Making of the Moon【鬼宿side】
『今、三ツ星総合病院に入院している。全身打撲に、右足左手骨折。頭も強打したらしい』
店長の言葉が頭から離れない
そして、自分の足は三ツ星総合病院に向いていた
「小田島様ですか?たった今、集中治療室から病棟に移されました。ご友人の方ですか?」
「・・・や。友人というか・・・」
何とタイミングが悪い事か
よりにもよって、目を覚ました瞬間、自分が目の前にいたら彼も驚くというか不信がるだろう
「あの・・・俺、やっぱ・・・」
「・・・・・・・・「Phoenix」の方ですか?」
突然、背後から声をかけられた
振り向くと、中年の女性が立っていた
「・・・・・・あの?」
「私、小田島博人の母です」
「あ・・・初めまして。小田島さんと同じ職場で働いている鬼宿といいます」
「博人に・・・会ってやってくださいませんか?」
「え・・・?」
「あの子、恥ずかしい話一人も友人がいないんです。つるんでいたのは、いつも悪い事をしている仲間というか・・・本当の友人ではない人間を道具として扱う人間としかいた事がないんですよ」
弱弱しく微笑む母親の表情に、母親がいない鬼宿の胸は酷く痛んだ
「・・・・・・・・・・分かりました。俺で良ければ」
友人に・・・・・・・・・・・・なってやりたいと思った
コンコン
ノックをして、静かに入る
そこには、点滴を打って眠っている小田島の姿があった
「・・・・・・・・・・・・・小田島」
包帯でぐるぐる巻きにされた小田島は、とても滑稽に見えた
「お前、薬でこんなになっちまったんだよな」
すると、小田島が目を覚ました
「・・・・・・・・・・・・あ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「博人。分かるか?俺だよ、鬼宿だよ!!」
「・・・・・・・・何で、ここにいるんだよ」
その言葉に、鬼宿はホッとした
「よかった・・・お前、橋から落ちたんだよ。意識もあるみたいだし・・・本当によかった」
「だから・・・何で、お前がここにいるんだよ」
「ごめんな・・・俺、お袋さんに頼まれてここに・・・帰ろうかと思ったんだよ。お前の気分損ねるかと思って」
いつの間にか、タメ口、しかも呼び捨てにしている
「・・・・・・・・・・・帰れよ」
「博人・・・」
「こんな惨めな姿、誰にも見られたくねぇんだよ。分かんねぇのか?」
「・・・・・・・・分かってたんだけど、俺・・・」
「日辺りのいい場所で育ってきた人間のお前には、分かんねぇんだよ・・・分かってほしくもない」
その言葉に、鬼宿は何も言い返せなかった
「分かった・・・今日は、帰るな。お大事に」
そのまま、その場を離れた
酷く痛んだ心
Plllllllllllllllll
その夜、受けた着信
見ると、遠くで頑張っている親友からだった
「もしもし」
『もしもし?たまか?久し振り』
「翼宿・・・珍しいな。お前からなんて」
『ちぃと、経過報告にな。お前とサシで話したかったし』
「どうしたんだ?」
『俺、今の稽古場離れる事にしたんや』
鬼宿は、目を丸くした
「何で・・・何でだよ?あんな待遇いい養成所他にないって夕城プロも言って・・・」
『MICHEALはんが、倒れた。看病しながら、自由に稽古出来る場所を紹介してもろたんや』
「そうだったのか・・・」
『ま、しばらくはそこでみっちり稽古や。もう日本にはしばらく帰れんと思う』
「そっか・・・残念だな」
『夕城プロには、FAXしといた。柳宿にも・・・その内言うつもりや』
「早めがいいよ。まぁ、分かってくれるだろうけど」
『・・・・・・・・・・・・たま』
「何だ?」
『何かあったか?元気ない』
その言葉に、ギクリとなった
「や・・・何もねぇよ!!何言ってんだよ!!」
『なら・・・えぇけど』
しかし、遠くの友人に話せる機会も滅多にない
言ってしまおうか
「何てな・・・嘘。今、結構大変でさ。バイト先の先輩が麻薬やってて、昨日橋から転落したんだ。見舞いに行ったんだけど、追い返されちまった。日辺りのいい場所で育ってきた俺には気持ち分からないって」
『・・・・・・・・・・・・・・・』
「はは・・・まぁ、当然だよな。何で俺・・・気持ち分かるみたいな言い方したんだろ」
『ホンマに、日辺りのいい場所で生きてきたか?』
「え・・・?」
『初めてお前と会うた時、とてもそんな風に見えへんかったで』
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
『必死に妹探して、血相変えて怒って、兄弟背負って親父はんの看病しとって・・・並の男が経験しない事、お前はたくさんしてきてるやろ。その経験を、そいつに説明してやったか?』
「翼宿・・・」
『同じ目線で向き合えや。今のお前は、「空翔宿星」の鬼宿やない「普通の人間」の鬼宿なんやから』
そうだ。過去なんて、関係ない。他人を見下ろしてはいけないんだ
自分は今・・・第二の人生を歩みだした鬼宿なのだから
「さんきゅ・・・翼宿」
店長の言葉が頭から離れない
そして、自分の足は三ツ星総合病院に向いていた
「小田島様ですか?たった今、集中治療室から病棟に移されました。ご友人の方ですか?」
「・・・や。友人というか・・・」
何とタイミングが悪い事か
よりにもよって、目を覚ました瞬間、自分が目の前にいたら彼も驚くというか不信がるだろう
「あの・・・俺、やっぱ・・・」
「・・・・・・・・「Phoenix」の方ですか?」
突然、背後から声をかけられた
振り向くと、中年の女性が立っていた
「・・・・・・あの?」
「私、小田島博人の母です」
「あ・・・初めまして。小田島さんと同じ職場で働いている鬼宿といいます」
「博人に・・・会ってやってくださいませんか?」
「え・・・?」
「あの子、恥ずかしい話一人も友人がいないんです。つるんでいたのは、いつも悪い事をしている仲間というか・・・本当の友人ではない人間を道具として扱う人間としかいた事がないんですよ」
弱弱しく微笑む母親の表情に、母親がいない鬼宿の胸は酷く痛んだ
「・・・・・・・・・・分かりました。俺で良ければ」
友人に・・・・・・・・・・・・なってやりたいと思った
コンコン
ノックをして、静かに入る
そこには、点滴を打って眠っている小田島の姿があった
「・・・・・・・・・・・・・小田島」
包帯でぐるぐる巻きにされた小田島は、とても滑稽に見えた
「お前、薬でこんなになっちまったんだよな」
すると、小田島が目を覚ました
「・・・・・・・・・・・・あ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「博人。分かるか?俺だよ、鬼宿だよ!!」
「・・・・・・・・何で、ここにいるんだよ」
その言葉に、鬼宿はホッとした
「よかった・・・お前、橋から落ちたんだよ。意識もあるみたいだし・・・本当によかった」
「だから・・・何で、お前がここにいるんだよ」
「ごめんな・・・俺、お袋さんに頼まれてここに・・・帰ろうかと思ったんだよ。お前の気分損ねるかと思って」
いつの間にか、タメ口、しかも呼び捨てにしている
「・・・・・・・・・・・帰れよ」
「博人・・・」
「こんな惨めな姿、誰にも見られたくねぇんだよ。分かんねぇのか?」
「・・・・・・・・分かってたんだけど、俺・・・」
「日辺りのいい場所で育ってきた人間のお前には、分かんねぇんだよ・・・分かってほしくもない」
その言葉に、鬼宿は何も言い返せなかった
「分かった・・・今日は、帰るな。お大事に」
そのまま、その場を離れた
酷く痛んだ心
Plllllllllllllllll
その夜、受けた着信
見ると、遠くで頑張っている親友からだった
「もしもし」
『もしもし?たまか?久し振り』
「翼宿・・・珍しいな。お前からなんて」
『ちぃと、経過報告にな。お前とサシで話したかったし』
「どうしたんだ?」
『俺、今の稽古場離れる事にしたんや』
鬼宿は、目を丸くした
「何で・・・何でだよ?あんな待遇いい養成所他にないって夕城プロも言って・・・」
『MICHEALはんが、倒れた。看病しながら、自由に稽古出来る場所を紹介してもろたんや』
「そうだったのか・・・」
『ま、しばらくはそこでみっちり稽古や。もう日本にはしばらく帰れんと思う』
「そっか・・・残念だな」
『夕城プロには、FAXしといた。柳宿にも・・・その内言うつもりや』
「早めがいいよ。まぁ、分かってくれるだろうけど」
『・・・・・・・・・・・・たま』
「何だ?」
『何かあったか?元気ない』
その言葉に、ギクリとなった
「や・・・何もねぇよ!!何言ってんだよ!!」
『なら・・・えぇけど』
しかし、遠くの友人に話せる機会も滅多にない
言ってしまおうか
「何てな・・・嘘。今、結構大変でさ。バイト先の先輩が麻薬やってて、昨日橋から転落したんだ。見舞いに行ったんだけど、追い返されちまった。日辺りのいい場所で育ってきた俺には気持ち分からないって」
『・・・・・・・・・・・・・・・』
「はは・・・まぁ、当然だよな。何で俺・・・気持ち分かるみたいな言い方したんだろ」
『ホンマに、日辺りのいい場所で生きてきたか?』
「え・・・?」
『初めてお前と会うた時、とてもそんな風に見えへんかったで』
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
『必死に妹探して、血相変えて怒って、兄弟背負って親父はんの看病しとって・・・並の男が経験しない事、お前はたくさんしてきてるやろ。その経験を、そいつに説明してやったか?』
「翼宿・・・」
『同じ目線で向き合えや。今のお前は、「空翔宿星」の鬼宿やない「普通の人間」の鬼宿なんやから』
そうだ。過去なんて、関係ない。他人を見下ろしてはいけないんだ
自分は今・・・第二の人生を歩みだした鬼宿なのだから
「さんきゅ・・・翼宿」