Sign~心のメッセージ~

車のヘッドライトが過ぎ行く国道
翼宿は、玲麗に声をかけられた
「玲麗?どないしたんや?こんな時間に・・・」
「翼宿こそ・・・何処行ってたん?」
「俺は、友達を家まで送りに・・・」
「柳宿さん?」
「まぁ・・・」
沈黙
「・・・あんたさ、あの子の友達になってあげたつもりなん?同情してるんとちゃうの?あの子に・・・」
「お前、何言うとんねん」
「変に期待持たせない方がえぇんやない?あの子、多分異性で関わったのはあんたが初めてやで?」

『・・・・・・ありがとう。翼宿が、鳳綺以外のあたしの初めての友達・・・』

「だから、何?」
「・・・・・・・・・あ。もしかして、あんたあの子の事実験材料に使っとるん?手話きちんと伝わるんかとか、障害者の心理状態とかぁ・・・」
パンッ
その時、翼宿の手が玲麗の頬を打った
「お前・・・今、何言うたか分かっとるんか・・・?」
「・・・・・・・・・・・・」
玲麗の瞳が潤んだ
「頭冷やせや。俺は、お前をそんな酷い人間に思いたくない」
「・・・・・・あたしは!!!!!」
その言葉に、翼宿の足は止まる

「ただ、あんたが好きなだけやっ!!!!!」

翼宿の携帯のメール着信

『今日は、ありがとう。色々話せてよかった。また、会いたいな』
少し、大胆すぎただろうか
しかし、今はおかしくなるくらい素直になれる
そうだ。また大学へ行ってみよう
ストーキングするつもりはないけれど、たまには大学の彼をちゃんと見てみたいものだ

「おはようさんvみんなぁ~あれ?玲麗!!どないしたん?」
功児は、教室に入っていつもの集団に声をかける
しかし、玲麗の元気がない
「何聞いても答えないんだよね。さっきから、ずっとこの調子で・・・」
周りの友人が心配そうにしている
「はよ~・・・」
そこに、翼宿の姿
「おお!!翼宿!!何や、玲麗の様子が変なんやぁ~」
玲麗は、翼宿をちらりと見たが、翼宿はそのまま席に座った
「そっか・・・」
それだけ答えて、参考書を開いてしまう翼宿

「えぇ!?翼宿に告白したの!?」
昼休み、翼宿が教授を訪ねに行った隙に、皆は事の次第を玲麗に聞いた
玲麗は、頬を濡らしていた
「せやけど・・・それは、きつかったんちゃうか?よりによってあいつの前でそんな・・・」
「あたしだって・・・本気であんな事思うとったんやないけど・・・自分に言い聞かせてたんや・・・。あたしの気持ちに気づかんで・・・あいつ、あの子に・・・」
「で・・・返事は・・・?」
「そのまま・・・帰ってしもた」
「ん~~~~~・・・今のお前じゃ難しいかもしれんなぁ・・・。謝ってどうなるもんでもないし」
「功児・・・何とかしてやぁ~」
このまま話しても、埒があかなかった

放課後
柳宿は大学に来ていた
校門では目立つから、側の公園で
昨日のメールの返事が返ってこなかった
何かあったのだろうか・・・?
携帯電話を握り締めた
一人の女性が、自分に歩み寄ってきている事も知らずに
肩を叩かれる
顔を上げると、どこかで見た顔
『柳宿さんね?』
手話で話し掛けられる
そこで、思い出した
彼女は、翼宿とあの時一緒にいた・・・
柳宿は、恐る恐る頷く
『残念だけど、翼宿は4コマで帰ったわ。もう大学にはいない』
『そうなんですか・・・』
柳宿は、気落ちして答える

『・・・・・・・もう二度と、翼宿に近づかないでくれる?』

その言葉に驚く
『・・・翼宿。迷惑してるわ。口に出さないけど、きっとそう。口が聞けないあなたがいてもあの人の邪魔になるだけだわ』
何も答えられない

もう近づかないで

私は・・・傍にいられる資格はないんだ
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