ホーリー母校に帰る

カランカラン
「いらっしゃいませ~」
「あ。星宿先生!!」
「ああ・・・すみません。鳳綺先生・・・」
とある喫茶店の扉を開けた美しい女性は、男性に声をかける
その男性は、さっきから一向に減らない珈琲を前に、考え事をしていた
「・・・先生。元気を出してください・・・。先生は・・・、何も間違ってません」
そう
それは、今朝だった
柳宿の退学を命じられたのは・・・
尾宿の退職処分を教育委員会に、朱雀主任が申し出たところ
「教師が間違った事を正すのは、当然だ。それに負けてしまった生徒が悪い。よって、そんな愚か者とつるむその生徒自身を退学処分にするべきだ」
そう、言い放ったのだ
全て、親が尾宿を解雇させない為の口実だった
「間違っています・・・。今の世の中は・・・」
鳳綺も、唇を噛み締める
「私は・・・本当に、あの子を、翼宿の元へ行かせてよかったのだろうか・・・?」
「・・・先生。それは、誤った選択ではなかったと思いますよ。彼女の気持ちを・・・あなたは大切にしたんですよ」
「翼宿も・・・変わろうとしてきている。彼の心の闇を取り除いて上げられるのは、彼女しかいないんです」
その場に、沈黙が流れる
分かっている
今、本当に悔しいのは翼宿の筈だった
「私は・・・あなたの味方ですよ。星宿先生・・・」
鳳綺も、その揺るぎない想いを懸命に星宿にぶつけた


『翼宿・・・・・・・・・あたしね・・・・・・・・・・・・・退学に・・・なったんだ』

そのまま、彼女は帰っていった
自分は、何も声をかけてあげる事が出来なかった
「翼宿・・・」
「・・・・・・・」
「しっかりせぇ。お前らしくあらん」
あれから、心配になって様子を見に来た功児に、翼宿はぽつりぽつりと事の次第を話し出した
「・・・俺のせいやな・・・。あいつ・・・夢に向かって、頑張っとったのに・・・」
さすがの翼宿も、ショックを隠せないようだった
なぜだか分からないが・・・あいつが泣いている
ただ、それだけの事なのに
今まで、何人も・・・女を泣かせてきたのに
「お前も・・・変わったんやな」
「何が・・・」
「・・・そいつが・・・お前の求めてる女っちゅう・・・証拠なんやろ」
「何・・・言うてんねん。お前・・・んな阿呆な事ある訳が・・・」
「翼宿」
翼宿は、途端に黙った
「こればっかは、副団長に従ってもらうで。お前は、もう十分無理しすぎたやろ」
「功児・・・」
だからといって、どうすればいいかも分からなかった
散々、あの学校を滅茶苦茶にしてきた自分に・・・今更、何が出来るというのか
「明日・・・全校集会するやろな」
その言葉に、翼宿はある案を思いついた
「功児・・・」
酒のグラスの氷がカランと動く
「明日・・・TSUBASAの最後の大仕事や・・・」
その瞳には、決意が芽生えていた
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