Flying Stars

『Arrive time for Japan is 14:00・・・』
空港内に外人のアナウンスが流れる
遂に、アメリカの出発だという事を実感させられる

「いっやぁ~v楽しかった!!なぁ!!みんな!!」
夕城プロの掛け声に、スタッフら一同は元気よく頷いた
「また、みんなで来ようかぁ!!俺らは、「空翔宿星」の家族みたいなもんだからなv」
「その時は、またお兄ちゃんの自腹でねv」
「げっ・・・」
「そうだなぁ!!俺らに何回も、酒代の漬けをさせてたお返しになv」
美朱と奎宿は、口々に夕城プロをからかう
「いい経験になったね。あんた達にとって」
「はい。最高でした。俺らにとって・・・、最高のラストでした」
さすがの鬼宿も、昴宿に声をかけられて、少し涙ぐんでいた

「忘れもん・・・、ないか?」
「ないよ!!大丈夫!!」
その集団の丁度後ろで、翼宿は柳宿の荷物を持って歩いていた
「ほら!!もう大丈夫だから!!一人でも持てるよ!!」
「あかんやろ。機内に入る時は、たまに持たせんねん」
責任感があって、頼り甲斐がある翼宿だった
そんな翼宿に、柳宿はくすっと笑う

「出発まで・・・、後20分か。みんな、思い残した事はないか?」
「アメリカには・・・な。後は・・・」
鬼宿の声で、皆が一斉に翼宿を振り返る
「なっ・・・、何やねん。みんなして。別に今日で会えなくなる訳やあらへんやろ」
翼宿は、へらへらと笑う
「本当に・・・、翼宿さん。ここに残るんですよね・・・」
スタッフの何人かが涙ぐむ
「こら!!翼宿が泣かないのに、お前らが泣いてどうする!!」
そんな夕城プロも、鼻水を無理にすすったようだった

「翼宿」
振り返ると、天文の姿
このツアーを乗り切った最高のギタリストだった
「お前が・・・、いなくなってる間に、柳宿を取ろうなんて馬鹿な事はしないからよ。柳宿の事・・・、忘れないでいてくれよな。俺も、お前の横でコーラスしながらギター弾けて、楽しかったよ。お前の片割れになれたみたいで・・・、楽しかった」
「おぉ。お前も、これからも、色んな事経験して、でっかいギタリストになるんやで」

続いて、奎宿と昴宿
「日本に帰って来たら、絶対顔出せよ。奎介と鬼宿の漬けで、サービスしてやるからな!!」
「ずっと待ってるよ。それまで、あそこの「空翔宿星」専用部屋はそのままにしておくよ」
「ホンマ・・・、色々世話になりました。夕城プロとたまの相手も・・・、末永くしてやってください」

美朱
「たすき・・・せんぱい・・・。あたし・・・、本当に・・・、これからもたすき先輩の・・・、歌声聞いてたかったです・・・。だから、早く日本に・・・、その歌声を届けてくださいね・・・。ずっと・・・ずっと、応援してます・・・。だから・・・」
涙で、言葉にならない
「泣くな。美朱。俺が、たまに怒られるやろ?」
そんな美朱の頭を撫でる
「たまと・・・、ずっと仲良くしぃや。柳宿とも・・・、えぇ関係でおってくれな?ずっと応援してくれとって、おおきにな」

そんな美朱の頭を撫でる兄・奎介

「翼宿。お前は、本当によくやってくれた。お前の力・・・、初めて見た時から、間違いじゃなかった。マイケルは、きっとお前を良い方向へ導いてくれる筈だ。何かあったら、いつでも連絡しろよ。こんな頼りないプロデューサーでも、愚痴でも相談でも何でも聞いてやるよ。楽しみにしている。お前の第二の活躍を。そして、日本にでっかくなって帰ってきてくれる事を・・・」
「ホンマ・・・、ありがとうございました。夕城プロの恩を無駄にせんように、精一杯こっちでも頑張りますわ。帰った時は、一杯付き合いますよ。それまでは、たまとこれからも飲んでやってください」

鬼宿
「翼宿・・・」
鬼宿は、親友と固い抱擁を交わした
「頑張れよ。お前は、俺の自慢の親友だ。こっちでも・・・、たくさん友達作って、また新しい音楽作ってけよ?帰って来たら、また一緒に演奏しような。それまで・・・、柳宿は俺が見ておくよ。お前には何も心配かけないから、安心してこっちでの活動に専念してくれよな」
「ああ。お前も、俺の自慢の親友や。お前の明るさで、「空翔宿星」は成り立ってたようなもんやった。ホンマに・・・、支えてくれておおきに。日本でも頑張れよ。お前には、プロの素質があるんやからな。諦めんで、何回でもドラム叩けよ。何かあったら、いつでも飛んでったるから」
二人は、笑い合う

こんな光景を見ていて、何が溢れるだろう
みんなの前だけど・・・
素直になってもいいのかな
泣いちゃってもいいのかな
昨日も泣いちゃったのにな

「柳宿」
「柳宿先輩」
陰で見ていた自分に声をかけられる
「柳宿。後、10分だ。急げよ」
その時
翼宿は、少し近づいた柳宿を自分から抱きしめた
「・・・・・・・・・!!!」
その場で見ていた者の間から、ため息が漏れる
「翼宿・・・。あたし・・・」
「お前は、日本でもっと強い女になるんや。どんな事があっても、負けるな。お前は、自慢の「空翔宿星」きっての女メンバーや。そのピアノで、これからも・・・、色んな奴の心をひきつけろ。優しい歌を作れ。また、俺が日本に帰ってからも歌えるような歌をな。楽しみにしとる」
涙は、何度流しても枯れる事はないのだろう
ただ、ただ、涙を流して頷く
「ありがとう・・・。あんたも・・・、最高のミュージシャンになって・・・、帰ってきて」
他の人よりも、短いメッセージだけど
昨日、あなたを抱きしめた事を、私は忘れないから
今回は、これだけでいいよね?
「後・・・」
「?」
「タマの面倒は・・・、お前に頼む」
「あ・・・」
忘れてた
翼宿のあの可愛い飼い猫
「親戚に預けとる。これ、住所や」
そう言われて、預けられた小さなメモ
「やっぱ、命名してくれた奴に世話になるんが、あいつには一番えぇやろ」
そう言って、笑う翼宿
「分かった・・・。大事にするね・・・?」
自分だけに託された使命

「時間だ」
夕城プロの言葉で、最後に・・・
「空翔宿星」の3人全員で共に固い抱擁を交し合った
「元気で」

手を振る彼の笑顔
太陽のように眩しい笑顔だった
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