Making of the Moon【鬼宿side】

郵便受けの手紙
帰国後・・・それを初めて目にする
「親父・・・」
実家からだった

『鬼宿。元気にやっているか?

私も子供たちもこの通りみんな元気だ。心配する事はない。

今朝、お前のバンドの解散の報道をテレビで見たよ。本当に私も子供たちも驚いていた。

やっとお前も、一人前に給料を貰って独り暮らしが出来た矢先の出来事だったな。


お前・・・これからどうするんだ?

家ならいつでも帰ってきてもいいんだぞ。昔のようにこき使ったりはしない。

お前の仕送りも、本当に有難く思っている。みんなもお前に会いたがっている。

一度帰ってこないか?お前の今後なら、いくらでも話し合ってやる』
「親父・・・ありがとう」
鬼宿は、それを読み終えて、ふっと微笑んだ
カタン
そして、引出しから取り出した書類
『王宗音楽技術専門学校』

その後も、「空翔宿星」解散説は、芸能紙をしばらく賑わせていた
しかし、その騒動も次第に収まってきた頃・・・鬼宿は奎介に飲みに誘われた
「鬼宿!!久しぶりだな~元気だったか!?」
「夕城プロ~謹慎長いっすよ~」
「仕方がないだろう!!今、日本にいるお前や柳宿が出てきたら、報道陣にメッタ刺しされるぞ!!」
「そうっすよね・・・柳宿から連絡来ました?」
「ああ。事務所に先日、これから音楽系の短大に進学する予定だって連絡が来たよ」
「まぢっすか!!あいつ・・・俺に連絡よこさないで・・・」
「まぁまぁ。お前見ると、やっぱりどうしても・・・だぶっちゃうんだろ。理解してやれ」
「・・・そうっすよね」
「で、お前はどうするんだ?鬼宿」
晩酌をついで、夕城プロは尋ねた
「お前は高校卒業後も、一年活動で穴が空いてるだろう?第二の人生はどうするつもりなんだ?」
「夕城プロ・・・俺・・・」
書類を取り出そうとする
「ほらほら!!バンバン飲みなさいな。お二人さんv」
「久々の感動の再会に、たくさんつまみも奮発したからよv」
そこに、居酒屋の店長と女将である奎宿と昴宿が割って入った
「いっやぁvお二人とも悪いねぇv引き続きお世話になっちゃってv」
「気にしなさんなvこっちとしては、大助かりさv大手企業のプロデューサーにたくさん貢いで貰えるんだからさv」
「げ・・・奮発じゃないの・・・?」
鬼宿は・・・書類をそっと鞄に戻した

「んじゃ、また何かあったら事務所からも連絡するよ!!いつでも飲もうな~鬼宿v」
「夕城プロ・・・前見てくださいよ、前!!お疲れ様でした~また今度!!」
前方不注意でスーツを着崩し帰っていく夕城プロの後ろ姿を、鬼宿はため息をついて見守った
すると
♪♪♪
着信が鳴る
相手は
『柳宿』
すぐさま携帯に出る
「もしもし!?」
『もしもし・・・たま・・・?』
「柳宿!!お前・・・元気だったかよ!?たった今、夕城プロに聞いたとこだよ!!お前の進学!!」
『うん。丁度進学時期だったし・・・短大くらいなら出た方がいいって親にも薦められてね』
やはり、まだその声に活気はなかった
「お前・・・明日暇か?」
『大丈夫だけど・・・』
「事務所借りてさ。話しようぜ。まだ公には出られないだろうし」

今度は自分が護るんだ
「空翔宿星」の妹を
親友の代わりに
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