Sign~心のメッセージ~

「っあ~~~もう夏休みだってのに、何で俺は学校に行かなきゃいけないんやぁ!!」
功児は、放課後に渡された補講通知の紙をひらつかせてため息をついた
すると・・・校門を小さな少女が横切った
「あれ・・・?あの子・・・」
確か、先日翼宿が助けたとか言っていた少女
可愛くて・・・密かに自分のタイプと一致していた少女だった
功児は、駆け出した

『・・・・・・・もう二度と、翼宿に近づかないでくれる?』
そんなの分かっていた
私なんかがいても、大して彼の役に立つ訳でもなかったし
大体、最初から自分を必要としてくれる人なんていなかったのだ
もう・・・もう、彼の笑顔を見る資格は自分にはない
すると・・・誰かに腕を掴まれた
「ちょっと・・・待って!!」
聞こえる筈もないのに、腕を掴んだ相手はそう叫ぶ
驚いて、後ろを振り返ると・・・どこかで見た事がある顔の青年だった
そうだ・・・あの時、翼宿と一緒にいた・・・
『驚かせてすまん・・・ちょお話あるんだけど、えぇか?』
この人も、手話が使える
柳宿はもうすぐで涙が溢れそうだった瞳を擦って、静かに頷いた
すると、手を掴まれた
『すまん・・・また、会えるとは思ってへんかった』
顔をあげると、その青年は顔を赤くしていた
『俺・・・翼宿の親友の功児や・・・。初めて見た時から・・・あんたにごっつ惚れとった』
柳宿は、彼から発せられる手言葉が信じられなかった
『俺で良ければ・・・付き合ってくれませんか!?』
自分を必要としてくれる存在がここにいた

『今日は、ありがとう。色々話せてよかった。また、会いたいな』
あの日、あの時間に届いていた彼女からのメール
それを眺めて、翼宿はため息をついた
自分だって、また会いたい。また話を聞いてやりたい
けれど、今玲麗ともめた状態で、会ってやれる気にはならなかった
自分の心の闇を取り除かない事には、彼女とはきちんと向き合ってやれない
そんな時、その携帯に着信があった
功児からのメールだった

『翼宿!!俺、付き合える事になった。お前が助けたあの女の子やv』

頭が真っ白になった

「へぇ~・・・あの功児がねぇ・・・v」
「あの子、最初から功児狙いだったんじゃない?」
終業式の日
大学の窓から見えるのは、功児と柳宿が校門で話す姿
翼宿は、そんな姿を複雑な気持ちで見ていた
(さよか・・・。あいつが好きやったんは、功児やったんか・・・)
しかし、これで何も心配をする必要はないのだ
自分の役目は・・・もう終わった

「翼宿」
廊下で、玲麗に呼び止められた
「何や。玲麗か」
「翼宿・・・あの・・・あの子・・・」
玲麗も、異例の事態に驚いていたのだ
「・・・びっくりやな。分かりやすいあいつが、あんな近くの子好いとったなんて」
翼宿は静かに微笑んだ
「・・・翼宿は・・・それで・・・」
「えぇやん。あいつも手話使えるしな。頭悪い奴やけど、あの子の事護ってやれるやろ」
「翼宿・・・この間はホンマにあたし・・・」
「えぇて。もう気にしてへん」
本当は、自分が全て仕組んだ事なのだ
柳宿を翼宿から離したのも・・・その流れで功児と柳宿が付き合ったのも・・・

『功児さん・・・』
『何や?』
『本当に私でよかったんですか・・・?』
『何言うてんねん。俺から好いたんやろ?』
功児と柳宿は、公園で会話をしていた
確かに、明るくて優しい、いい人だった
柳宿も必要としてくれる人がいる事に、少なからず励まされていた
すると・・・功児の手が肩にかかった
驚いて顔をあげると・・・唇が近づいた
ドンッ
柳宿は、彼を突き飛ばした
功児は驚いた
途端に、柳宿はハッとした
『・・・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい』
キス出来ない理由は
きっと君の存在のせい
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