Sign~心のメッセージ~

「・・・・・・・?」
うっすらと日差しが差し込む部屋のベッドの上
柳宿は目を覚ました
ここは・・・どこ?
しかし、恐怖などはなかった
横の椅子に寄りかかって眠っているのは、最愛の人
途端に、昨夜の出来事を思い出した
私・・・昨日、功児さんのところへ行って・・・
それで・・・襲われて・・・翼宿の・・・ところへ・・・
すると、肩を叩かれた
振り向くと、翼宿
『起きたか?』
『翼宿・・・あたし・・・』
『何も思い出さんでえぇ』
翼宿は笑顔で頭を撫でた
『安心せぇ。鳳綺さんには、連絡しといた。今日、大学全休なんや。話聞くで。飯食うか?』
翼宿は、台所へ入っていった

昨日の事・・・何も聞かないで、あたしをここまで連れてきてくれたんだ・・・

柳宿は、翼宿の背中にしがみついた
まだ怖い・・・
翼宿は、静かに手を握ってくれた

『今日、大学休むわ』
玲麗が受信した翼宿のメール
「何?今日、翼宿休み?」
「珍しくない?無遅刻無欠席だったのに・・・」
玲麗は、複雑な気持ちで携帯を閉じた
「あ。功児。おはよー!!」
「なぁにー?あんたまで、引きつった顔して」
「元々の顔や!!じゃかあしな」
「何苛々してんのー」
「ちょっと」
玲麗は、功児に呼びかける

「どういう事?何があったん?あの柳宿って子と・・・」
「・・・・・・・・・」
「今日、翼宿が学校を休んだ。あんたも分かるでしょ?」
「俺・・・あの子が、翼宿の事忘れられないって分かっとった筈なのに・・・最低な事したんや・・・」
そこでやっと絞り出た弱気な一言
『何やねん、お前は!!!こそこそこそこそあいつの事ばかり調べよって!!!全然俺の事見向きもせんで!!!そんなにあいつがえぇんか!?俺やったら、駄目なんか!?あんな奴の事なんか俺が忘れさせたる!!!!』
彼女には聞こえる筈がないのに、叫んでしまった汚い本音
彼女は・・・泣いていた
「あんたには・・・もう無理やと思うわ」
玲麗は、そっと功児の肩に手を置く
「あたしも・・・恐らくもう無理や」
「え・・・?」
「翼宿は、もしかしたらあの子の事を・・・」
二人は、青空を一本に分断する飛行機雲を見上げて同じ事を考えていた
もう二人の邪魔は出来ないと・・・

三時間
柳宿は、朝食を取ってから少しずつ事の真相を翼宿に聞かせていた
鳳綺の事、功児の事・・・重なり合った二つの事件を
途中苦しくなるとすぐに涙が溢れ出た
その度に、翼宿は柳宿の手を握っていた
『そっか・・・よう話してくれたな』
翼宿は、全てを話し終えると微笑んで返した
『とりあえず・・・全部忘れろ。鳳綺はんとこにも・・・帰りづらいやろ。しばらくここにおったら、どうや?』
その言葉に、柳宿は驚いた
『この通り何もない家やけど・・・気休めになるんなら』
夢みたい・・・大好きな人との居候生活
『・・・・・・・・・もしも嫌なら、一週間だけでもえぇし』
確かに、ずっと置いてもらうわけにはいかない
『とにかく今日は、どっか出かけるか?』
翼宿は傍にあった車のキーを取って提案する
『気分転換したいやろv』
地獄からの生還の末には、あなたの笑顔が待ってくれていた
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