ホーリー母校に帰る

カラーンコローンカラーンコローン
桜舞う4月
今年も各地の高校でこの日、入学式がある
この学園にも
『第45回朱雀学園入学式』
看板が校門に立てかけられていた

ザクッ
ビシッとスーツを着こなし、ピカピカの靴で地面を踏みしめた一人の男性
「懐かしいな・・・」
そう呟き、新入生よりも早く校門をくぐる

コンコン
「失礼します」
その端麗な容姿に黒い長髪を靡かせた男性は、校長室に入る
「星宿!!」
中にいた初老の女性が立ち上がった
「校長。お久しぶりです」
星宿と呼ばれた男性は、深々とお辞儀をした
「まぁまぁ、すっかり大きくなって・・・さぁ、座って!!」
軽く会釈をし、ソファに腰かける
「ああ・・・教師らしい格好をしちゃって・・・」
「いえ、まだまだ新米ですよ」
「何を言っているの?これから貴方は、この朱雀学園卒業生にして初の教師になるんだから。しっかりして貰わなければ、困りますよ」
「はい・・・皆さん、お変わりなく・・・?」
「貴方の代の教師は全て転任してしまって残っているのは私だけだけれど・・・今も優秀な教師がこの学園を支えてくださっているので無事安定しているわ」
「それはよかった」
「そうそう。早速だけど、貴方が受け持つクラスは、1年B組。これがクラス名簿とプリントだから。しっかり頼みますよ」
「はい」
「おはようございまーす」
隣の職員室に人が集まってきたようだ
「さ、早速挨拶しなければ!!」
校長がそそくさとドアを開ける
「皆さん。おはようございます。今日から新しく本校に転任してきたこの学園の卒業生である星宿先生です。皆さん、どうぞ仲良くしてあげてくださいね」
「星宿です。何卒ご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いします」
その職員室には個性的な教師がたくさんいた
まずは学年主任の机から、赤髪のこれまた端麗な容姿の教師が立ち上がった
「学年主任の朱雀です。良いクラスを共に作っていきましょう」
握手を求められた
「よろしくお願いします」
「それでは・・・星宿先生は鳳綺先生の机の横に席を・・・」
「はい」
近寄ると、鳳綺と呼ばれた綺麗な顔立ちの女性はお辞儀をした
「よろしくお願いします。随分お若いのね・・・」
「いえ。よく言われますが・・・」
「星宿先生。ラッキーですね。こんなお綺麗なお方の隣だなんて」
「房宿先生。辞めてください」
星宿の向かい側に座っている房宿と呼ばれた教師が冷やかす
「あら、失礼。私、家庭科担当のD組担任の房宿です。以後よろしく」
「よろしくお願いします」
「私、国語科担当のA組担任の鳳綺です。分からない事があったら、何でも聞いてくださいね」
「お願いします」
「ああ、こちらは化学担当のC組担任の氏宿先生。・・・無口で変わった方だけど気にしないでね」
房宿は、一応隣に座っている隈取の派手な教師の紹介を付け加えた
氏宿と呼ばれた教師は、鏡を見て何やらぶつぶつ独り言を言っていて、特に挨拶はしなかった。

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入学式は無事終了
ここからが担任の出番だ
「緊張してらっしゃる?」
「いいえ・・・まぁ」
クラスに向かう途中、鳳綺が星宿に話し掛ける
「初めての教員なんだもの。それは緊張するわ。笑顔で話し掛ければ、生徒も心を開いてくれるものですわ」
「はい」
「じゃあ、私はここで」
鳳綺は、自分のクラスの前で立ち止まった
「頑張って、星宿先生」
耳元でそう囁かれ、星宿は背筋をしゃんと伸ばした

五年前に、この学校を卒業した
恩師である校長の影響を受け、自分も教師になりたいと思うようになった
大学で必死に勉強し、やっとの思いで勝ち取った赴任一年目
勿論、期待よりも不安の方が大きかった

そんな気持ちで・・・、ドアを開ける
ざわめきが一気に消えた
緊張は、MAX
そっと、教壇に立つ
「・・・皆さん、おはようございます。今日から1年B組を受け持つ事になりました。星宿です。教師一年目で、このクラスが初担任になりますが、精一杯みんなを教えていくつもりです。よろしくお願いします」
不器用なりに、自己紹介をする
女子の中では、顔を赤らめながらひそひそ話をする姿も
その中で、髪の毛をお団子に結わえた少女が、元気よく立ち上がった
「星宿先生!!よろしくお願いしますv私たちも、こんなに素敵な先生が担任になってくれるなんて、嬉しいです!!」
その明るさに、星宿はホッとした
「そうか・・・。みんな、よろしくな!!」
やっと、星宿にも自然な笑顔が出て来た

HRも無事に済ませ、一日目は何とか終了した
「どうでした?初担任」
隣で、鳳綺が星宿に声をかける
「いやぁ・・・。中々、緊張しますね。生徒に励まされてしまいました」
「最初は、そうですよねぇ。私も、まだ教師3年目なんです。お互い、まだまだ分からないトコだらけですね」
「そう・・・ですね」
「・・・・・・・ところで、星宿先生。ここ数年の朱雀学園の噂・・・、ご存知です?」
「は・・・?」
「先生、聞いたところによると、ここの卒業生なんですよね?まぁ・・・、遂最近の話なんですが」
「何か・・・あったんですか?」
「それが・・・」
「星宿先生・・・」
誰か別の声に呼ばれ、振り向いた
見ると、自分のクラスの生徒の鬼宿だった
「おぉ。鬼宿!!どうした?」
「実は・・・、ちょっと相談があるんです」
星宿は、首を傾げた

職員室では話しにくいとの事で、場所を中央広場に変えた
「どうしたんだい?鬼宿」
「あの・・・先生。凄く若くて、びっくりしたんですけど・・・、こういう話は、先生だけにしか出来ないっていうか・・・」
「???どうした?何でも言ってごらん」

「あの・・・好きな奴に告白したいんですけど・・・!!どうすればいいですかね!?」

「えぇ?」
初めての教師
初めての恋の相談
まだまだ、先は前途多難である
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