ホーリー母校に帰る
「校長!!教えてください・・・「TSUBASA」は・・・、なぜこの学園を・・・?」
人一倍、朱雀学園に思い入れのある星宿は、すぐさま校長に抗議をした
太一君校長は、唇を噛んでいる
「先生・・・。何も聞かないでください。彼らも、直に収まると思います」
「そんな・・・」
「生徒の安全第一・・・。私たちは、とにかく生徒を護りましょう?」
確かに、最もだが、なぜかこの学校全体が自分に何かを隠している
そんな気がして、ならなかった
次の日
「みんな。おはよう」
「先生!!「TSUBASA」が、襲撃に来たって本当ですか!?」
クラスの生徒が、自分に問い掛ける
「ああ・・・。噂になっていたか。みんなも関わらないように、気をつけるんだぞ?」
きっと、近所の子ならば、「TSUBASA」の噂は前々から知っていただろう
だからこそ、担任として深く関わってはいけないのだ
「でも・・・私、知ってる」
生徒の一人が、呟いた
「あの中に、この学校の退学者がいるんでしょ?」
その言葉に、星宿は驚いた
「本当か?」
「噂ですけど・・・、その生徒がこの学校に因縁つけただとか何とかで・・・」
「何だそりゃあ~?いい迷惑だぜ~」
そうか
それで、この学校が何かを隠している事が分かる
しかし、特定は出来なかった
『覚えてろや』
昨日、自分を殴りかけたあの男
思い出しただけで、鳥肌が立つ
「さぁさぁ!!みんな、静かに!!今日は、各委員を決めるぞ!!まずは、学級委員だ!!」
皆の中から、ブーイングが広がる
「・・・自薦他薦でまずは、アンケートを取るが・・・、誰かなってもいいという奴はいないか?」
その場が、静まり返る
まぁ、お決まりだ
すると
「先生!!私は、井宿がいいと思います!!」
またもや、あの元気なお団子娘が立ち上がった
「井宿は、入学式の朝、誰よりも早く来て、窓を開けたり、植物に水をあげたり・・・、みんなにも挨拶を忘れないし、そんな人が、このクラスの学級委員にぴったりだと思います!!」
井宿は、家が寺である坊主の見習だった
そんな環境だからか、生徒一人一人に優しく、よく周りにも機転が利いていた
それは、星宿も感じていた
「だ・・・そうだが・・・、井宿。やってみる気はあるかい?」
星宿は、本人に問い掛ける
井宿は、少々顔を赤らめながら、立ち上がった
「こんなおいらで良ければ・・・、よろしくお願いします」
得意の笑顔で、挨拶をする
その場に、拍手が沸き起こった
星宿は、その光景にホッとした
しかし
「あれぇ?井宿は?」
「欠席か?あいつが?」
次の日から、井宿はクラスから姿を消していた
「特に、ご家族から連絡も貰ってないし・・・。どうしたんだろうな?」
それから、井宿は3日間学校を休み続けた
さすがに、気になった星宿は、彼の家の寺を訪ねてみる事にした
ギャアギャアギャア・・・
烏の泣き声が不気味に響く
『准雀寺』
その門をくぐる
森の木々に囲まれているその寺の境内は、どこか寂しそうな面影さえ覚えた
(ここに、井宿が・・・?)
そっと、境内を覗く
「こんにちは」
返事はない
しかし、人の気配はする
「失礼します・・・」
星宿は、そっと境内に足を踏み入れた
中は、真っ暗で、何処からか線香の匂いが漂う
そして、その庭の軒先に、その姿は見えた
「井宿・・・」
その横顔は、どこか寂しそうに見えた
すると、こちらに気づいた
「先生・・・」
「すまない。勝手に押しかけてしまって・・・」
「いえ・・・。気づきもしないで、すみません・・・」
「お前が、学校を3日間も休んだので、心配になってな」
「すみません。急に、寺の仕事が・・・入ったもので」
「しかし、連絡くらいよこしてもいいんじゃないかな?」
「・・・・・とりあえず、今、茶を持ってきます。ここで、待っていてください」
井宿は、奥へと入っていった
そのただならぬ様子に、星宿は首を傾げた
「どうぞ・・・」
「ありがとう。今日は、様子を見に来ただけなんだ。忙しいなら、お暇するよ」
「いいえ。ゆっくり、していってください・・・」
「ご家族の方は?」
「今は、出ています」
「そうか・・・。せっかくだから、挨拶も兼ねて・・・と、思っていたんだが」
「・・・・・・・・・・・」
「どうした?井宿」
「え・・・?」
「思いつめていないか?」
「いえ・・・。別に・・・」
「何かあるなら、先生に話してもいいんだぞ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・先生。おいら・・・、本当は、高校に進学してはいけなかったんです」
その言葉に、星宿は驚いた
「父親に、寺を継げと言われました。しかし、おいらには夢があった。警察官になりたいんです。その為にも、きちんと高校を出て、いい大学に進学したかったんです。けれど、父親はその願いを聞き入れてはくれなくて・・・、結果、先日に寺で謹慎していろと命じられたんです」
「そんな事が・・・。親は、君の背中を後押ししてあげなければいけないと思うが・・・」
「母親が、昔に亡くなり、父はおいらにしか望みを託せないそうなんです」
「・・・・・・・・・・・・」
「すみません。こんな話を・・・。せっかく、学級委員に推薦していただいたのに」
「しかし・・・、お前は、あのクラスに必要な人間だよ。いてくれるだけで、安心する・・・君は空気のような存在だ」
「先生・・・」
「担任が、来ているだと!?」
その言葉に、星宿と井宿は振り返った
「父上・・・」
「井宿・・・。なぜ、こいつをあげている・・・!?」
「初めまして。井宿君の担任の・・・星宿といいます」
「帰ってください。息子は、退学させますので・・・」
「ちょっと待ってください。お父さん!!息子さんを、学校に行かせてあげてください!!彼・・・、夢があるんです・・・。立派な夢だと思います。私も、息子さんを応援してあげたいんです・・・」
「何を戯けた事を・・・この李家に生まれたからには、こいつには寺を継がせる義務があるんです。余所者にどうこう言われる筋合いはない!!」
「しかし・・・」
「帰れ!!井宿!!修行の時間だぞ!!何をしている!!」
気性の激しい父親の前
星宿も、負けてはいられなかった
「お願いします!!」
頭を下げる
「先生・・・!?」
「彼は・・・、1年B組にとって必要な存在です。みんな・・・、彼を学級委員に選ぶ程に、彼を信頼しています。私だって、そうです!!彼の夢を・・・、道を・・・、閉ざさないであげてください!!」
星宿は、必死で頭を下げ続ける
その姿に、井宿は胸が熱くなり、共に頭を下げた
「父上・・・。お願いします。おいらも・・・、この先生と・・・、友達と一緒に・・・、高校生活を過ごしてみたいんです」
「・・・・・・・・」
父親は、言葉を失っていた
そのまま、舌打ちをすると
「まったく・・・。最近の教員はろくなやつがいない。坊主に頭を下げるなど、馬鹿げている。井宿。もう勝手にしろ。私は、認めないからな。その道を選んだ事を後悔する日が来るまで・・・」
廊下の向こうへと、歩いていった
「先生・・・。どうも、すみませんでした。変ないざこざに巻き込んでしまって・・・」
「いや。私は、大丈夫だ。それより・・・、大丈夫か?井宿」
「今夜、きちんと父と話をしてみます。それ次第では、明日学校に・・・」
「ああ。待ってるからな」
そのまま、星宿と井宿は、別れた
人の前で、頭を下げるなんて初めてした
本当は、恐かった
けれど、生徒の為なら、自分の名誉など、どうでもよかったのだ
そんな気持ちが、星宿には芽生え始めていた
次の日
「先生~。井宿は、今日も休み?」
「一体、どうしちゃったの?」
相変わらず、井宿の席は空席
星宿は、ため息をついた
「しょうがない。授業を始めるか・・・」
ガラッ
ドアを開けたのは、息切れをしている井宿の姿
「井宿・・・」
星宿の顔に、笑みが零れる
「先生・・・。ただいま」
その顔に、後悔はなかった
ガン
傍にある空き缶を蹴り倒した
その集団
「団長に、ガン飛ばしよったその罪は、重いでぇ?」
仲間の復讐
人一倍、朱雀学園に思い入れのある星宿は、すぐさま校長に抗議をした
太一君校長は、唇を噛んでいる
「先生・・・。何も聞かないでください。彼らも、直に収まると思います」
「そんな・・・」
「生徒の安全第一・・・。私たちは、とにかく生徒を護りましょう?」
確かに、最もだが、なぜかこの学校全体が自分に何かを隠している
そんな気がして、ならなかった
次の日
「みんな。おはよう」
「先生!!「TSUBASA」が、襲撃に来たって本当ですか!?」
クラスの生徒が、自分に問い掛ける
「ああ・・・。噂になっていたか。みんなも関わらないように、気をつけるんだぞ?」
きっと、近所の子ならば、「TSUBASA」の噂は前々から知っていただろう
だからこそ、担任として深く関わってはいけないのだ
「でも・・・私、知ってる」
生徒の一人が、呟いた
「あの中に、この学校の退学者がいるんでしょ?」
その言葉に、星宿は驚いた
「本当か?」
「噂ですけど・・・、その生徒がこの学校に因縁つけただとか何とかで・・・」
「何だそりゃあ~?いい迷惑だぜ~」
そうか
それで、この学校が何かを隠している事が分かる
しかし、特定は出来なかった
『覚えてろや』
昨日、自分を殴りかけたあの男
思い出しただけで、鳥肌が立つ
「さぁさぁ!!みんな、静かに!!今日は、各委員を決めるぞ!!まずは、学級委員だ!!」
皆の中から、ブーイングが広がる
「・・・自薦他薦でまずは、アンケートを取るが・・・、誰かなってもいいという奴はいないか?」
その場が、静まり返る
まぁ、お決まりだ
すると
「先生!!私は、井宿がいいと思います!!」
またもや、あの元気なお団子娘が立ち上がった
「井宿は、入学式の朝、誰よりも早く来て、窓を開けたり、植物に水をあげたり・・・、みんなにも挨拶を忘れないし、そんな人が、このクラスの学級委員にぴったりだと思います!!」
井宿は、家が寺である坊主の見習だった
そんな環境だからか、生徒一人一人に優しく、よく周りにも機転が利いていた
それは、星宿も感じていた
「だ・・・そうだが・・・、井宿。やってみる気はあるかい?」
星宿は、本人に問い掛ける
井宿は、少々顔を赤らめながら、立ち上がった
「こんなおいらで良ければ・・・、よろしくお願いします」
得意の笑顔で、挨拶をする
その場に、拍手が沸き起こった
星宿は、その光景にホッとした
しかし
「あれぇ?井宿は?」
「欠席か?あいつが?」
次の日から、井宿はクラスから姿を消していた
「特に、ご家族から連絡も貰ってないし・・・。どうしたんだろうな?」
それから、井宿は3日間学校を休み続けた
さすがに、気になった星宿は、彼の家の寺を訪ねてみる事にした
ギャアギャアギャア・・・
烏の泣き声が不気味に響く
『准雀寺』
その門をくぐる
森の木々に囲まれているその寺の境内は、どこか寂しそうな面影さえ覚えた
(ここに、井宿が・・・?)
そっと、境内を覗く
「こんにちは」
返事はない
しかし、人の気配はする
「失礼します・・・」
星宿は、そっと境内に足を踏み入れた
中は、真っ暗で、何処からか線香の匂いが漂う
そして、その庭の軒先に、その姿は見えた
「井宿・・・」
その横顔は、どこか寂しそうに見えた
すると、こちらに気づいた
「先生・・・」
「すまない。勝手に押しかけてしまって・・・」
「いえ・・・。気づきもしないで、すみません・・・」
「お前が、学校を3日間も休んだので、心配になってな」
「すみません。急に、寺の仕事が・・・入ったもので」
「しかし、連絡くらいよこしてもいいんじゃないかな?」
「・・・・・とりあえず、今、茶を持ってきます。ここで、待っていてください」
井宿は、奥へと入っていった
そのただならぬ様子に、星宿は首を傾げた
「どうぞ・・・」
「ありがとう。今日は、様子を見に来ただけなんだ。忙しいなら、お暇するよ」
「いいえ。ゆっくり、していってください・・・」
「ご家族の方は?」
「今は、出ています」
「そうか・・・。せっかくだから、挨拶も兼ねて・・・と、思っていたんだが」
「・・・・・・・・・・・」
「どうした?井宿」
「え・・・?」
「思いつめていないか?」
「いえ・・・。別に・・・」
「何かあるなら、先生に話してもいいんだぞ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・先生。おいら・・・、本当は、高校に進学してはいけなかったんです」
その言葉に、星宿は驚いた
「父親に、寺を継げと言われました。しかし、おいらには夢があった。警察官になりたいんです。その為にも、きちんと高校を出て、いい大学に進学したかったんです。けれど、父親はその願いを聞き入れてはくれなくて・・・、結果、先日に寺で謹慎していろと命じられたんです」
「そんな事が・・・。親は、君の背中を後押ししてあげなければいけないと思うが・・・」
「母親が、昔に亡くなり、父はおいらにしか望みを託せないそうなんです」
「・・・・・・・・・・・・」
「すみません。こんな話を・・・。せっかく、学級委員に推薦していただいたのに」
「しかし・・・、お前は、あのクラスに必要な人間だよ。いてくれるだけで、安心する・・・君は空気のような存在だ」
「先生・・・」
「担任が、来ているだと!?」
その言葉に、星宿と井宿は振り返った
「父上・・・」
「井宿・・・。なぜ、こいつをあげている・・・!?」
「初めまして。井宿君の担任の・・・星宿といいます」
「帰ってください。息子は、退学させますので・・・」
「ちょっと待ってください。お父さん!!息子さんを、学校に行かせてあげてください!!彼・・・、夢があるんです・・・。立派な夢だと思います。私も、息子さんを応援してあげたいんです・・・」
「何を戯けた事を・・・この李家に生まれたからには、こいつには寺を継がせる義務があるんです。余所者にどうこう言われる筋合いはない!!」
「しかし・・・」
「帰れ!!井宿!!修行の時間だぞ!!何をしている!!」
気性の激しい父親の前
星宿も、負けてはいられなかった
「お願いします!!」
頭を下げる
「先生・・・!?」
「彼は・・・、1年B組にとって必要な存在です。みんな・・・、彼を学級委員に選ぶ程に、彼を信頼しています。私だって、そうです!!彼の夢を・・・、道を・・・、閉ざさないであげてください!!」
星宿は、必死で頭を下げ続ける
その姿に、井宿は胸が熱くなり、共に頭を下げた
「父上・・・。お願いします。おいらも・・・、この先生と・・・、友達と一緒に・・・、高校生活を過ごしてみたいんです」
「・・・・・・・・」
父親は、言葉を失っていた
そのまま、舌打ちをすると
「まったく・・・。最近の教員はろくなやつがいない。坊主に頭を下げるなど、馬鹿げている。井宿。もう勝手にしろ。私は、認めないからな。その道を選んだ事を後悔する日が来るまで・・・」
廊下の向こうへと、歩いていった
「先生・・・。どうも、すみませんでした。変ないざこざに巻き込んでしまって・・・」
「いや。私は、大丈夫だ。それより・・・、大丈夫か?井宿」
「今夜、きちんと父と話をしてみます。それ次第では、明日学校に・・・」
「ああ。待ってるからな」
そのまま、星宿と井宿は、別れた
人の前で、頭を下げるなんて初めてした
本当は、恐かった
けれど、生徒の為なら、自分の名誉など、どうでもよかったのだ
そんな気持ちが、星宿には芽生え始めていた
次の日
「先生~。井宿は、今日も休み?」
「一体、どうしちゃったの?」
相変わらず、井宿の席は空席
星宿は、ため息をついた
「しょうがない。授業を始めるか・・・」
ガラッ
ドアを開けたのは、息切れをしている井宿の姿
「井宿・・・」
星宿の顔に、笑みが零れる
「先生・・・。ただいま」
その顔に、後悔はなかった
ガン
傍にある空き缶を蹴り倒した
その集団
「団長に、ガン飛ばしよったその罪は、重いでぇ?」
仲間の復讐