愛し姫君へ
ゴーンゴーンゴーン
朱雀宮殿の鐘が街中に響き渡った
この鐘は何か宮殿で決まり事があった時に鳴らす鐘だ
町民は何事かと心配そうに宮殿を見上げた
「また何か嫌な決まりごとでもあったのかねぇ?」
「町民からこれ以上税を巻き上げられたらわしは運動を起こすよ」
「しかしあの皇帝さんの事だ。果たして我々に不利な事を決めるだろうか・・・?」
町民には想像もつかない事が宮殿内では起こっていた
「本日の姫の誕生日に姫に護衛をつける事をここに決定する!!」
突然の皇帝の可決に会議室にいた者全員が大きくざわめいた
「もう皇族に届は出してある。今夜の姫の誕生パーティーで護衛を紹介する。以上!解散!」
皇帝が会議室を去った後、会議室は大きなざわめきに包まれた
「姫に護衛が?」
「皇帝もまた何で・・・」
「まぁ姫もあの歳だ。そろそろ護衛がついてもおかしくないのではないか?」
「それはそうだが・・・あの姫のか?」
皆が首を傾げた
ここ朱雀街には生来大切にされてきた姫君がいる
その名は柳宿
彼女は将来「朱雀街の天女」になると言われている
いつか戦争も何もない平和な国にしてくれる女性
そんな姫も今年で18歳になる
姫君を狙う悪の組織も動いているという噂もあり、皇帝が護衛をつける事にしたのだ
しかし、この姫君・・・
「姫や。ちょっといいかい?」
姫の部屋の前で祖父の白焔が姫に声をかけた
「なぁに?爺」
中からは可愛らしい姫の声
「今日は姫の18歳の誕生日だね。今日はお前に贈り物を用意したよ」
「なぁに?それは何なの?爺!」
姫は嬉しそうな声をあげた
「お前に護衛をつけるのだよ」
「・・・・・」
「お前ももう18じゃ。そろそろ女性として一人前になるので心配だと皇帝様がな」
「・・・・・」
「ん?どうした?姫。もっと喜ばぬか?」
「・・・嫌じゃあああああ!!!」
姫が勢いよく扉を開けたので爺は反動で床に頭をぶつけた
「なぜ18にもなって護衛をつけられなければならぬのだ!!爺!!一体何て事をしてくれたのだ!!」
「そうは言ってもなぁ・・・もう皇帝様が決められてしまった事なのじゃ・・・」
「要らぬ!!そんな贈り物、わらわは受け取らぬ!!」
姫はそう叫んで扉を閉めた
爺は深くため息をついた
そう、この姫君
誰も相手に出来ない程の大のわがまま娘なのだ・・・
その日の夜、姫の誕生パーティーが大広間でささやかに営まれた
会場には多くの宮殿関係者が顔を揃えていた
ここで皇帝のスピーチ
「本日、姫はパーティーを欠席しているが、皆の者盛大に祝って欲しい。
そして、今日の会議で決定した護衛をここで紹介する。・・・入れ」
皇帝の合図で会場に入ってきた護衛の姿に皆が息を呑んだ
その男性はどう見ても不良
派手な橙頭に釣り目の怖そうな形相の男だった
そんな男の姿を見た大臣達はこんな事を耳打ち合っていた
「皇帝・・・正気か?」
「あれでは逆に姫が襲われるではないか」
「あんな者が護衛など・・・」
「静かに。彼が今日から姫の護衛につく翼宿だ。さぁ、皆に挨拶を・・・」
「・・・姫は?」
「は?」
「姫は何処や聞いとるんや」
「だから今日は姫はパーティーを欠席して・・・」
「何処に自分の誕生パーティーを欠席する姫様がおるんや!!姫は何処や!?連れて行け!!」
その荒々しい態度に見ている者が悲鳴をあげた
「姫や~・・・顔だけでも出せばどうじゃ?」
「嫌じゃ!!顔を出したらその護衛に会わされるのじゃ!!わらわは絶対に会わぬ!!」
断固として部屋から出ない姫に部屋の前で説得をしていた婆もため息をついた
その時
「おい!!爺さん!!はよう姫のとこ連れてけや!!」
「へぇへぇ・・・」
廊下の向こうから爺を摘んでずかずかやってくる翼宿の姿が見えた
「爺さん?これは何の騒ぎだい?」
「それが・・・わしにもさっぱり・・・」
「ここが姫の部屋かいな?」
「あっ、ちょいと・・・」
ガラッ
その騒ぎに鏡台の前で拗ねていた姫が驚いて振り返った
「なっ・・・何なのじゃ、お前は!!勝手にわらわの部屋に入るなど・・・」
「何こんなとこで拗ねとるんや!さっさと誕生パーティーに出席せぇ!!」
「嫌じゃ!!わらわは出ぬ!!」
「どうせ護衛が気にいらんと、こんなとこで閉じこもっとったんやろ!!」
「何なのじゃ、その口の利き方は!!爺!!こやつは誰なのだ!?早くつまみ出せ!!」
「これが護衛じゃ・・・」
「は?」
「こやつがお前の護衛の翼宿じゃ・・・」
その言葉に姫は愚か、婆までもが口をあんぐりと開けた
「そういうこっちゃ!さ、はよう来い!!」
「爺!!何を冗談を言っておるのだ!こんな奴の何処が・・・」
「じゃかあし!!冗談な訳ないやろが!!せやなかったらこんなとこまで迎えに来んわ!!」
「貴様、さっきから何なのじゃその態度!!仮にも今から護る姫に向かって・・・」
「お前みたいなわがまま娘、姫とも何とも思っとらんわ!!」
「なっ・・・!」
姫は生まれてこの方ここまで人に邪道に扱われたことはない
いつもいつも周りから甘やかされて生きてきたので真っ向から歯向かう相手などいなかったのだ
だから姫がわがままに育ってしまったのだが・・・
「えぇい!!面倒や!!!」
「えっ・・・ひゃあああああ!!!」
突然翼宿が姫の体を軽々と持ち上げた
「こうした方が早い!!」
「何をするのじゃ!!下ろせ!!下ろすのじゃ~~~!!!」
翼宿の俊足ぶりに姫も爺婆も驚いていた
ずっと宮殿に閉じこもっていたのでろくに男性に触れていなかった姫は、翼宿の筋肉質の体に触れ、体が熱くなった
「嫌じゃああ!!!下ろすのじゃ~~~~!!!」
「阿呆!暴れんな・・・」
ズルッ
「「あ」」
そのまま二人は大広間の真ん前で茂みに転げ落ちた
「きゃあああ!!姫~~~!!」
大広間から心配そうに姫の部屋を見つめていた客は悲鳴をあげた
「いたた・・・」
姫が頭を摩って起き上がると、下敷きになっている翼宿に気づいた
姫が怪我をしないように翼宿が姫を庇ってくれたのだ
「そなた、大丈夫か!?」
「こんなん、平気や。俺を誰やと思っとるん・・・」
「しかし、そなた血が・・・」
「別に大した事・・・」
すると姫は布でで翼宿の頭の血を拭いた
「・・・・・」
「すまぬ・・・わらわが暴れたせいでこんな・・・」
「貴様!!姫に何て事を!!」
広間の大臣が何人かで翼宿に掴みかかろうとした
「待つのだ!!奴はわらわが怪我をしないように庇ってくれたのだ!誰か早くこいつを手当てしてやってくれ!」
その指示にその場の空気は一瞬にして変わった
それを見ていた爺婆が安堵の笑みを浮かべた
「姫は・・・本当に優しい子だね・・・」
「あぁ。だから国は姫を選んだのじゃ・・・」
姫の優しさを二人は知っていた
トントン
「姫や・・・落ち着いたかね?」
「・・・あぁ」
「姫や。彼を認めてやっても良いのではないかい?中々勇気のある青年ではないか」
「・・・しかし・・・わらわは護衛など・・・」
「わしは姫にお似合いだと思うがね、あの青年は・・・」
「何を言っておるのじゃ!!爺・・・」
しかし、その声に先ほどのわがままぷりは消えていた
姫は自分の手のひらを見つめた
大きくてたくましい体
あの大きな体に護って欲しい・・・
姫は襖を開いた
「翼宿は・・・何処じゃ?」
「いたたっ・・・もっと優しくせぇや!」
「動くんじゃない!少しずれていたら姫に大怪我をさせるところだったのだぞ!」
「へいへい。分かってますよ」
大広間で翼宿は手当てを受けていた
「・・・翼宿!」
姫は護衛の名を呼んだ
「あ?」
「傷は・・・大丈夫だったか?」
「こんなん平気や!俺を誰やと思っとるんじゃ!」
「何じゃと!?心配してやっとるのにその態度!!」
その態度にむっと来て、また喧嘩になりそうになった
「まぁまぁ、姫。どうだい?翼宿もこうやって姫を早速護ってくれた訳だしここはひとつ護衛を頼んでみてはどうだい?」
皇帝がその場を和ますように声をかけた
姫はほんの少し考えた
「わらわを・・・護ってくれるのか?」
その言葉に翼宿は頭を掻いた
「そのつもりで来たんやけどな」
そう一言呟いた
それが二人の始まりだった・・・
朱雀宮殿の鐘が街中に響き渡った
この鐘は何か宮殿で決まり事があった時に鳴らす鐘だ
町民は何事かと心配そうに宮殿を見上げた
「また何か嫌な決まりごとでもあったのかねぇ?」
「町民からこれ以上税を巻き上げられたらわしは運動を起こすよ」
「しかしあの皇帝さんの事だ。果たして我々に不利な事を決めるだろうか・・・?」
町民には想像もつかない事が宮殿内では起こっていた
「本日の姫の誕生日に姫に護衛をつける事をここに決定する!!」
突然の皇帝の可決に会議室にいた者全員が大きくざわめいた
「もう皇族に届は出してある。今夜の姫の誕生パーティーで護衛を紹介する。以上!解散!」
皇帝が会議室を去った後、会議室は大きなざわめきに包まれた
「姫に護衛が?」
「皇帝もまた何で・・・」
「まぁ姫もあの歳だ。そろそろ護衛がついてもおかしくないのではないか?」
「それはそうだが・・・あの姫のか?」
皆が首を傾げた
ここ朱雀街には生来大切にされてきた姫君がいる
その名は柳宿
彼女は将来「朱雀街の天女」になると言われている
いつか戦争も何もない平和な国にしてくれる女性
そんな姫も今年で18歳になる
姫君を狙う悪の組織も動いているという噂もあり、皇帝が護衛をつける事にしたのだ
しかし、この姫君・・・
「姫や。ちょっといいかい?」
姫の部屋の前で祖父の白焔が姫に声をかけた
「なぁに?爺」
中からは可愛らしい姫の声
「今日は姫の18歳の誕生日だね。今日はお前に贈り物を用意したよ」
「なぁに?それは何なの?爺!」
姫は嬉しそうな声をあげた
「お前に護衛をつけるのだよ」
「・・・・・」
「お前ももう18じゃ。そろそろ女性として一人前になるので心配だと皇帝様がな」
「・・・・・」
「ん?どうした?姫。もっと喜ばぬか?」
「・・・嫌じゃあああああ!!!」
姫が勢いよく扉を開けたので爺は反動で床に頭をぶつけた
「なぜ18にもなって護衛をつけられなければならぬのだ!!爺!!一体何て事をしてくれたのだ!!」
「そうは言ってもなぁ・・・もう皇帝様が決められてしまった事なのじゃ・・・」
「要らぬ!!そんな贈り物、わらわは受け取らぬ!!」
姫はそう叫んで扉を閉めた
爺は深くため息をついた
そう、この姫君
誰も相手に出来ない程の大のわがまま娘なのだ・・・
その日の夜、姫の誕生パーティーが大広間でささやかに営まれた
会場には多くの宮殿関係者が顔を揃えていた
ここで皇帝のスピーチ
「本日、姫はパーティーを欠席しているが、皆の者盛大に祝って欲しい。
そして、今日の会議で決定した護衛をここで紹介する。・・・入れ」
皇帝の合図で会場に入ってきた護衛の姿に皆が息を呑んだ
その男性はどう見ても不良
派手な橙頭に釣り目の怖そうな形相の男だった
そんな男の姿を見た大臣達はこんな事を耳打ち合っていた
「皇帝・・・正気か?」
「あれでは逆に姫が襲われるではないか」
「あんな者が護衛など・・・」
「静かに。彼が今日から姫の護衛につく翼宿だ。さぁ、皆に挨拶を・・・」
「・・・姫は?」
「は?」
「姫は何処や聞いとるんや」
「だから今日は姫はパーティーを欠席して・・・」
「何処に自分の誕生パーティーを欠席する姫様がおるんや!!姫は何処や!?連れて行け!!」
その荒々しい態度に見ている者が悲鳴をあげた
「姫や~・・・顔だけでも出せばどうじゃ?」
「嫌じゃ!!顔を出したらその護衛に会わされるのじゃ!!わらわは絶対に会わぬ!!」
断固として部屋から出ない姫に部屋の前で説得をしていた婆もため息をついた
その時
「おい!!爺さん!!はよう姫のとこ連れてけや!!」
「へぇへぇ・・・」
廊下の向こうから爺を摘んでずかずかやってくる翼宿の姿が見えた
「爺さん?これは何の騒ぎだい?」
「それが・・・わしにもさっぱり・・・」
「ここが姫の部屋かいな?」
「あっ、ちょいと・・・」
ガラッ
その騒ぎに鏡台の前で拗ねていた姫が驚いて振り返った
「なっ・・・何なのじゃ、お前は!!勝手にわらわの部屋に入るなど・・・」
「何こんなとこで拗ねとるんや!さっさと誕生パーティーに出席せぇ!!」
「嫌じゃ!!わらわは出ぬ!!」
「どうせ護衛が気にいらんと、こんなとこで閉じこもっとったんやろ!!」
「何なのじゃ、その口の利き方は!!爺!!こやつは誰なのだ!?早くつまみ出せ!!」
「これが護衛じゃ・・・」
「は?」
「こやつがお前の護衛の翼宿じゃ・・・」
その言葉に姫は愚か、婆までもが口をあんぐりと開けた
「そういうこっちゃ!さ、はよう来い!!」
「爺!!何を冗談を言っておるのだ!こんな奴の何処が・・・」
「じゃかあし!!冗談な訳ないやろが!!せやなかったらこんなとこまで迎えに来んわ!!」
「貴様、さっきから何なのじゃその態度!!仮にも今から護る姫に向かって・・・」
「お前みたいなわがまま娘、姫とも何とも思っとらんわ!!」
「なっ・・・!」
姫は生まれてこの方ここまで人に邪道に扱われたことはない
いつもいつも周りから甘やかされて生きてきたので真っ向から歯向かう相手などいなかったのだ
だから姫がわがままに育ってしまったのだが・・・
「えぇい!!面倒や!!!」
「えっ・・・ひゃあああああ!!!」
突然翼宿が姫の体を軽々と持ち上げた
「こうした方が早い!!」
「何をするのじゃ!!下ろせ!!下ろすのじゃ~~~!!!」
翼宿の俊足ぶりに姫も爺婆も驚いていた
ずっと宮殿に閉じこもっていたのでろくに男性に触れていなかった姫は、翼宿の筋肉質の体に触れ、体が熱くなった
「嫌じゃああ!!!下ろすのじゃ~~~~!!!」
「阿呆!暴れんな・・・」
ズルッ
「「あ」」
そのまま二人は大広間の真ん前で茂みに転げ落ちた
「きゃあああ!!姫~~~!!」
大広間から心配そうに姫の部屋を見つめていた客は悲鳴をあげた
「いたた・・・」
姫が頭を摩って起き上がると、下敷きになっている翼宿に気づいた
姫が怪我をしないように翼宿が姫を庇ってくれたのだ
「そなた、大丈夫か!?」
「こんなん、平気や。俺を誰やと思っとるん・・・」
「しかし、そなた血が・・・」
「別に大した事・・・」
すると姫は布でで翼宿の頭の血を拭いた
「・・・・・」
「すまぬ・・・わらわが暴れたせいでこんな・・・」
「貴様!!姫に何て事を!!」
広間の大臣が何人かで翼宿に掴みかかろうとした
「待つのだ!!奴はわらわが怪我をしないように庇ってくれたのだ!誰か早くこいつを手当てしてやってくれ!」
その指示にその場の空気は一瞬にして変わった
それを見ていた爺婆が安堵の笑みを浮かべた
「姫は・・・本当に優しい子だね・・・」
「あぁ。だから国は姫を選んだのじゃ・・・」
姫の優しさを二人は知っていた
トントン
「姫や・・・落ち着いたかね?」
「・・・あぁ」
「姫や。彼を認めてやっても良いのではないかい?中々勇気のある青年ではないか」
「・・・しかし・・・わらわは護衛など・・・」
「わしは姫にお似合いだと思うがね、あの青年は・・・」
「何を言っておるのじゃ!!爺・・・」
しかし、その声に先ほどのわがままぷりは消えていた
姫は自分の手のひらを見つめた
大きくてたくましい体
あの大きな体に護って欲しい・・・
姫は襖を開いた
「翼宿は・・・何処じゃ?」
「いたたっ・・・もっと優しくせぇや!」
「動くんじゃない!少しずれていたら姫に大怪我をさせるところだったのだぞ!」
「へいへい。分かってますよ」
大広間で翼宿は手当てを受けていた
「・・・翼宿!」
姫は護衛の名を呼んだ
「あ?」
「傷は・・・大丈夫だったか?」
「こんなん平気や!俺を誰やと思っとるんじゃ!」
「何じゃと!?心配してやっとるのにその態度!!」
その態度にむっと来て、また喧嘩になりそうになった
「まぁまぁ、姫。どうだい?翼宿もこうやって姫を早速護ってくれた訳だしここはひとつ護衛を頼んでみてはどうだい?」
皇帝がその場を和ますように声をかけた
姫はほんの少し考えた
「わらわを・・・護ってくれるのか?」
その言葉に翼宿は頭を掻いた
「そのつもりで来たんやけどな」
そう一言呟いた
それが二人の始まりだった・・・
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