ホーリー母校に帰る

「先生・・・どういう事ですか!?柳宿が・・・退学なんて・・・」
「そうだよ!!あいつが、何したってんだよ!!」
「もう一度・・・本人と話をさせてください!!」
「柳宿さんは、悪くないです!!悪いのは・・・悪いのは・・・」
校長室の前
美朱と、鬼宿と、井宿と、張宿は、抗議の嵐を校長室に浴びせていた
しかし、その前を苦痛の表情で止める1年の担任
本当は・・・彼らだって納得している筈はなかったのに
「おい!!ここを開けろ!!柳宿・・・柳宿っっっ!!!」
軫宿も・・・鍵が掛けられた校長室の扉を必死で叩いた

「・・・柳宿さん」
「はい」
「本当に・・・いいのですか?」
「はい」
校長室の中
太一君校長は、柳宿にそう問い掛ける
「あたしが、悪いんです。危険だと分かっていて、奴らに関わった。あたしは、危ない人間です。この学校の生徒たちを護る為には・・・これしかないんです」
こんなの本音じゃなかった
校長も、それは分かっていた
やり方は間違っていたかもしれないけれど、あいつに近づけたから・・・
ただ、それだけで・・・自分には十分だったのかもしれないから

「今日は、皆さんに大事なお話があります」
体育館に集められた生徒たち
その列の後ろで、美朱、鬼宿、井宿、張宿、軫宿・・・そして、星宿と鳳綺はステージを凝視していた

そして
「お疲れ様です」
入口で、教員が誰かに挨拶をしている
「父さん・・・」
「尾宿。大変だったな。今日は、視察といったところだよ。この学校が、きちんと責任を果たしてくれるか・・・な」
教育委員会の主任であり、尾宿の父親
彼は、不敵に微笑んだ
「大丈夫。お前を辞めさせはしないよ。悪いのは生徒・・・教師に歯向かう奴はみんな辞めさせればいい・・・」

「あれが・・・教育委員会の親父かよ・・・」
「何。あの人相・・・尾宿とそっくり・・・」
「僕・・・一発、ぶっ飛ばしてきたいです」
「やめるのだ。張宿。気持ちは分かるが・・・」
その横で、軫宿は拳を握り締めて唇を噛み締めた

「先生・・・しっかりしてください」
「・・・ああ」
星宿は、ショックを隠しきれないようだった
今から、自分の生徒が・・・退学になる

「今回、暴走族TSUBASAに関わった生徒がいる事が分かりました。なぜ、どんな目的で、彼らに関わっていたのかは分かりません。しかし・・・、あなた達生徒に、被害が出てしまう可能性がある。やむおえず・・・退学を命じました」
その横に、柳宿が座っていた
「では、最後に・・・柳宿さんから一言」
柳宿は、校長にマイクを通され、教壇に立つ
生徒の何人かがざわめき出す
「・・・あたし」

ブォォォォォ
パラララララ

そこに響いたのは、バイク音
皆が驚いて、入口を見る
「おらおらぁっ!!!おめえら、そこを通せ!!団長様のお通りだぁ!!!」
たくさんの族の仲間
そして、中央に開けた場所に
「たすき・・・」
団長は、いた
皆が、悲鳴をあげる
「翼宿・・・なぜ・・・」
星宿も、唖然としている
「何だ。お前らは!!!くそっ!!警察だ!!警察を呼べ!!!」
尾宿の父親が、怒鳴り声をあげる
そこで、功児が彼の前に立ちはだかった
そのまま、胸倉を掴む
「何を・・・」
「全て、お前の勝手さが原因や・・・そうやって、過去にうちの団長にしよった事を・・・お前は、あの子にしようとしてんねや・・・!!!てめえが・・・てめえが、犯罪者や!!!「教育」っちゅー名ばかりに依存した・・・くだらん犯罪者や!!!」
「功児!!!!」
団長の怒鳴り声に、功児は乱暴にその男を突き飛ばした
「騒ぎになる・・・その辺にしとけ。屑に何言うても・・・屑は屑や・・・」
「父さん!!!俺・・・俺が、間違ってた・・・俺が退職するよ・・・だから・・・」
「尾宿・・・」
父親に、涙声で訴える尾宿
そのまま、翼宿は歩を進める
生徒が、双方に避けていく
そのまま、ステージに上る
「・・・翼宿」
柳宿の目を見て・・・そして、微笑んだ
「安心せぇ。堕ちる時は・・・俺も、一緒や」
マイクを手に持つ

「俺の目を見ろ!!!」
その場が、静まり返った
「俺の人生をこんなにしたんは・・・教師や。今でも・・・この学校が憎い。教師が憎い・・・。俺は、この学校で本気やったんや・・・せやけど、過ちを犯してもうた。それは、自覚しとった。反省しとった。せやけど・・・そんな俺の行く末をお先真っ暗にしたんが・・・下らん教育方針やった。教師は、「教える存在」やから、何をしてもえぇやと・・・?そうやって、俺らを見下してきたんは紛れもない教師や。せやから、復讐したかった・・・気が済むまで・・・関係のないお前らも・・・ボコボコにしたかったんや」
柳宿の頬を、涙が伝う
「そのせいか・・・誰も、俺の目を見んかった。俺の苦しみなんぞ・・・誰も分かってくれなかった。時々・・・、それが寂しくて悔しくて・・・もっともっと・・・犯罪犯してやろ思うてた。せやけどな・・・せやけど、こいつは・・・・・・・こいつだけは・・・俺の目を見て・・・くれてたんや」
「柳宿・・・」
誰もが、きっとその想いを分かっていた
美朱も、鬼宿も、井宿も、張宿も・・・軫宿も
誰も、何も言えなかった
「せやから、俺は・・・もう一度・・・もう一度、やり直せるなら・・・・・・・・・・・・・・こいつと・・・・・・・こいつと一緒に・・・いたい」
その言葉に、柳宿はハッとした
それは、暴走族の団長の決死の告白
「ひゅ~~~~~v団長~vかっけえぞぉ~~~~~~~~~vvv」
族の何人かが、冷やかしを浴びせた
翼宿は、そこで柳宿に向き合った
そして、乱暴に柳宿をその胸に抱き寄せた
「たすきっ・・・」

「・・・・・・・・・・・もう・・・遅いで・・・・・・・・・。お前は・・・・・・・・・・・・・・・・俺が、攫う・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ば・・・かっ・・・」

パチパチパチパチ
一番最初に、手を叩いたのは軫宿だった
そして
生徒全員が拍手をし、歓声がその場に沸き起こった
星宿も・・・そして、涙を流している鳳綺も、その光景を温かく見守っていた

暴走族「TSUBASA」の最後の大仕事
それは・・・この学校に、教育に、光を与えた
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