Sign~心のメッセージ~

どうして・・・キス出来なかった?
柳宿は、帰り道をとぼとぼと歩いていた
結局、そのまま逃げるようにあの場を去ってしまった
(どうして、出来なかったの?功児さんは、とてもいい人なのに・・・好きな人の筈なのに・・・)


好きな人?
功児さんは、とても好き・・・
けれど・・・好きだけど好きじゃなくて・・・

カチャ
家の扉を開ける
ガツンッ
聞こえる筈はないけれど、とても大きな音
振動が玄関まで響いてきた
そっとリビングを覗くと・・・
そこには、自分の部屋のドアに拳を叩きつけている鳳綺の姿だった
そしてそれを止めるのは鳳綺の彼
「いい加減にしてほしいわよね・・・あたしだって、あの子の面倒好きで見てやってる訳じゃないのに・・・それでも無理してあの子に同情して・・・あなたも来づらいでしょう・・・?こんな家・・・」
「鳳綺・・・お前、ちょっと呑みすぎだぞ」
「それなのに何よ!!今度は外に男を作って?好き勝手自由に遊びまくってる。あたしは・・・あの子の為に我慢してきたこともいっぱいあるのよ?あの子が心配で・・・あなたとのデートも早く切り上げてきて・・・それなのにあの子はこんな遅くまで・・・」
聞こえない筈なのに
唇はそう叫んでいるのが分かる
鳳綺は、私を恨んでいる
そのまま、柳宿は鳳綺の部屋で息を殺して泣いていた
その時、メールの着信は光った

『今日は、気にせんといて。明日、俺の家来ないか?』
功児・・・彼氏からだった

「はよ~」
大学の朝が今日も始まる
「たすきっ!!おはよっ!!」
「おぉ・・・早いな」
「翼宿こそ~v今日も朝から調べ物?やっぱ、優等生は違うよねぇ~v」
「優等生?どこがや。どっから見ても不良やろ」
「その橙頭がいかしてるって言ってるの!!」
翼宿と行動を共にしていた女子も
玲麗がふられ、柳宿との一件もなくなった事を知り、密かにアタックを仕掛けていた
すると
「お。功児」
功児の姿が見えた
なぜかその姿にいつもの活気はなくて
「じゃあ、翼宿!!また、教室でね!!」
女子はそそくさと去っていく
「よ」
翼宿は気さくに声をかける
「よぉ」
「お前、どないしたん?何や元気ないで」
「そぉかぁ?いつもと変わらんで?」
「・・・・・・・・・・・・・お前」
「何」
「その・・・上手く行っとるんか?」
その言葉に、功児は反応した
「何やねん。お前に関係あらへんやろ」
「そら、そやけど」
「今日・・・俺の家に呼ぶんや」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・そか」
しかし、その瞳はどこか挑戦的だった

「お前の事なんか・・・・・・・・・・忘れさせたるで」

「は?」
「この俺が・・・」

親友の絆に裂け目
愛する人は渡さない
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