Sign~心のメッセージ~

ブロロロロロロロロロ
エンジン音と共に車は走り出す
雨ばかり降っていた最近の天気も、今日はからっと晴れて明るい太陽が覗いている
まるで、隣に座る愛しき人のような
『大丈夫か?』
外の景色を眺めてぼけっとしていると、彼が話し掛けてくれる
『まさか、車もろくに乗った事ない?』
柳宿は、恥ずかしそうに頷く
『そら、そうやなv俺が一番乗りかv』
それでも、翼宿は嬉しそうに笑う
こんな翼宿が大好きだった

車は、路地を抜け大通りを突っ切り、やがて人通りの少ない道路を走る
『えぇトコ連れてったるからなv』
翼宿は上機嫌でハンドルを回す
そして、抜けた場所は・・・海
目の前がぱっと開けたように感じた
翼宿は、海の通りに車を止めると、柳宿を先導して車から降ろした
『えぇトコやろ?』
波しぶきに反射する太陽の光は、彼の笑顔をより一層照らしてくれていた
『ここなぁ、俺がこの街に越してきて一番最初に見つけた穴場やv人通りもすくない海岸やし、一人になりたい時は、よくここに来て昼寝しとったもんやわv』
『一人になりたい時・・・あるの?』
『そらあるわv疲れた時は、休むんが一番やてv』
いつも笑顔が絶えない翼宿でも、やはり心が安らぐ場所があるものだ
そして、自分にもほしかった場所
『嫌な事あった時は・・・いつでも連れてきたるで』
翼宿は、柳宿の頭を撫でる
柳宿は、翼宿の優しさに感動し、また涙を流した
ずっと一緒にいたいよ
そんな気持ちがこみ上げてきた
彼の傍にいたい・・・一週間といわず・・・ずっと。
そっと、彼の服の裾を掴む
彼は、不思議そうに自分を見下ろす
大事なものをもう手放す真似はしない
『私・・・・・・・・・・・』
誰もいない。誰も来ない。最高のチャンス
『ずっと・・・・・・・・・・翼宿と一緒にいたいよ』
翼宿は、驚いていた
その瞬間、彼の顔が見れなくなった
絶対に軽蔑した
嫌だろう。普通の女よりも世話がかかる女なんて
すると、翼宿は柳宿の頭をくしゃりと撫でた
彼の手言葉はこう呟く
『俺で良ければ』
一週間でも二週間でも三週間でも
ずっと一緒にいよう
そんな返事だった


三ヵ月後
♪♪♪
鳳綺の携帯が鳴る
それは、柳宿からのメールだった
『鳳綺。元気ですか?私は、元気です。

先日は、家を飛び出してしまって、ごめんなさい。翼宿の元で居候したいなんて事まで言ってしまって。

けれど、私、本当に大切なものを見つけたから・・・これは、誰にも変える事の出来ない真実です。

いつか、絶対認めてもらえるように頑張るよ。鳳綺も・・・幸せに』
「柳宿ちゃんから?」
隣にいるのは、鳳綺の彼氏
「えぇ。まったく・・・惚気られちゃったわv」
鳳綺は、清清しい顔で携帯を閉じる

『お帰りv』
柳宿は、玄関に帰ってきた翼宿を笑顔で出迎える
『今日は大変だったわ~玲麗と功児が実習の当番サボって教授に超怒鳴られとって・・・』
いつもいつも最近は、翼宿の大学の話を聞かせてもらう毎日だ
柳宿にとって、これ以上の至福はなかった
聞いてみたいな。どんな声してるんだろう
いつもいつもそんな好奇心が頭の中を駆け巡っていた
しかし・・・叶わないだろう
最近サボっていた病院に行ってみたが、やはり完治は難しいとの事だ
それでも、彼と一生いられるならば・・・昔ほど落ち込む事はなくなった
『ほな・・・俺バイト行くわ』
翼宿が立ち上がる
言いたい
『行ってらっしゃい』を

「たすきっ・・・」

その時、自分の口をついて出た言葉
翼宿は、驚いていた
しかし、次の瞬間
「行ってきます」
彼はそう答えたような気がした
眩しい笑顔で

いつか・・・いつか、あなたと語り合いたい
大好きなその声を・・・聞きたい
そして・・・私の声をあなたに聞かせたい
愛情というサインで
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