ホーリー母校に帰る

「俺・・・、同じクラスの・・・、あの一番最初に先生に声かけた夕城美朱・・・。分かりますよね?」
「ああ。一番明るいあの子だね。僕も、最初に声をかけられただけに、励まされたよ」
「俺・・・、あいつと中学からの幼馴染なんですけど、いつも喧嘩してばっかりで・・・、結局告白できなくて高校に来たんです。結局、あいつと俺、同じ志望校だったからよかったし、こうしてまた同じクラスになれたけど・・・、でも、これからもあいつとこんな関係のままだったら、俺、嫌なんです!!」
淡い少年の恋心に、星宿は胸を打たれる
自分も、高校時代はたくさん恋をしたものだ
まだ若いから・・・という理由で、相談するのも頷ける
そっと、鬼宿の肩に手を置く
「鬼宿。無理して焦る事はないよ。告白というのにも、時期がある。急いでしまうと、却って逆効果になる事もあるからね?まずは、彼女の目を見てきちんと会話をしてごらん?喧嘩ばかりでは、「いつも通り」になってしまう。幼馴染ならではの会話をたくさんしてみたらどうかな?きっと、彼女も幼馴染の君を一番信頼している筈さ」
ベタすぎるけれど、誠実に星宿はアドバイスをした
「はい・・・。ありがとうございます!!」
鬼宿の顔にも、光が射したようだった

「はぁ・・・」
「早速、生徒から相談ですか?人気ですねv先生」
鳳綺は、星宿をからかう
「いやいや。参りましたよ。自分がいきなり相談受ける身になったと思うと・・・しかし、生徒は可愛いですね」
「教師って、授業を教えるよりも、生徒に頼られる方がやり甲斐があったりするんですよねv」
鳳綺も、同調する
「しかし、世の中には・・・解決しようのない悩みを持った生徒もたくさんいます。まだまだ、これからですよ」
突然、背後から声をかけられ、星宿は振り向いた
そこには、金髪で一見教師かと思う程の男
「失礼・・・。私、2年の学年主任の心宿です。以後よろしくお願いします」
「どうも・・・」
「あらぁv心宿先生が、1年の机に来てくださるなんて珍しいわvどうですか?今夜一杯v」
房宿が声色を変えて、心宿に近づく
「いえ。仕事がありますので」
「いけずぅ~・・・。そうやっていつも、誤魔化すぅ~」
鳳綺は、こちらを見て苦笑いをする

「柳宿!!」
「なぁによ?美朱!!こんなトコで、待たせて!!」
「へへっvごめんごめん!!」
夕日が差し込む教室の中、美朱は同じクラスメイト柳宿を待たせていた
「実はぁ~・・・、恋愛のプロ柳宿様に相談がありましてぇ~」
「何言ってんのよ。あたし、恋愛のプロじゃないわよ?」
「そっちこそ、なぁに言ってんのv男子から、浴びるようなファンレター貰った癖してv」
柳宿は、1年B組きっての美女
入学式にその容姿を見たタメや先輩から、その日にファンレターが続々届いた
そんな柳宿だからこそ、美朱は興味を持ち、今日話しかけたのだ
「あのさ・・・。柳宿、好きな子いる?」
「何言ってんの?今日一日で、出来る訳ないじゃない!!」
「だよね・・・」
「あ~?もしかして、あんた・・・」
「えっ!?・・・あ・・・あはは」
「鬼宿ね」
「どうして、分かるの!?」
「分からない方がおかしいわよ!!入学式から、校門で喧嘩して・・・。丸分かりよ」
「あっちゃ~・・・」
「で?どうすんの?告白、すんの?」
「でも・・・、あいつは、あたしの事きっと恋愛対象に見てないから・・・」
「そんな事ないわよ。あんた達、幼馴染なんでしょ?誰よりも、心を開いてるに決まってるじゃない」
「そうかなぁ・・・?」
「案外、相手もまんざらじゃなかったりして・・・ねv」
「えぇっ!?」
その時

パッパパパパー

バイクのクラクション
「何!?」

「何だ!?」
「どうした!?」
職員室からも、教師が校庭に目を向ける
「鳳綺先生・・・。これは・・・」
「今年も・・・、来ましたね」

「新入生の皆さぁ~んvご入学、おめでとうございまぁすvTSUBASAが、お祝いの舞いで~すv」
そう
それは、暴走族だった
たくさんのバイクが、旗を靡かせて校庭を走り回っている
「おい!!お前ら、何をしている!?」
教師が一斉に駆けつける
「出たぞぉ!!先コー先コー!!」
「きゃあああ!!」
教師の周りを、バイクが駆け回る
「翼宿様のお通りだぁ!!」
途端に、バイクが止まる
ザッ
その中の団長が姿を現す
橙頭にきつい三白眼
牙を剥き出しにして、ガムを噛んでいる
「・・・何や?せっかく、うちの子分らが、新入生歓迎しとるのに、雑魚教師が何の用や」
「貴様・・・!!まだ、こんな事を・・・」
「校長呼べ!!校長!!」
「ぶっ殺してやる!!」
他の族がざわめき出す
「今日は、視察や。今年も止まらんでぇ?俺らの朱雀学園への復讐は・・・な?」
その不敵な笑みに、教師達は震え上がる
「これは・・・、一体・・・」
星宿が、うめく
「3年前から・・・、この朱雀学園に因縁つけて荒らしに来ている暴走族です・・・。私たちが止めようにも数が多くて、全然手のつけようがなくて・・・、この学校一の問題なんです」
鳳綺が、耳打ちをする
その時
その中の団長と星宿の目が合った
「随分、若い教師が来たんやなぁ?」
「・・・・・・・・・・」
「また、面倒なんが増えた訳やなぁ?」
ゆっくりと、団長は近づく
「きゃあっ・・・」
「星宿先生・・・!!」
その場の教師は、避ける
目は逸らさない
「何やぁ?その目は」
「・・・・・・・・・・・・」
「俺を、ナメとるんか?」
「・・・なぜ、こんな事をする?」
「はぁ?何言うとんねん。この屑。そんなん気に入らないからに決まっとるやろ」
「・・・・・・・・・なぜ」
「そんなん、てめぇに言う必要はあらん」
「・・・・・・・・・・・・」
「いけすかん目やなぁ。この俺に歯向かったら、どうなるか・・・」
星宿の胸倉を掴む

「やめて!!」

そこに、少女の声が響く
「美朱・・・」
「星宿先生に何すんのよ!!離せ!!」
「美朱さん!!」
恐くて恐くて、仕方なかったけれど、美朱は担任を護る

「・・・会話つってもなぁ・・・。今更、何を話せばいいんだぁ~?」
その頃、何も知らない鬼宿は、下駄箱に向かっていた
すると、外が何やら騒がしい
目を凝らして見る
「え・・・美朱!?」

「きゃあああ!!」
美朱は、他の部下に取り押さえられた
「美朱!!」
「団長に手出したら、どうなるのか分かってんのか?」
「可哀想に。黙って、見てりゃあいいものの・・・」
その中の男が、美朱の顎をぐいと引いた

「美朱!!!!!!」

途端に、鬼宿が男をタックルした
「わっ!!」
「鬼宿・・・」
「こいつに手出すな!!」
「何だと・・・この餓鬼・・・!!!」

「やめぇ!!!」

団長の怒鳴り声
そのまま、団長は星宿を乱暴に突き飛ばした
「これ以上、騒ぎにすんな。面倒や。阿呆に付き合っとる時間はあらんのや。また今度・・・、ゆっくり来ますわ」
団長は、足元の星宿の前にしゃがむ
「覚えてろや」

そのまま、バイクは走り去った
「星宿先生!!大丈夫ですか!?」
「は・・・はい」
「無駄に挑発しない方が無難です・・・。辛いところですが・・・」
「しかし・・・、生徒が巻き添えになるところだったんですよ・・・」
何も出来なかった教師は、ただただ悔やむ

「たま・・・ほめ・・・」
「美朱!!怪我ないか!?」
「うん・・・。ありがとう・・・。鬼宿・・・。あたし・・・、あのままだったら・・・」
「なっ、何言ってんだよ!!」
そのまま、沈黙

「大事な奴が・・・、襲われそうになって、助けられないなんて男が廃るだろ・・・?」

美朱は、ポカンとする
そのままにっこり笑って、鬼宿に抱きつく
「ありがとっv鬼宿!!大好きv」
「わああ!!」

一方で、今までの様子を、柳宿は一人教室から唖然として見ていた
そして・・・、その場から姿を消した
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