ホーリー母校に帰る
ザーーーーーーーー
互いに、硬直する
相手は、傘を差して、こちらを見ている
「お前は・・・」
「お邪魔やったな」
不敵に笑う団長
「・・・へぇ。そいつが、お前の好みなんか?結構、綺麗やん。一発でヤれそうな・・・」
その言葉に、軫宿は、柳宿を後ろに回した
「お前・・・!!その邪道な目で、こいつを見るな!!」
「何言うとるん。あんただって、期待しとるんやろ?そんな美女、食えたら本望・・・」
「やめろ!!」
ゴロゴロゴロゴロ
雷は、遠くで鳴り続ける
「ほな、俺はお暇するわ。これから、二丁目襲撃するんでな。暇やないんや」
翼宿は、柳宿を見た
「・・・またな」
柳宿は、震え上がった
その場に、沈黙が流れる
「・・・柳宿」
軫宿は、向き直った
「誤解しないでくれ・・・でも・・・、俺はお前が好きだ。俺の過去が失敗なら・・・、俺はお前と人生をやり直したいんだ・・・」
「軫宿・・・」
「心配をかけて、すまなかったな。教室に・・・戻ろう」
「・・・うん」
戻った二人を、星宿は暖かく出迎えた
教室の生徒も、軫宿に頭を下げた
軫宿は、「もういい」とその言葉を言い続けた
放課後
「みつかけ・・・さん」
声をかけられ、振り向くと、張宿の姿
その頬は、涙で濡れている
「・・・どうした?」
「僕・・・僕なんです・・・。軫宿さんの過去を・・・知人に教えたのは・・・。そこから、クラスメイトに広まって・・・。僕、職員室での先生方の会話をたまたま聞いてしまって・・・、それで・・・本当にごめんなさい!!」
張宿は、頭を下げた
軫宿は、そっと近寄ると、震える張宿の頭を撫でた
「いい。気にするな。真実なんだしな」
「でも・・・、僕・・・軫宿さんと友達になりたいです・・・」
「・・・・・・・」
「鬼宿さんも、美朱さんも、井宿さんも、そう言ってました。僕ら・・・、軫宿さんと壁を作らずに友達になりたいんです!!」
「・・・そうか」
軫宿は、ただ微笑むと、静かに去っていった
その日の夜
ベッドに寝転がりながら、柳宿は考えていた
軫宿の事と・・・あいつの事
勿論、軫宿は大事な友達だ
救ってあげたいとも思う
でも、違う・・・好きじゃない
そして、今日、初めて間近で見た「あいつ」の顔
恐かった・・・物凄く恐かった
あの凍てついた瞳
同じ人間なのに、なぜあそこまで彼は、変わってしまったのだろうか
こっそり、コピーしてきた彼の履歴書を見る
「どう見ても・・・完璧主義じゃない」
ガリ勉な顔は、決してしてなかった
寧ろ、少々人相は悪くもその顔立ちは、ハンサムなものだった
髪の毛は、今のように橙色ではなく、きちんとした黒髪だった
彼に、一体何があったのだろうか
知りたい
次の日の放課後
「・・・何?」
柳宿は、星宿を中庭に呼び出した
どうしても、担任と話がしたかった
「・・・先生。知ってるんですか?「TSUBASA」の暴走族の真実を・・・」
「柳宿・・・?」
「あたし・・・、調べました。あの・・・団長の正体を」
「・・・何だって・・・!?」
「2003年度卒業予定生の翼宿。成績優秀で、陸上部でも県大会1位。どこをとっても、完璧だったその生徒。しかし、酒と煙草に手をつけたせいで、教師に殴打され、そのまま学校を退学する・・・」
「・・・・・・・・」
星宿は、絶句した
「・・・それで、この学園を長年、逆恨みってとこかしら?」
「柳宿・・・お前・・・」
「放っておける訳ないわよ。いつ、被害者が出るか分からないし、それに先生だって・・・」
星宿は、柳宿の肩に手を置く
「柳宿・・・。分かった。もういいから。生徒を巻き込みたくはない。それ以上、奴らには関わるな」
「でも・・・」
「先生に任せてくれ・・・な?」
星宿だって、手段は分からなかったが、生徒を安心させるには、それしかないと思ったのだ
中庭から、廊下に出ると、軫宿と鉢合わせた
「軫宿・・・」
「・・・・・・・」
まさか、今のを聞かれていた・・・?
「・・・今日も、お疲れ様。また明日学校でね!!」
そのまま、通り過ぎようとして
「・・・柳宿!!」
その声に、立ち止まる
「お前・・・どうして、あいつの事を・・・」
聞かれていた
咄嗟に焦った
「何の・・・事・・・?」
「最近、休み時間にすぐいなくなっていた訳が・・・やっと分かった。あいつの事を、調べていたんだな?」
顔は背けたまま、柳宿は黙った
「軫宿・・・あのね・・・」
軫宿は、柳宿を後ろから抱きしめた
「・・・俺じゃ・・・、駄目なのか・・・?」
「・・・・・・・・・・」
「俺じゃ・・・、お前を幸せにしてやれないのか・・・?」
「・・・何・・・言って・・・」
「まさか・・・・・・・・・・・・・あいつの事を・・・」
柳宿は、静かにその腕を振り払った
「あのね・・・軫宿。あたし、あれから一晩考えたんだけど・・・あなたの事、友達以上には見れないんだ・・・。あたし達、これからもいい友達でいましょう?」
その言葉に、彼はもう何も言う事が出来なかった
その週の土曜日
柳宿は、ある女性と待ち合わせをして、喫茶店に来ていた
それは、知人から紹介して貰った翼宿の同級生・・・
少々、恐かったが、彼の事を知るにはしょうがない
「柳宿・・・ちゃん?」
声をかけられた
「はい・・・」
「ごめんね。待たせちゃって・・・あたし・・・玲麗です」
自分より小柄で、幼い顔をしているが、一応先輩だった
「・・・今日は、すみませんでした」
「いいのいいの!!・・・色々と、大変みたいね。そっちの学校・・・」
「・・・はい」
「あいつの話が・・・聞きたいんだっけ?」
「はい・・・何が、あったんですか?履歴書には、教師殴打って書かれていて・・・一体何が・・・」
「あいつ・・・酒と煙草に手出した事で、生徒指導の尾宿にボコボコにされたんだ」
その言葉に、言葉を失う
「・・・尾・・・宿が・・・?」
「ああ。まだ、そっちの学校にいるんだ?」
「はい・・・」
「やっぱりね。権力強いから。あの親父・・・」
「でも・・・生徒に手をあげたら、その教師だって退職処分じゃ・・・」
「あいつの親父、教育委員会の理事長やってんのよ。だから、事態ももみ消されたの」
「そんな・・・」
「・・・あれは、完全に尾宿が悪いわよ。翼宿は、言えば分かる奴だったから。・・・気さくでね、熱い奴だった。負けず嫌いで・・・最初は、何でも頑張る奴だった。クラスの人気者だったわ。酒と煙草が何よ?当時は、翼宿よりもっと酷い事をやってた奴が、たくさんいたわ」
その言葉に、柳宿は一発で分かった
(この人は、翼宿が好きだったんだ・・・)
「だから、あたしもびっくりした。街中で、あいつ見た時は・・・とても声なんてかけられるもんじゃなかった」
自分よりずっとショックを受けているのは、彼の同級生だった
「すみません・・・」
「いいのいいの!!謝らないで!!でも・・・、柳宿ちゃん。これから、どうするの?あいつの事なんか調べて・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「あたしが言うのも何だけど・・・もう、関わらない方がいいと思う」
「・・・そう・・・ですよね」
「ま・・・特別な感情でも、持ってれば・・・別だけどね」
その言葉に、柳宿は首を横に振った
「そんなんじゃありません!!あたしは、ただ・・・」
「冗談よ!!・・・今の彼は、お薦めしないわ。・・・無理よ。人生やり直せないわ・・・あいつは、もう。酒だって煙草だって麻薬だって暴走だって・・・暴力だって女遊びするのだって・・・あいつは、十八番だから」
「・・・・・・・・・」
「警察も、手をつけられない状態よ」
玲麗は、ため息をつく
「今日は・・・ありがとうございました」
「いいのよ。あたしで良ければ、またいつでも相談に乗るからね」
その二人を、一人の男性は、ガムを噛みながらじっと見つめていた
月曜日
柳宿は、いつも通り登校した
勿論、軫宿と顔を合わせるのは気まずかったが・・・
星宿も、何となく自分を監視しているようだし、もう周りに気づかれたくはなかった
これ以上、あいつの事を調べても、何も変わらない
あれ以来、彼の姿も見ていないし、下手に関われば、確かに自分の身の危険を感じる
だけど・・・本当は、救ってあげたかった
なぜだかは、分からないけれど
柳宿は、日直の仕事を終えて、帰路についていた
辺りは夕闇に包まれていた
「やば・・・早く帰らないと・・・今日、夕食当番だった」
いそいそと、曲がり角を曲がる
すると
ドンッ
誰かにぶつかった
「あ・・・ごめんなさ・・・」
相手を見て
凍りついた
「よぉ」
あの橙頭
互いに、硬直する
相手は、傘を差して、こちらを見ている
「お前は・・・」
「お邪魔やったな」
不敵に笑う団長
「・・・へぇ。そいつが、お前の好みなんか?結構、綺麗やん。一発でヤれそうな・・・」
その言葉に、軫宿は、柳宿を後ろに回した
「お前・・・!!その邪道な目で、こいつを見るな!!」
「何言うとるん。あんただって、期待しとるんやろ?そんな美女、食えたら本望・・・」
「やめろ!!」
ゴロゴロゴロゴロ
雷は、遠くで鳴り続ける
「ほな、俺はお暇するわ。これから、二丁目襲撃するんでな。暇やないんや」
翼宿は、柳宿を見た
「・・・またな」
柳宿は、震え上がった
その場に、沈黙が流れる
「・・・柳宿」
軫宿は、向き直った
「誤解しないでくれ・・・でも・・・、俺はお前が好きだ。俺の過去が失敗なら・・・、俺はお前と人生をやり直したいんだ・・・」
「軫宿・・・」
「心配をかけて、すまなかったな。教室に・・・戻ろう」
「・・・うん」
戻った二人を、星宿は暖かく出迎えた
教室の生徒も、軫宿に頭を下げた
軫宿は、「もういい」とその言葉を言い続けた
放課後
「みつかけ・・・さん」
声をかけられ、振り向くと、張宿の姿
その頬は、涙で濡れている
「・・・どうした?」
「僕・・・僕なんです・・・。軫宿さんの過去を・・・知人に教えたのは・・・。そこから、クラスメイトに広まって・・・。僕、職員室での先生方の会話をたまたま聞いてしまって・・・、それで・・・本当にごめんなさい!!」
張宿は、頭を下げた
軫宿は、そっと近寄ると、震える張宿の頭を撫でた
「いい。気にするな。真実なんだしな」
「でも・・・、僕・・・軫宿さんと友達になりたいです・・・」
「・・・・・・・」
「鬼宿さんも、美朱さんも、井宿さんも、そう言ってました。僕ら・・・、軫宿さんと壁を作らずに友達になりたいんです!!」
「・・・そうか」
軫宿は、ただ微笑むと、静かに去っていった
その日の夜
ベッドに寝転がりながら、柳宿は考えていた
軫宿の事と・・・あいつの事
勿論、軫宿は大事な友達だ
救ってあげたいとも思う
でも、違う・・・好きじゃない
そして、今日、初めて間近で見た「あいつ」の顔
恐かった・・・物凄く恐かった
あの凍てついた瞳
同じ人間なのに、なぜあそこまで彼は、変わってしまったのだろうか
こっそり、コピーしてきた彼の履歴書を見る
「どう見ても・・・完璧主義じゃない」
ガリ勉な顔は、決してしてなかった
寧ろ、少々人相は悪くもその顔立ちは、ハンサムなものだった
髪の毛は、今のように橙色ではなく、きちんとした黒髪だった
彼に、一体何があったのだろうか
知りたい
次の日の放課後
「・・・何?」
柳宿は、星宿を中庭に呼び出した
どうしても、担任と話がしたかった
「・・・先生。知ってるんですか?「TSUBASA」の暴走族の真実を・・・」
「柳宿・・・?」
「あたし・・・、調べました。あの・・・団長の正体を」
「・・・何だって・・・!?」
「2003年度卒業予定生の翼宿。成績優秀で、陸上部でも県大会1位。どこをとっても、完璧だったその生徒。しかし、酒と煙草に手をつけたせいで、教師に殴打され、そのまま学校を退学する・・・」
「・・・・・・・・」
星宿は、絶句した
「・・・それで、この学園を長年、逆恨みってとこかしら?」
「柳宿・・・お前・・・」
「放っておける訳ないわよ。いつ、被害者が出るか分からないし、それに先生だって・・・」
星宿は、柳宿の肩に手を置く
「柳宿・・・。分かった。もういいから。生徒を巻き込みたくはない。それ以上、奴らには関わるな」
「でも・・・」
「先生に任せてくれ・・・な?」
星宿だって、手段は分からなかったが、生徒を安心させるには、それしかないと思ったのだ
中庭から、廊下に出ると、軫宿と鉢合わせた
「軫宿・・・」
「・・・・・・・」
まさか、今のを聞かれていた・・・?
「・・・今日も、お疲れ様。また明日学校でね!!」
そのまま、通り過ぎようとして
「・・・柳宿!!」
その声に、立ち止まる
「お前・・・どうして、あいつの事を・・・」
聞かれていた
咄嗟に焦った
「何の・・・事・・・?」
「最近、休み時間にすぐいなくなっていた訳が・・・やっと分かった。あいつの事を、調べていたんだな?」
顔は背けたまま、柳宿は黙った
「軫宿・・・あのね・・・」
軫宿は、柳宿を後ろから抱きしめた
「・・・俺じゃ・・・、駄目なのか・・・?」
「・・・・・・・・・・」
「俺じゃ・・・、お前を幸せにしてやれないのか・・・?」
「・・・何・・・言って・・・」
「まさか・・・・・・・・・・・・・あいつの事を・・・」
柳宿は、静かにその腕を振り払った
「あのね・・・軫宿。あたし、あれから一晩考えたんだけど・・・あなたの事、友達以上には見れないんだ・・・。あたし達、これからもいい友達でいましょう?」
その言葉に、彼はもう何も言う事が出来なかった
その週の土曜日
柳宿は、ある女性と待ち合わせをして、喫茶店に来ていた
それは、知人から紹介して貰った翼宿の同級生・・・
少々、恐かったが、彼の事を知るにはしょうがない
「柳宿・・・ちゃん?」
声をかけられた
「はい・・・」
「ごめんね。待たせちゃって・・・あたし・・・玲麗です」
自分より小柄で、幼い顔をしているが、一応先輩だった
「・・・今日は、すみませんでした」
「いいのいいの!!・・・色々と、大変みたいね。そっちの学校・・・」
「・・・はい」
「あいつの話が・・・聞きたいんだっけ?」
「はい・・・何が、あったんですか?履歴書には、教師殴打って書かれていて・・・一体何が・・・」
「あいつ・・・酒と煙草に手出した事で、生徒指導の尾宿にボコボコにされたんだ」
その言葉に、言葉を失う
「・・・尾・・・宿が・・・?」
「ああ。まだ、そっちの学校にいるんだ?」
「はい・・・」
「やっぱりね。権力強いから。あの親父・・・」
「でも・・・生徒に手をあげたら、その教師だって退職処分じゃ・・・」
「あいつの親父、教育委員会の理事長やってんのよ。だから、事態ももみ消されたの」
「そんな・・・」
「・・・あれは、完全に尾宿が悪いわよ。翼宿は、言えば分かる奴だったから。・・・気さくでね、熱い奴だった。負けず嫌いで・・・最初は、何でも頑張る奴だった。クラスの人気者だったわ。酒と煙草が何よ?当時は、翼宿よりもっと酷い事をやってた奴が、たくさんいたわ」
その言葉に、柳宿は一発で分かった
(この人は、翼宿が好きだったんだ・・・)
「だから、あたしもびっくりした。街中で、あいつ見た時は・・・とても声なんてかけられるもんじゃなかった」
自分よりずっとショックを受けているのは、彼の同級生だった
「すみません・・・」
「いいのいいの!!謝らないで!!でも・・・、柳宿ちゃん。これから、どうするの?あいつの事なんか調べて・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「あたしが言うのも何だけど・・・もう、関わらない方がいいと思う」
「・・・そう・・・ですよね」
「ま・・・特別な感情でも、持ってれば・・・別だけどね」
その言葉に、柳宿は首を横に振った
「そんなんじゃありません!!あたしは、ただ・・・」
「冗談よ!!・・・今の彼は、お薦めしないわ。・・・無理よ。人生やり直せないわ・・・あいつは、もう。酒だって煙草だって麻薬だって暴走だって・・・暴力だって女遊びするのだって・・・あいつは、十八番だから」
「・・・・・・・・・」
「警察も、手をつけられない状態よ」
玲麗は、ため息をつく
「今日は・・・ありがとうございました」
「いいのよ。あたしで良ければ、またいつでも相談に乗るからね」
その二人を、一人の男性は、ガムを噛みながらじっと見つめていた
月曜日
柳宿は、いつも通り登校した
勿論、軫宿と顔を合わせるのは気まずかったが・・・
星宿も、何となく自分を監視しているようだし、もう周りに気づかれたくはなかった
これ以上、あいつの事を調べても、何も変わらない
あれ以来、彼の姿も見ていないし、下手に関われば、確かに自分の身の危険を感じる
だけど・・・本当は、救ってあげたかった
なぜだかは、分からないけれど
柳宿は、日直の仕事を終えて、帰路についていた
辺りは夕闇に包まれていた
「やば・・・早く帰らないと・・・今日、夕食当番だった」
いそいそと、曲がり角を曲がる
すると
ドンッ
誰かにぶつかった
「あ・・・ごめんなさ・・・」
相手を見て
凍りついた
「よぉ」
あの橙頭