Making of the Moon【鬼宿side】

ガラガラ
「本当にもう平気かい?鬼宿」
「一晩くらい泊ってったって、全然平気なんだぞ?」
「いや・・・これ以上ご迷惑かける訳には行かないんで・・・すみませんでした」
鬼宿は、柳宿と目を合わせた
「柳宿だけ・・・お願いします」
「たま・・・」
「じゃあな。柳宿」
鬼宿は、笑顔で片手をあげると、その場を去った

「鬼宿・・・」
帰路の途中で、聞き覚えのある声に声をかけられた
そこには、美朱の姿
「美朱・・・お前、何で・・・」
「鬼宿と話がしたくて・・・」
「・・・・・・・・・あのな。美朱」
「あたし・・・分かってた。心のどっかで、いつかこういう日が来るんじゃないかって・・・」
「美朱・・・?」
「柳宿先輩は凄く綺麗で優しくて・・・そんな先輩とバンド組んでた鬼宿の心が動かない筈ないって」
「おい。美朱。話を聞けって・・・」
「ごめんね・・・。こんな病弱女・・・」
美朱の頬は涙に濡れていた
「ごめんっ・・・」
「美朱!!」
美朱は、そのまま去って行った
弁解の余地も与えないまま

しかし、その数日後、事態を覆す事態が起こる
相変わらず、騒動は続いたまま
専門学校にも行けないまま、二週間が過ぎた
『平気なのか?』
『鬼宿先輩!!早く会いたいですよ~』
心配してくれる幸樹のメールと、空気を読まない梨香のメール
その両方を受信して、鬼宿はため息をついた
美朱に電話してもメールしても、返事はない
夕城プロは、相変わらず事務所の対応に追われている
『気にするな』
翼宿のメール
みんなに迷惑をかけている
嫌気がさしたまま、報道のテレビを消そうとした
すると
『今、柳宿さんが出てきました!!』
そのアナウンサーの声に、鬼宿は耳を疑った
見ると、本当に柳宿が自宅から出てきた
『皆さん・・・聞いてください。私・・・皆さんにお伝えしたい事があるんです』
鬼宿は、息を呑む

『私は・・・翼宿とお付き合いしています。今回の報道は、誤解です』

世界中が唖然した報道
それは、事態を覆す新たな展開の幕開けだった
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