Sign~心のメッセージ~

その場に沈黙が流れている事が分かる
「あなた・・・柳宿の知り合いですか?」
翼宿に、鳳綺は問い掛ける
「・・・はい。今朝・・・ちょっとした事があって知り合いました」
翼宿は、わざと伏せた
「すんません・・・他人の俺が言うんもあれなんですけど・・・彼女を叱らないでください。こいつ・・・色々と悩んでて、家に帰れんかったみたいで・・・ちゃんと話をしてあげてほしいんです」
鳳綺は、柳宿を見た
柳宿は、俯いている
そのまま、柳宿の手を引く
『帰りましょう』
柳宿は、静かに頷いた
「どうも・・・お世話になりました」
鳳綺は、翼宿にお辞儀をした
柳宿は、まだ不安げに翼宿を見つめる
翼宿は、笑顔で手を振っていた

コトン
家に着き、鳳綺は、お茶を柳宿に薦めた
一度ため息をつくと、鳳綺は問い掛けた
『・・・・・・何があったの?柳宿』
柳宿は、最初は何も反応を示さなかったが、静かに手を動かした
『ごめんなさい・・・何も言わないで、帰らなかったのは謝ります・・・。だけど・・・私、いづらかったんだ』
『いづらかった・・・?』
『鳳綺・・・彼氏、出来たでしょ?だけど、私みたいな同居人にいつまでもいられると・・・鳳綺も自由に彼氏との時間を過ごせないんじゃないかって思ったの・・・。私、鳳綺に幸せになってほしいの・・・。だから・・・だから、私・・・』
鳳綺は、そっと柳宿の手を止めた
そして、手を動かす
『馬鹿柳宿・・・』
「・・・・・・・・・・・」
『勝手に、一人で考え込まないで。私は、彼にもあなたの事は教えているし・・・理解してくれているわ。だから、何も心配しないで?約束したでしょう?あなたは・・・私が一生護るって』
柳宿の瞳から、涙が溢れた
『ありがとう・・・ごめんなさい』
しばらく、柳宿は泣いていたが、落ち着いたところで鳳綺は問い掛けた
『・・・・・・・・・・柳宿。あの人・・・誰なの?』
その言葉に、ぎくりとなる
『う・・・うん。落とし物しちゃって・・・その時、声をかけてくれたの』
『・・・声を・・・って・・・あなたと話が出来るの?』
『うん・・・偶然、大学で手話習ってたんだって』
鳳綺は、考え込んだ
『良さそうな・・・人ね。あなたの話を聞いてくれたんでしょう?』
柳宿は、頬を染めながら頷く
『・・・・・・・・もしかして・・・好きになった?』
その言葉に、驚く
好きって・・・何・・・?

「ただいま~」
「お帰り!!遅かったやん!!」
玲麗は、一人部屋で翼宿を待っていた
「あれ?みんなは?」
「功児引き連れて、とっくに帰ったよ~あんた、こんな遅くまで何しとったん?」
「・・・ああ。ちょいと知り合いに会ってなぁ~。どないしよ~この烏龍茶」
玲麗は、ため息をついて机に座る翼宿の後姿を見つめる

「あの子と・・・会ってたんやろ?」

その言葉に、振り向く
「すまん・・・見てた」
「・・・さよか。たまたま、いたんや。そこの公園にな」
「何・・・話しとったん?」
「・・・・・・・色々な」
「色々て・・・」
玲麗は、気になって仕方がなかった
翼宿は、振り向くと微笑んだ
「送ってく。用意しろや」
複雑な人間関係

次の日
鳳綺が、仕事へ行って柳宿はいつものように部屋にいた
やっと、心の蟠りも解けて・・・だけど、まだどこか気になっていた
それは・・・あの人の事
優しかった彼がいなければ、こんなに上手く事は進まなかったと思う
お礼がしたい・・・
すぐに、携帯電話を取り出した
そっと・・・メモのアドレスを入力する

♪♪♪
食堂でいつもの仲間と昼食を食べていた翼宿の元に一通のメール
開くと、知らないアドレス
『柳宿です。この間は・・・ありがとうございました。無事に鳳綺と仲直りできました・・・。お礼がしたいんです・・・今日、会えませんか?』
翼宿は、静かに微笑んだ
そんな彼を睨むように見つめる玲麗

ブブブブ
バイブが鳴り、柳宿は携帯を見た
『バイト20時にあがる。それが終わってからでえぇなら。ちゃんと鳳綺はんに報告してこいよ』
柳宿は、嬉しそうに微笑んだ
また・・・会える

この必要以上の関係が・・・二人を大きな渦に巻き込んでいくとも知らずに
無邪気に・・・二人は、この時間を楽しんでいた
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