Making of the Moon【鬼宿side】

「やぁやぁ鬼宿君!!よくもまぁ事務所まで来られたもんだな!!」
夕城プロは、大げさな身振りで鬼宿を出迎える
「まぁ・・・大半ばれてましたけどね。車だったんで!!」
鬼宿は、ずらしたサングラスの中から瞳を覗かせる
「遂に柳宿と再会か!!勉強があるだろうから、あまり神経逆なですんなよ?」
「分かってますよ!!夕城プロこそ、変に刺激しないように!!」
カタン
「こんにちは~」
懐かしい声
「「柳宿!!」」
「お久しぶりです・・・」
柳宿は照れ臭そうに笑う
「全然変わってないなぁ~心配してたんだぞ!!」
「すみません・・・色々ありまして」
あまり寝ていないのか。顔色が悪い
「柳宿。奥の会議室で話そうぜ」
そんな彼女を、鬼宿が気遣う

コトン
珈琲を手渡す
「ありがとう」
「しっかし、顔色悪いぞ?今日、出てきて平気だったのか?」
「平気・・・兄貴に送ってもらったから」
弱弱しく微笑む柳宿
相当応えているらしい
「試験日いつなんだ?」
「来月の頭かな。筆記と面接と実技」
「面接と実技はお前の得意分野じゃん!!筆記だけ集中して頑張れば何とか!!」
「そだね。受かればいいけどね」
小指には、あのリング
ここで話題に出すべきか
「あの・・・」
「たま、翼宿と連絡取った?」
ふいに出された話題に驚く
「い・・・いや。俺はまだ・・・」
「そっか・・・。そっちにも連絡行ってないか」
「心配か・・・」
「心配に決まってるわよ。心配しすぎて、この有様よ」
「俺は、てっきりお前が連絡取ってるもんだと思って、控えてたんだけどさ」
柳宿は笑う
「出来る訳ないじゃないの!!今のあたしを見てよ~」
「まぁ・・・な」
「向こうで頑張ってるのも分かってるよ?忙しくて連絡来ない事だって分かってる。あたしだって今、第二の人生頑張ってる。だけど、そこだけ時間が止まっちゃってるみたいなのよ。半分抜け殻って感じかな・・・」
「なるほどな」
当たり前の存在が当たり前じゃなくなる事
それは、鬼宿だって悲しい
「今度さ。ドライブでも行かねぇ?」
「え?」
「気分転換v何なら、美朱と夕城プロも一緒にさv」
「たま・・・」
「俺らもいるんだからさ。もっと頼ってくれよ」
「うん・・・ありがと」
少し元気になった柳宿に、鬼宿はホッとした

「えv柳宿先輩とドライブ!?行く行く~v」
「お前も久々だもんなv勿論夕城プロも一緒にv」
「何でお兄ちゃんも一緒なの~?」
「お前とはしょっちゅうデートしてんじゃん!たまには、兄貴の気持ちも考えてやれよ」
帰りの喫茶店で、彼女の美朱と待ち合わせ
柳宿の近況を報告した
「でも・・・本当にびっくりだよね。未だに私も信じられないよ。翼宿先輩がLAに残ったのが」
「その内どっかから顔出しそうな感じするもんなぁ~」
「柳宿先輩。上手くこの壁を乗り越えてくれるといいよね」
「多分・・・翼宿に連絡取れるとしたら、受験終わってからだろうなぁ」
「頑張ってほしい。柳宿先輩には」
美朱の純粋な瞳は懸命にそう願う
「あのさ・・・美朱。実は俺も・・・」
「ん?」
「進学してみようと思ってるんだ」
「え?鬼宿が?」
「今更って思うかもしれないけどさ、俺も音楽の腕もっと磨きたいんだよ」
「そうなんだ!?どこにどこに!?」
「王宗音楽技術専門学校・・・」
「専門学校で大手じゃん!!さすが鬼宿!!目指すところが違うよねv」
「応援してくれるか・・・?」
「私は、鬼宿が学校で浮気をしなければ大丈夫v」
「お前なぁ・・・」
と言いつつ、嬉しかった
どんな道でも応援してくれる「こいつ」の存在が
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