまり見えないもんねぇ~」
「だから、俺たちもこんな風にファンのみんなにたくさんの輝きを与えられたらって思って」
「鬼宿らしいね」
なぜいきなり「空翔宿星」の話題を持ち出したのか、鬼宿には察し兼ねた
「美朱・・・俺」
「選手権やりたくないんでしょ?」
「え・・・」
「分かるよぉ。鬼宿、顔に出るもん」
昼間、夕城プロをからかった時と全く同じ評価に、赤面する
「かなわねえなあ~・・・美朱には!!」
「ふふ・・・その理由が「空翔宿星」の思い出に上書きしたくないから。違う?」
「美朱・・・」
「すっごく輝いてたもん、鬼宿。この星に負けないくらいに。鬼宿だけじゃない。翼宿先輩や柳宿先輩だってそう」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「大スターだったんだよ、みんな」
「・・・・・・・・・・・・・・そうだよな」
鬼宿は、空を見上げる
「俺さ、かっこわりーと思ってたんだ。いつまでも過去の栄光にすがるの?そんなの今の生活が不満みたいな感じすんじゃん。今だって十分幸せだ。芸能界では出会えなかった奴らともこうして会えたし。だけど、音楽の世界は違うんだよ。俺が俺だった時代がなくなるのは、寂しくてしょうがねえ」
「うん・・・」
「しかも今・・・翼宿大変みたいだし」
「幼馴染の人が亡くなったんだよね」
「ああ・・・俺はそいつの顔も知らないし、柳宿相手にしてないあいつがムカついたけど・・・それでも俺は分かるよ。あいつは今・・・あいつじゃなくなってると思う。あいつは周りなくして自分は存在しないと思う奴だから・・・だから、連絡も出来ない。それなのに俺だけがステージに上がるなんて」
「空翔宿星」は、運命共同体なのだ
「また・・・・・・・・・・・会いたいね。翼宿先輩と」
「ああ・・・・・・・・・・・・会いたいな」
「遠いのが悪いんだよ」
「うん・・・」
「翼宿先輩が飛躍したのはいい事の筈なんだけど・・・翼宿先輩、鬼宿にも柳宿先輩にも大事にされてるから・・・」
何かがあった時に潰れる翼宿を見るのが怖い
「あいつは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・強がってて結局、俺らがいないと駄目なんだよな」
だから、選手権には出られないんだ
彼の為にも・・・待っていてあげたいから

「兄ちゃん、大丈夫かなぁ?」
「今度の日曜日、やっとみんな家に揃うからお見舞いに行こうね!!」
春敬と玉蘭はそんな事を言いながら、下校していた
カタン
「あれ?兄ちゃん宛だ」
「誰から誰から~?」
「(株)プロダクション AKAONI」
とある会社からの依頼状だった
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