愛し姫君へ
「何ですって!?姫が・・・ピンピンしてるって・・・」
紅蘭が、部下の報告を受けて腰を抜かした
「これで・・・姫の座は私のものになると思ってたのに・・・」
悔しそうに唇を噛む紅蘭
「・・・紅蘭様。良い考えがございます」
部下は、一人の可愛らしい少女を中に迎え入れた
「誰だ?こやつは」
「初めまして、紅蘭様。私は杏と申します」
「こやつの何処がよい考えなのだ?」
「実は私、翼宿に以前ボディーガードして貰っていた者です」
そこで、紅蘭の目が光った
「・・・お前」
「私は、翼宿が好きです。あの娘より過ごした期間が長い私ならば、翼宿を落とすのは容易い事。そうすれば、爺を亡くした姫は、姫の座を放棄せざるを得なくなる。今や、国の為ではなく、彼女は翼宿の為に姫をやってるようなものですからね」
杏は不敵な笑みを浮かべた
「良い案だ。是非、お前を使わせてもらう」
紅蘭も勝ち誇った笑みを浮かべた
「翼宿~」
「何やねん?」
「この箪笥の上の包みを取ってくれぬか?」
襖を開けると、姫が箪笥の上に手を伸ばしている
背の高い翼宿は、それをひょいと手に取る
「何やねん、これ?」
「これは、爺がわらわに残してくれた書物の数々なのじゃ」
「・・・ふ~ん」
「これを読んで、もっと国の事を知れるようにと・・・爺が生前残しておいてくれた・・・爺を失った今、わらわが読むべきものなのじゃ」
「・・・偉いな」
翼宿は、姫の頭を撫でた
「頑張れや。国の為にもな」
「勿論じゃ!!・・・翼宿もついてきてくれるじゃろ・・・?」
また甘えてくる姫に翼宿はため息をつく
「・・・ま、頭に関しても俺のがえぇやろし、着いてかなきゃ、お前何処で間違ったとこ行くか分からんしな」
「貴様、またそういう減らず口を・・・」
姫は翼宿の頭をポカンと叩いた
コンコン
その時、ノックの音がした
「翼宿。いるか?」
皇帝の声だった
「お前に・・・お客さんだぞ」
「え?」
「客殿の間に待たせてある。早く来て欲しいとの事だ」
皇帝は、少し打ち明けづらそうだった
「・・・すまん。ちょっと行ってくるわ」
姫はますます首を傾げる
(何で、ここに翼宿のお客さんが・・・?)
「失礼します」
翼宿が客殿の間を開けるとそこには
「・・・翼宿!!!!」
涙を瞳にいっぱい溜めた少女がこちらへ駆けてきた
「・・・お前・・・!!」
そのまま、翼宿に抱きついた
「やっと見つけた・・・どうして、私の事置いていったの・・・翼宿・・・」
姫は、気になって翼宿の後をつけていた
「あああ!!!???」
姫は絶叫をあげた
途端に口を誰かに塞がれた
「姫、静かにしなさい」
「!!!・・・皇帝様」
「・・・あれは、翼宿が以前ボディーガードをしていた西の国の姫だ」
「えっ・・・翼宿、前にもボディーガードしていたのですか!?」
「やはり・・・あのような強さから、各国から一番指名は来ていたらしい」
「そんな・・・」
初めて知る事実に姫は絶句した
「離れろ、杏。今、お前の相手しとる暇はあらへんねん」
「どうして!?もとはといえば、私のボディーガードだったじゃないの!!」
「お前には、婚約者が出来たやろ?せやから、俺はお前のボディーガード外されたんや」
「あんな男・・・!!!私の事をコケのように扱っただけよ・・・あなたの方が、私をずっと護ってくれたわ!!」
翼宿は、嫌がる杏の肩を無理矢理引き離した
「せやけど・・・お前が今更、俺のトコに戻ってこれる訳やないやろ」
「あんな姫・・・貴方の単なる仕事の消費相手じゃないの!?」
「お前、そんな言い方ないやろ」
「私は・・・あなたを愛していたのよ・・・!?」
その言葉は、姫の耳にもはっきり届いた
「あなたは・・・私の気持ちにも気づいていたでしょう?なのに・・・どうして、あなたは私の事を置いて、こんな南の国にまで来てしまったのよ!?」
翼宿は黙ったままだ
その時、大臣がやってきた
「何をしておられるのですか!?ここでそのような行いをしてはなりませぬ!!」
大臣は何を勘違いしたのか、二人を引き離した
「見ていられぬ。私が彼女の相手をしてくるよ」
皇帝が駆け出した
「・・・翼宿」
姫の胸は張り裂けそうだった
「翼宿・・・」
襖越しに翼宿に呼びかける
「何や?」
「・・・さっきの・・・女の子は・・・」
「・・・・・・・何や、見とったんか?」
「すまぬ・・・」
「まぁ、えぇけどな。もう終わった事やし」
「・・・前もボディーガードしとったんじゃな」
「あぁ」
さっきの会話を聞いて、分かってしまった
彼女も翼宿の事が好きだったのだ
翼宿は彼女の気持ちを知っていながら、ボディーガードの役を下りたのだ
そうなると、自分にも望みは・・・?
「杏姫。確かに翼宿は男の私から見ても男らしい軍人だ。しかし、ここまで追いかけて貰っても、正直困るのだ。どうか、自分の国に帰ってくれないか?」
「嫌です・・・皇帝様まで、私の気持ちを踏みにじるのですか・・・?
私は・・・あの姫よりも翼宿と過ごした時間は遥かに長いのです」
「そうかもしれぬが・・・そなたと翼宿は過去の話。翼宿は、今の仕事に国から命じられて従事しておるのだ。そなたにはもう止める権利はない筈であるぞ」
「・・・そんな事をおっしゃいますが、皇帝様、私と翼宿の間に何があったのかご存知ではないのですか?」
「え・・・?」
「私と翼宿は、その昔契りをかわした仲でございます」
皇帝は、絶句した
「翼宿。あの姫をそのまま帰しても良いのか・・・?」
「何やねん。いきなり」
なぜだか分からないけれど、彼女になぜか同じ気持ちを感じてしまった姫はそう聞かずにはいられなかった
「・・・今は、お前のボディーガードやん」
「それは・・・そうじゃ」
その時、翼宿が襖をガラリと開けた
その勢いで、姫は隣の部屋に転びこんだ
「いたっ・・・何するのじゃ!!!???」
顔をあげた姫の頬を翼宿は、両手で引っ張る
「まさか、嫉妬か?」
「・・・っ・・・」
図星
「・・・そう・・・じゃ・・・」
途切れ途切れに呟く
翼宿は微笑むと、姫の頭をポンポンと撫でた
「安心せぇ。何もあらん」
そう
今は、自分のボディーガードなのだ
なのに、何だろう
この胸騒ぎ
夜
姫は中々寝付けなかった
この胸騒ぎが影響しているのだろうか?
不安になって、隣の翼宿に声をかけようとしたその時だった
「・・・翼宿」
名前を呼んだのは、昼間の杏という女
姫は、咄嗟に息を潜めた
翼宿は襖を開けていないようだ
「・・・何でおんねん。帰れ」
姫を起こさないようにと、翼宿は声を殺してそう言っていた
「あなた・・・もう忘れたの・・・?あの夜の事、蔑ろにするつもり・・・?」
杏は、わざと姫に聞こえるように大きな声でそう叫んだ
「静かにしろ」
(あの夜・・・?何の事じゃ・・・?)
「柳宿姫もこれを知ったら、傷つくでしょうねぇ!!!私とあなたがその昔、体の関係を持っていたなんて事は!!!」
(えっ・・・何・・・今、何て・・・)
襖の向こうで翼宿は黙っている
(どういう事じゃ・・・!?翼宿があの女と・・・!?嘘じゃ・・・嘘じゃと言ってくれ・・・翼宿・・・)
「その事は・・・もう忘れた・・・」
ガラッ
「!!!!」
「翼宿・・・」
姫の頬は、涙で濡れていた
翼宿は唇をかみ締めている
「嘘じゃろ・・・なぁ!!!???嘘じゃろ・・・?」
「本当よ!!彼は、私を抱いた事があるのよ」
杏は、勝ち誇ったようにそう答えた
「最・・・低・・・」
姫は大粒の涙をボロボロ零した
そのまま全速力で駆け出した
後ろで止める翼宿の声を無視して
(最低じゃ・・・最低のボディーガードじゃ・・・)
紅蘭が、部下の報告を受けて腰を抜かした
「これで・・・姫の座は私のものになると思ってたのに・・・」
悔しそうに唇を噛む紅蘭
「・・・紅蘭様。良い考えがございます」
部下は、一人の可愛らしい少女を中に迎え入れた
「誰だ?こやつは」
「初めまして、紅蘭様。私は杏と申します」
「こやつの何処がよい考えなのだ?」
「実は私、翼宿に以前ボディーガードして貰っていた者です」
そこで、紅蘭の目が光った
「・・・お前」
「私は、翼宿が好きです。あの娘より過ごした期間が長い私ならば、翼宿を落とすのは容易い事。そうすれば、爺を亡くした姫は、姫の座を放棄せざるを得なくなる。今や、国の為ではなく、彼女は翼宿の為に姫をやってるようなものですからね」
杏は不敵な笑みを浮かべた
「良い案だ。是非、お前を使わせてもらう」
紅蘭も勝ち誇った笑みを浮かべた
「翼宿~」
「何やねん?」
「この箪笥の上の包みを取ってくれぬか?」
襖を開けると、姫が箪笥の上に手を伸ばしている
背の高い翼宿は、それをひょいと手に取る
「何やねん、これ?」
「これは、爺がわらわに残してくれた書物の数々なのじゃ」
「・・・ふ~ん」
「これを読んで、もっと国の事を知れるようにと・・・爺が生前残しておいてくれた・・・爺を失った今、わらわが読むべきものなのじゃ」
「・・・偉いな」
翼宿は、姫の頭を撫でた
「頑張れや。国の為にもな」
「勿論じゃ!!・・・翼宿もついてきてくれるじゃろ・・・?」
また甘えてくる姫に翼宿はため息をつく
「・・・ま、頭に関しても俺のがえぇやろし、着いてかなきゃ、お前何処で間違ったとこ行くか分からんしな」
「貴様、またそういう減らず口を・・・」
姫は翼宿の頭をポカンと叩いた
コンコン
その時、ノックの音がした
「翼宿。いるか?」
皇帝の声だった
「お前に・・・お客さんだぞ」
「え?」
「客殿の間に待たせてある。早く来て欲しいとの事だ」
皇帝は、少し打ち明けづらそうだった
「・・・すまん。ちょっと行ってくるわ」
姫はますます首を傾げる
(何で、ここに翼宿のお客さんが・・・?)
「失礼します」
翼宿が客殿の間を開けるとそこには
「・・・翼宿!!!!」
涙を瞳にいっぱい溜めた少女がこちらへ駆けてきた
「・・・お前・・・!!」
そのまま、翼宿に抱きついた
「やっと見つけた・・・どうして、私の事置いていったの・・・翼宿・・・」
姫は、気になって翼宿の後をつけていた
「あああ!!!???」
姫は絶叫をあげた
途端に口を誰かに塞がれた
「姫、静かにしなさい」
「!!!・・・皇帝様」
「・・・あれは、翼宿が以前ボディーガードをしていた西の国の姫だ」
「えっ・・・翼宿、前にもボディーガードしていたのですか!?」
「やはり・・・あのような強さから、各国から一番指名は来ていたらしい」
「そんな・・・」
初めて知る事実に姫は絶句した
「離れろ、杏。今、お前の相手しとる暇はあらへんねん」
「どうして!?もとはといえば、私のボディーガードだったじゃないの!!」
「お前には、婚約者が出来たやろ?せやから、俺はお前のボディーガード外されたんや」
「あんな男・・・!!!私の事をコケのように扱っただけよ・・・あなたの方が、私をずっと護ってくれたわ!!」
翼宿は、嫌がる杏の肩を無理矢理引き離した
「せやけど・・・お前が今更、俺のトコに戻ってこれる訳やないやろ」
「あんな姫・・・貴方の単なる仕事の消費相手じゃないの!?」
「お前、そんな言い方ないやろ」
「私は・・・あなたを愛していたのよ・・・!?」
その言葉は、姫の耳にもはっきり届いた
「あなたは・・・私の気持ちにも気づいていたでしょう?なのに・・・どうして、あなたは私の事を置いて、こんな南の国にまで来てしまったのよ!?」
翼宿は黙ったままだ
その時、大臣がやってきた
「何をしておられるのですか!?ここでそのような行いをしてはなりませぬ!!」
大臣は何を勘違いしたのか、二人を引き離した
「見ていられぬ。私が彼女の相手をしてくるよ」
皇帝が駆け出した
「・・・翼宿」
姫の胸は張り裂けそうだった
「翼宿・・・」
襖越しに翼宿に呼びかける
「何や?」
「・・・さっきの・・・女の子は・・・」
「・・・・・・・何や、見とったんか?」
「すまぬ・・・」
「まぁ、えぇけどな。もう終わった事やし」
「・・・前もボディーガードしとったんじゃな」
「あぁ」
さっきの会話を聞いて、分かってしまった
彼女も翼宿の事が好きだったのだ
翼宿は彼女の気持ちを知っていながら、ボディーガードの役を下りたのだ
そうなると、自分にも望みは・・・?
「杏姫。確かに翼宿は男の私から見ても男らしい軍人だ。しかし、ここまで追いかけて貰っても、正直困るのだ。どうか、自分の国に帰ってくれないか?」
「嫌です・・・皇帝様まで、私の気持ちを踏みにじるのですか・・・?
私は・・・あの姫よりも翼宿と過ごした時間は遥かに長いのです」
「そうかもしれぬが・・・そなたと翼宿は過去の話。翼宿は、今の仕事に国から命じられて従事しておるのだ。そなたにはもう止める権利はない筈であるぞ」
「・・・そんな事をおっしゃいますが、皇帝様、私と翼宿の間に何があったのかご存知ではないのですか?」
「え・・・?」
「私と翼宿は、その昔契りをかわした仲でございます」
皇帝は、絶句した
「翼宿。あの姫をそのまま帰しても良いのか・・・?」
「何やねん。いきなり」
なぜだか分からないけれど、彼女になぜか同じ気持ちを感じてしまった姫はそう聞かずにはいられなかった
「・・・今は、お前のボディーガードやん」
「それは・・・そうじゃ」
その時、翼宿が襖をガラリと開けた
その勢いで、姫は隣の部屋に転びこんだ
「いたっ・・・何するのじゃ!!!???」
顔をあげた姫の頬を翼宿は、両手で引っ張る
「まさか、嫉妬か?」
「・・・っ・・・」
図星
「・・・そう・・・じゃ・・・」
途切れ途切れに呟く
翼宿は微笑むと、姫の頭をポンポンと撫でた
「安心せぇ。何もあらん」
そう
今は、自分のボディーガードなのだ
なのに、何だろう
この胸騒ぎ
夜
姫は中々寝付けなかった
この胸騒ぎが影響しているのだろうか?
不安になって、隣の翼宿に声をかけようとしたその時だった
「・・・翼宿」
名前を呼んだのは、昼間の杏という女
姫は、咄嗟に息を潜めた
翼宿は襖を開けていないようだ
「・・・何でおんねん。帰れ」
姫を起こさないようにと、翼宿は声を殺してそう言っていた
「あなた・・・もう忘れたの・・・?あの夜の事、蔑ろにするつもり・・・?」
杏は、わざと姫に聞こえるように大きな声でそう叫んだ
「静かにしろ」
(あの夜・・・?何の事じゃ・・・?)
「柳宿姫もこれを知ったら、傷つくでしょうねぇ!!!私とあなたがその昔、体の関係を持っていたなんて事は!!!」
(えっ・・・何・・・今、何て・・・)
襖の向こうで翼宿は黙っている
(どういう事じゃ・・・!?翼宿があの女と・・・!?嘘じゃ・・・嘘じゃと言ってくれ・・・翼宿・・・)
「その事は・・・もう忘れた・・・」
ガラッ
「!!!!」
「翼宿・・・」
姫の頬は、涙で濡れていた
翼宿は唇をかみ締めている
「嘘じゃろ・・・なぁ!!!???嘘じゃろ・・・?」
「本当よ!!彼は、私を抱いた事があるのよ」
杏は、勝ち誇ったようにそう答えた
「最・・・低・・・」
姫は大粒の涙をボロボロ零した
そのまま全速力で駆け出した
後ろで止める翼宿の声を無視して
(最低じゃ・・・最低のボディーガードじゃ・・・)