Making of the Moon【鬼宿side】

「ただいま・・・」
「お兄ちゃん」
美朱が部屋から出てきた
「おお・・・美朱。すまないな。休ませてしまって」
「・・・いいよ。叩かれるの嫌だし」
「美朱・・・これは誤解だ。お前だって分かるよな?」
「・・・・・本当に誤解なのかな」
「え・・・?」
「鬼宿・・・実はずっと柳宿先輩の事が好きだったんじゃないの?あんなに美人だし」
「おいおい・・・お前までそんな事言っちゃ駄目だよぉ~」
美朱の落ち込みようといったら、それは酷かった
当たり前だ
恋人が憧れの先輩と・・・

カラン・・・
「たま・・・飲みすぎだよ」
鬼宿と柳宿は、「白い虎」に隠れていた
そう夕城プロに命じられたからだ
「・・・俺さ、本当は嫌になってんだよな。借金はあるし、学校では女に付きまとわれるし、天津さえこんな報道だぜ?」
「借金・・・?付きまとわれてるって・・・?」
「お陰で、美朱ともずっと気まずくなってるし。今回のでまぢで御用だよな。俺・・・」
「ちょっと・・・落ち着きなさいよ」
奎宿と昴宿は、買い物に出ていていなかった
「・・・柳宿。俺ら・・・本当に付き合っちまう・・・?」
「馬鹿・・・」
酒の勢いだという事は、お互い承知の上だった
しかし、鬼宿はそれほどまでに貯めこんでいたのだ

「翼宿・・・どうしてっかな」

「え・・・?」
テレビをふと見る
『LAで音楽活動中の翼宿さんの養成所にも世界の報道陣が詰めかけています。今回の騒動で、同じメンバーの翼宿さんはどのように感じたのでしょうか?』
「あ・・・」
初めて見る翼宿の養成所
とても大きなところだった
「あそこに・・・いるんだね」
柳宿は、騒動も忘れてそれに見とれていた
途端に、鬼宿が携帯を掴む
「・・・たま?」
「翼宿に・・・かけてみようぜ」
「え・・・?」
「フォローしなきゃいけねえだろ?」
きっと、今は練習どころではない筈だ
出るかもしれない
Plllllllllllllllllllllllll
カチャ
『もしもし?たまか?』
相手はすぐに出た
「翼宿か?俺だよ」
『おい・・・お前ら一体どないしたんや?』
「驚いただろ~俺らの方が驚きだよ。誤解だよ誤解~」
『酔ってるんか?』
「ちょっとな~「白い虎」に隠れてろって言われたから、ある酒全部飲んぢまった」
『おい・・・何しとるんや。柳宿・・・おるんか?』
「いるよ~」
『たま。お前、しっかりせぇや。本人同士がしっかりせんで、どないするんや』
「翼宿。誤解しないでくれよ!!俺は、柳宿がストーカーに襲われて怯えてたから、ああしただけだからな!!」
『・・・そうか。それは大変やったな』
「てめえは~何で帰ってこねえんだよ!!柳宿、泣いてんだろ!!女泣かすんじゃねえよ!!俺が言えた事じゃねえけどよぉ~」
『すまんな・・・』
「本当に柳宿、誰かに取られっぞ?」
『それはあかん』
そこで、鬼宿の言葉が止まった
『我儘かもしれんけど・・・せやけど、柳宿を勝手に扱う男がおるんなら、許さん。例えお前でも・・・な』
鬼宿は・・・もはや反論する気はなかった
「俺・・本当はさぁ~俺だってさぁ~辛いんだよ。奎介さんとか奎宿さん・・・親切にしてくれっけど・・・俺の気持ちをリアルに分かってくれるのは・・・お前しかいねえんだよ。翼宿・・・」
『すまん・・・』
そこで、柳宿が携帯を取り上げる
「翼宿?・・・ごめんね。今、たまちょっと荒れてて・・・」
弁解をする柳宿
しばらくして電話を切る
「柳宿・・・」
鬼宿が呼びかける
「あいつは・・・ちゃんとお前の事大事にしてるぞ。離れてても」
「え・・・?」
「安心しろ。そんな奴から、お前とったりしねえからさ」
「たま・・・」
そのまま、鬼宿は眠りこけた
この先どうなるかなんて分からないけれど
負けてはいけないのだ
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