Making of the Moon【鬼宿side】

ガラガラ・・・
「おはよう」
「鬼宿!!平気だったのかよ・・・学校来て」
教室に入って、真っ先に近寄ってきたのは幸樹だった
「まぁ・・・何とかな」
「鬼宿先輩!!あんな報道気にしないでください!!」
「私たち、鬼宿先輩が柳宿先輩を心配してした行動だったって信じてますから!!」
何人かのクラスメイトが励ましの言葉をかけてくれた
「ありがと・・・俺は、気の毒だけどね」
「そうだよな。今頃・・・メンバーのあの子と翼宿が報道陣に詰め寄られてるんだよな」
幸樹も複雑そうな表情を見せた

今日も、専門学校にこっそり来ていた美朱
(鬼宿に・・・謝らなきゃ)
一番信じてあげられなかった自分が情けなくなった
あんな報道をされてから、気づくなんて・・・
「あら?今頃、彼氏に顔合わせに来たの?」
振り向くと、そこには見覚えのある顔
「あなた・・・」
「鬼宿先輩にドラムを指導していただいています梨香と申します」
「何か用・・・?」
「あたしに嫉妬するのはいいとしても、あの報道を真に受けて大事な先輩まで疑って鬼宿先輩まで傷つけて・・・そんなあんたが今更鬼宿先輩に合わせる顔なんてある訳?」
「・・・そんな事あんたに・・・!!」
「あたし、鬼宿先輩本気だから」
その瞬間、梨香の目つきが変わった
「あの人、思わせぶりな態度取るからさ、校内でも結構ファン多いのよ。その気になれば女の一人や二人作れそうよね。そこ気付かないとこが、彼の可愛いとこなんだけどねvま、あたしみたいに講師につけちゃえば、もうこっちのもん・・・」
バシッ

「顔色悪いぞ?平気か?」
「ここのところ、ろくに寝てなかったからな」
「だよなぁ。あの報道起こってからも、しばらく学校来れなかったんだもんな。まだ報道は続いてるけど・・・」
「あの二人が心配で・・・」

「鬼宿はそんな事する人じゃない!!勝手に・・・鬼宿の事決めつけないでよ!!!!」

そこに、美朱の怒鳴り声が聞こえてきた
「美朱?」
「ぶったわね・・・!?このあたしの顔に・・・!!あんたみたいなブス、鬼宿が本気で相手にする訳ないでしょ!?」
「おい!!やめろ!!どうしたんだよ・・・二人とも・・・」
「鬼宿っ・・・」
その瞬間、美朱は駆けだした
「美朱!!」
「鬼宿先輩!!」
「ちょっと」
幸樹が梨香を止めた
「ちょっと言い過ぎなんじゃないか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちっ」

「美朱!!おい、待てよ!!そんな走ったら・・・」
全速力で逃げる美朱を鬼宿が追いかける
パシッ
「おい!!」
手を掴むと、彼女は息苦しそうに立ち止まる
「大丈夫か・・・美朱!?」
「鬼宿・・・・・・・・・・・・・・怒ってないの?」
「え?」
「あたし、鬼宿の事随分無視した。きっと話したい事があったんでしょ?なのに、あたし・・・あんな報道されてから今更・・・」
「俺は怒ってないさ・・・。情けなくてさ、あんな報道されて」
いつもの優しい声
途端に、美朱は鬼宿に抱きついた
「ごめんね・・・ごめんね、鬼宿・・・!!嫌いにならないで・・・」
泣いていた
そんな美朱をそっと抱きしめる
「大丈夫だよ。俺はいつだって、美朱を想ってるから」
「あたし・・・ずっと・・・ずっと、信じてるから」
その瞬間、美朱の体の力が抜けた
「美朱・・・美朱!!??」

「過労ですね。最近、寝てなかったんでしょう」
病院で診察を受け、とりあえず安堵
病院には、美朱の母親も来ていた
「あの・・・本当にすみませんでした。今回の件では俺・・・美朱さんや奎介さんや・・・親御さん方にも迷惑かけて・・・」
「いいんです。鬼宿さんはそんな事をする方ではないと、みんな信じてましたから」
夕城家は、みんな優しい
「でも・・・心配ですね。メンバーのお二人・・・」
病院で流れるテレビからは、先程から耳を塞ぎたくなる報道の数々
『「空翔宿星」メンバー翼宿さんと柳宿さんは、あれ以来報道陣のインタビューに答えようとはしません・・・』
更に嫌な予感は続く
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