Flying Stars
飛行機に乗り込む
隣に、翼宿はいない
「大丈夫か?」
鬼宿に声をかけられる
「うん・・・」
「お前、窓際でいいよ。ターミナルから、翼宿が見てる」
その言葉に、窓際に駆け寄る
確かに、翼宿がこちらに手を振ってくれている
精一杯、手を振る
走馬灯のように蘇る記憶
初めて見たライヴで、存在感が大きかったベーシスト翼宿
雨の日に拾ってくれた翼宿
初ライヴ前に、手を握っていてくれた翼宿
バイクでいつもいつも送ってくれた翼宿
煙草ばっかり吸っていて、自分には無関心だった翼宿
芸能界入りに、最後まで反対した翼宿
鈴菜に告白されて、戸惑っていた翼宿
「あたしなんかでいい」って、言ってくれた翼宿
一緒に家事生活を共にした翼宿
自分が苛められているのを、助けてくれた翼宿
「頑張れ」と、譜面紙を渡してくれた翼宿
酔った自分を負ぶってくれた翼宿
天文に襲われた自分を、抱きしめてくれた翼宿
バレンタインチョコを褒めてくれた翼宿
ドームツアーが中止になっても、自分を海まで連れてってくれた翼宿
自分の告白を受け止めて、普通にしてくれていた翼宿
一緒に眠ってくれた翼宿
誘拐された自分を必死で探してくれた翼宿
自分の泣き言にも、黙って耳を貸してくれていた翼宿
昨夜・・・、一緒に過ごしてくれた翼宿
みんなみんな、あたしの大好きな翼宿だった・・・
翼宿・・・。あたし、頑張るからね・・・。また・・・、あんたにからかわれないように・・・、もっともっと・・・。
涙は止まることなく
飛行機は、静かに離陸した
彼の笑顔は・・・、最後まで輝いていた
「たす・・・きっ・・・」
暫く、柳宿は飛行機の中で声を殺して、泣いていた
スタッフも、美朱も夕城プロも・・・、誰も声をかけられずにいた
「柳宿」
静寂を破ったのは、鬼宿だった
「これ」
そう言って、差し出されたのは小さな封筒
「お前にだって。翼宿から」
その言葉に、それをそっと受け取る
「飛行機が離陸してから・・・、聞いて欲しいだって」
中からは、一枚のMD
柳宿は、黙ってそれをプレイヤーにセットした
その内容は、翼宿の弾き語りの曲だった
まだ発表していない。誰も、聞いた事のない
『雨の中で濡れていたお前は 行く当てもなく彷徨っていて
そんなお前を俺は連れ出して 知らない世界へ連れていった
これでよかったのだろうか これで救えただろうか
お前の笑顔を取り戻せただろうか・・・。
いつもいつも、強がりで 素直じゃないけれど
本当は誰よりも可愛く思えるあいつに
俺は、つまらん言葉ばかりかけていて
それでも、あいつは笑ってくれて 泣いてくれて 怒ってくれて
だから、安心したんだ
そんなお前をたくさん傷つけて 泣かせた事もあるけれど
それでも、俺を許してくれた 本当にありがとう
お前は、俺の風だった 勇気だった 心だった
お前がいなければ 俺は、今の俺ではない
本当に ありがとう・・・』
短いけれど、不器用な彼なりの「ありがとう」だった
涙は止まらない
そして
『柳宿』
翼宿からのメッセージだった
『これを聞く頃には、俺はもうお前の隣にはおらんけど・・・、泣いてんなよ?みんなに、心配かけたら、承知せんで。何の為に、俺がこれ作ったんか、ちゃんと分かれ。えぇな?
・・・ホンマに、俺を支えてくれておおきに。お前は・・・、ホンマ偉い。よう、頑張ってくれたと思う。お前の明るさや優しさ、いつもいつも・・・頼もしかったで。そんなお前に、俺はいつも勝手な事ばっかして、心配かけとった。ホンマにすまんな。許してくれ。それでも、俺の事を・・・、想っててくれて嬉しかった。ホンマは・・・、嬉しかったで』
そこまで聞いて、柳宿はハッとした
これは、自分の告白の事を言っているのだ
『お前を待たせてしまった事にも・・・、偉い申し訳なく思うとる。昨夜、俺を抱きしめてくれた時・・・、お前の想いが痛い程分かった』
まさか、このMDは、今朝作ったのだろうか
『・・・・・・・・・・・・・・俺な、正直愛が分からんのや。お前をホンマに愛してやれるか、不安やった。俺の中では、お前は「妹」やから。「女」に見れるんか、凄い悩んだ。中途半端で、返事したらあかん。そう思うとった。せやけどな、そんなんきっと・・・、関係ないんや。俺には、お前が必要やった。ただ、それだけでも・・・、十分・・・、俺はお前が・・・』
息が止まる
『好きやっちゅう・・・、証拠なんやろな』
キスも出来ない
体も重ねられない
そんな関係だったけど
自分と翼宿は、きっとずっと・・・
両思いだったのだろうか
『・・・・・・・・・・好きやで・・・。柳宿。待ってて欲しい。次、会うまで・・・、もっとえぇ女になって、俺に惚れ直させろ。楽しみにしてる』
「たすき・・・」
鬼宿も、夕城プロも、美朱も、奎宿も、昴宿も
みんな、その結果を理解したように、ホッとしていた
すると
カシャーーーーーーーーン
何かが落ちた
そこには
小さな小さなリング
自分が、翼宿にあげたリングに似ていた
しかし、違う
その内側には小さく
[Made in USA For NURIKO]
そう刻まれていた
そのリングは、自分の小指にぴったり納まった
「よかったな」
隣で、鬼宿が柳宿の頭を撫でる
「うん・・・」
もう泣かない
あんたの愛をいっぱい貰ったから
また、明日から頑張るよ
ほら・・・
だって、あんたは・・・、こんなにもあたしの傍に・・・。
隣に、翼宿はいない
「大丈夫か?」
鬼宿に声をかけられる
「うん・・・」
「お前、窓際でいいよ。ターミナルから、翼宿が見てる」
その言葉に、窓際に駆け寄る
確かに、翼宿がこちらに手を振ってくれている
精一杯、手を振る
走馬灯のように蘇る記憶
初めて見たライヴで、存在感が大きかったベーシスト翼宿
雨の日に拾ってくれた翼宿
初ライヴ前に、手を握っていてくれた翼宿
バイクでいつもいつも送ってくれた翼宿
煙草ばっかり吸っていて、自分には無関心だった翼宿
芸能界入りに、最後まで反対した翼宿
鈴菜に告白されて、戸惑っていた翼宿
「あたしなんかでいい」って、言ってくれた翼宿
一緒に家事生活を共にした翼宿
自分が苛められているのを、助けてくれた翼宿
「頑張れ」と、譜面紙を渡してくれた翼宿
酔った自分を負ぶってくれた翼宿
天文に襲われた自分を、抱きしめてくれた翼宿
バレンタインチョコを褒めてくれた翼宿
ドームツアーが中止になっても、自分を海まで連れてってくれた翼宿
自分の告白を受け止めて、普通にしてくれていた翼宿
一緒に眠ってくれた翼宿
誘拐された自分を必死で探してくれた翼宿
自分の泣き言にも、黙って耳を貸してくれていた翼宿
昨夜・・・、一緒に過ごしてくれた翼宿
みんなみんな、あたしの大好きな翼宿だった・・・
翼宿・・・。あたし、頑張るからね・・・。また・・・、あんたにからかわれないように・・・、もっともっと・・・。
涙は止まることなく
飛行機は、静かに離陸した
彼の笑顔は・・・、最後まで輝いていた
「たす・・・きっ・・・」
暫く、柳宿は飛行機の中で声を殺して、泣いていた
スタッフも、美朱も夕城プロも・・・、誰も声をかけられずにいた
「柳宿」
静寂を破ったのは、鬼宿だった
「これ」
そう言って、差し出されたのは小さな封筒
「お前にだって。翼宿から」
その言葉に、それをそっと受け取る
「飛行機が離陸してから・・・、聞いて欲しいだって」
中からは、一枚のMD
柳宿は、黙ってそれをプレイヤーにセットした
その内容は、翼宿の弾き語りの曲だった
まだ発表していない。誰も、聞いた事のない
『雨の中で濡れていたお前は 行く当てもなく彷徨っていて
そんなお前を俺は連れ出して 知らない世界へ連れていった
これでよかったのだろうか これで救えただろうか
お前の笑顔を取り戻せただろうか・・・。
いつもいつも、強がりで 素直じゃないけれど
本当は誰よりも可愛く思えるあいつに
俺は、つまらん言葉ばかりかけていて
それでも、あいつは笑ってくれて 泣いてくれて 怒ってくれて
だから、安心したんだ
そんなお前をたくさん傷つけて 泣かせた事もあるけれど
それでも、俺を許してくれた 本当にありがとう
お前は、俺の風だった 勇気だった 心だった
お前がいなければ 俺は、今の俺ではない
本当に ありがとう・・・』
短いけれど、不器用な彼なりの「ありがとう」だった
涙は止まらない
そして
『柳宿』
翼宿からのメッセージだった
『これを聞く頃には、俺はもうお前の隣にはおらんけど・・・、泣いてんなよ?みんなに、心配かけたら、承知せんで。何の為に、俺がこれ作ったんか、ちゃんと分かれ。えぇな?
・・・ホンマに、俺を支えてくれておおきに。お前は・・・、ホンマ偉い。よう、頑張ってくれたと思う。お前の明るさや優しさ、いつもいつも・・・頼もしかったで。そんなお前に、俺はいつも勝手な事ばっかして、心配かけとった。ホンマにすまんな。許してくれ。それでも、俺の事を・・・、想っててくれて嬉しかった。ホンマは・・・、嬉しかったで』
そこまで聞いて、柳宿はハッとした
これは、自分の告白の事を言っているのだ
『お前を待たせてしまった事にも・・・、偉い申し訳なく思うとる。昨夜、俺を抱きしめてくれた時・・・、お前の想いが痛い程分かった』
まさか、このMDは、今朝作ったのだろうか
『・・・・・・・・・・・・・・俺な、正直愛が分からんのや。お前をホンマに愛してやれるか、不安やった。俺の中では、お前は「妹」やから。「女」に見れるんか、凄い悩んだ。中途半端で、返事したらあかん。そう思うとった。せやけどな、そんなんきっと・・・、関係ないんや。俺には、お前が必要やった。ただ、それだけでも・・・、十分・・・、俺はお前が・・・』
息が止まる
『好きやっちゅう・・・、証拠なんやろな』
キスも出来ない
体も重ねられない
そんな関係だったけど
自分と翼宿は、きっとずっと・・・
両思いだったのだろうか
『・・・・・・・・・・好きやで・・・。柳宿。待ってて欲しい。次、会うまで・・・、もっとえぇ女になって、俺に惚れ直させろ。楽しみにしてる』
「たすき・・・」
鬼宿も、夕城プロも、美朱も、奎宿も、昴宿も
みんな、その結果を理解したように、ホッとしていた
すると
カシャーーーーーーーーン
何かが落ちた
そこには
小さな小さなリング
自分が、翼宿にあげたリングに似ていた
しかし、違う
その内側には小さく
[Made in USA For NURIKO]
そう刻まれていた
そのリングは、自分の小指にぴったり納まった
「よかったな」
隣で、鬼宿が柳宿の頭を撫でる
「うん・・・」
もう泣かない
あんたの愛をいっぱい貰ったから
また、明日から頑張るよ
ほら・・・
だって、あんたは・・・、こんなにもあたしの傍に・・・。