Flying Stars

「いらっしゃませぇ!!」
「へへっv鬼宿v来ちゃったv」

「美朱~。お前、大学は?」
「説明会、さっき終わったよ!!クラス分けテストが散々だったけど・・・」
「ったく・・・。俺が教えてやんなきゃいけねえんじゃねぇかぁ?」
「ふふv嬉しい癖にv」
楽器店「AKAONI」
そこで働いているのは・・・、あの「空翔宿星」のドラム
専門学校を卒業して、すぐに就職したのだ
そして、そんな彼に声をかけるのは、交際暦3年の夕城美朱
今では立派な音大生の卵
「あれから・・・、3年かぁ・・・」
「あぁ」
「柳宿先輩・・・、元気?」
「ああ。先日、ホームスティでアメリカ行って、ピアノの勉強してきたみたいだけど・・・、あいつには、会わなかったってさ」
「そっかぁ~・・・。やっと、こっちでも翼宿先輩の活躍が流れてきたところなのにね!!」
「だけど・・・、柳宿は確実に夢を追ってる。今は、朱雀駅前のピアノ教室の講師やってるよ」
「嘘!?あたし、それ・・・、聞いてない!!」
「お前は、大学受験だっただろ?」
「そうだけど・・・、最近、またお兄ちゃんが悪酔いして帰ってくるんだよねぇ」
「ああ・・・。新人発掘が出来ないって、ぼやいてたもんなぁ」
「やっぱり・・・、「空翔宿星」以上は・・・、見つからないかな?」
その言葉に、鬼宿が笑う
「また・・・、いつか、組んでやるさ。「空翔宿星」以上の・・・、バンドをな」
そう
あの3人で
「その時は、あたしもギターに入れてくれるんだよねv」
「お前・・・、まだ、その事覚えてたのか・・・」
「約束だもんっ!!」


「柳宿先生~。ありがとうございました!!」
「気をつけて、帰ってね!!」
朱雀駅前・むらさきピアノ教室
その中から、可愛らしい子供達が出て行く
「柳宿さん!!ここのところ、働き詰めじゃない?平気?」
「平気ですよ~vピアノ、大好きなんで!!」
「どうですか?今度、一杯v」
「はは・・・。遠慮しときます。お疲れさまで~すvvv」
そう言うと、柳宿はいそいそと、教室を出て行った
「可愛いなぁ・・・。柳宿さんはv」
「俺、いつか絶対モノにしたい!!」
「だぁめよ!!何、言ってるの!!」
講師の男衆を、譜本で殴る室長

「あの子には・・・、ずっと待ってる人がいるのよ。3年間・・・、ずぅっとね」

「ただいまっ!!」
「ニャン♪」
「タマ~!!ごめんねぇ!!お散歩の時間だよねっ!!すぐ、行こう!!」
飼い猫タマの頭を撫でる柳宿
「柳宿。散歩くらい、僕が行ってあげるのに・・・」
「いいのっ!!あたし、この子が恋人なんだからっv」
そう言って、サンダルに履き替え、柳宿は家を出た
そんな可愛らしい妹を見て、声をかけた呂候はくすりと笑った

あれから、3年・・・。
翼宿とは、何度か国際電話やメールをかわしたけれど、まだ一度も会っていない
テレビで、先日久々にその姿を見た
端正に整ったその容姿に、相変わらずの橙頭
そして・・・、小指には今も変わらず、あの時の指輪
そして
「ニャ?」
「駄目だよぉ。タマ。これは、あたしの宝物なんだから!!傷つけちゃ!!」
タマが、いつもいじろうとする柳宿の小指にも、「それ」は、変わらず光っている
これが、二人の約束の証

『・・・・・・・・・・好きやで・・・。柳宿。待ってて欲しい。次、会うまで・・・、もっとえぇ女になって、俺に惚れ直させろ。楽しみにしてる』

ねぇ?今のあたし・・・、前より強くなったかな?
いい女になったかな?・・・あんたは、認めてくれる?

愛しい愛しい私の一番星

「ニャ?」
その時、タマが何かを感じ取った
「どうしたの?タマ」
「ニャン♪」
「あっ!こら!タマ!」
タマが、突然走り出した
それは、駅の方角だった

ガラガラガラガラ
ベースを背負って、ハンドバッグを引きずる一人の青年
「ニャン♪」

[ねぇ?流れ星ってさ、行き着く先は・・・、どうなるんだろうね?]

「タマッ・・・、もう・・・」
柳宿が辿り着いた時、タマは、誰かに抱かれていた

[みんな、バラバラになっちゃうのかな?]

「ったく・・・。そそっかしいトコは・・・、飼い主に似たんか?タマ」
懐かしい・・・あの関西弁

[いいえ。違います]

その右手の小指には、あのリング

[流れ星は、最後には集まって、大きな月になるんです]

「ただいま。柳宿」
微笑んだ、橙頭

君とこれからも、夢を紡いでいこう
そして、またいつか・・・
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