Making of the Moon【鬼宿side】

カラカラ
「鬼宿ーお弁当持ってきたよ!!」
「おおお。美朱!!わりーな」
あの暴力団騒動から・・・一ヵ月
鬼宿の右手には・・・今も生々しく包帯が巻かれていた
「全くもう・・・死ななかったからよかったものの」
「もう、そのお説教はいいよー」
「笑い事じゃないよ、鬼宿!!どこまで人がいいんだか・・・私は無事に治って退院したからいいものの・・・」
美朱が遂先日まで入院していた病院のベッドには、今度は鬼宿が寝転がる状態になっていた
「こんなの平気だよ!!早くドラム叩きてー・・・っててえ!!!」
「こら!!暴れないの、病人!!」
「相変わらず、鴛鴦夫婦やってるなv」
入口を見ると、幸樹と梨香の姿
「来ましたv命の恩人!!」
美朱が、はやしたてる
「命の恩人だなんてそんな・・・」
「本当幸樹さんと梨香さんには感謝してます・・・二人がいなかったら、鬼宿は今頃海の中で・・・」
「言うなぁ、美朱ぁ!!」

そう。鬼宿は・・・あの日
警察のサイレンを聞きつけ、暴力団の一味から逃げていた鬼宿は
「よし・・・これで、とりあえず安心・・・」
気が抜けてしまったのだ
「余所見してんじゃねぇぞぉ!!!!」
「・・・・・・・!!!!」
片側は・・・・・・・・・・・・海
パイプをよけた鬼宿は・・・足を滑らせた
「鬼宿!!!!」
ガシッ
その手を掴んだのは、幸樹だった
「手を・・・離すなよ!!」
「幸樹・・・お前・・・何で」
「先輩!!警察は呼びました!!あのパトカー私達が呼んだんです!!」
「おめーら!!全員動くな!!」
向こうでは、警察官が騒いでいるのが分かる
週末の渋滞で警察が来るのに時間がかかると踏んだ二人は、夕城プロと天文の話を稽古場で盗み聞きし、早めに警察を呼んでいたのだ
「緊急性に欠けるよな・・・ったく!!」
幸樹は、苦笑いをした
無事に引き上げられたが、鬼宿は全治二か月の怪我を腕に負ったのだった

「これくらいで済んで・・・本当によかったですね。鬼宿先輩」
「ありがとう。梨香ちゃん・・・これを機に俺を抜かす立派なドラマーになってくれよなv」
「もう、なってますよんvねー幸樹!!」
「こいつ、まぢで上手くなったよ!!今度、事務所所属の人達とバンド組ませて貰うつもりなんだ!!」
「よかったじゃん!!いいなぁー俺も出来ればv」
カチャ
「よう」
「あ。博人!!」
そこには、松葉杖を突いて立っている小田島の姿
「元気そうじゃん」
「博人も、久々だなv」
「今日、松葉杖に変えてもらってから、一番にお前の見舞いに来ようと思ってさ」
「鬼宿。モテモテだなv」
幸樹が横から冷やかす
「あのさ・・・もし、腕が完治したらもう一度プロ目指してみねえか?鬼宿」
「へ・・・プ、プロ!?」
小田島が、一枚のチラシを取り出す
『楽器チェーン店対抗 バンド選手権』
「優勝すれば、大手会社との契約有だ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「お前がドラム諦めてないって・・・最初から分かってたよ。お前の眼はプロだ。まだやれるって・・・」
「出来るのかな・・・俺」
「鬼宿・・・」
美朱は、その鬼宿の微妙な表情を見逃さなかった
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