Flying Stars

♪♪♪
鬼宿のメール着信
『今日、柳宿と一緒に先にホテル戻る』
「きたぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~v」
「何だっ!?どうした!?鬼宿!!」
「遂に来ましたよぉ!!夕城プロ!!」
「あっ!?これ、本当!?鬼宿v」
「こらっ!!美朱は、見ちゃいけない!!」
「ゆっくり、時を過ごしてくれるといいねぇ」
「母ちゃん。俺らも今日は熱くなろうかv」
「馬鹿言うんじゃないよ、あんたは!!」
食卓は、より熱い雰囲気になってしまった・・・

キキッ
車は、ホテル前に止まる
「翼宿さん。いいんですか?先に帰ってしまって。多分、今夜はみんなホテルに戻りませんよ?」
「いいんですわ。こいつも、酒苦手ですし、何か疲れたみたいなんで」
翼宿は、ドライバーにそう笑顔で告げて、その車を見送った

「本当に・・・、いいの?みんなと、もっと話したかったよね?」
「別に今生の別れやないしな。大体、あんな酒臭い場所にお前をいつまでも置いておけへんし」
そう言って苦笑いする翼宿
(今日は・・・、一緒にいてくれるんだよね・・・?)
夢みたいだけど・・・、今夜が最後
その現実は、変わらなかった

時計を見ると、午前0時
辺りは、ビルの光しか見えない
だけど、凄く綺麗な部屋からの景色
そこで、少しささやかだけれど、シャンパンで軽く乾杯
「今日、初めて飲むお酒だわぁ~」
「おい。あんま、ハメ外しすぎるなよ」
「何でよ?」
「お前は、飲むと色々面倒や」
「あ~・・・」
いつだかだったか、自分が天文に告白された時に悪酔いして、翼宿に迷惑をかけたっけ
その時、自分が何を言ったのかはさっぱり覚えてないのだが
「お酒飲むと、度胸がついちゃうのよ」
「そりゃ、そうやろ」
今だって、そんな度胸が欲しい
だけど、気まずくさせてはいけない
最後なんだから、いつも通りしなきゃ・・・
「日本には・・・、たまに帰るの?」
「ああ。こっちの報告しに事務所には、たまに顔出すと思う」
「そっか・・・」
「そん時は、またスタジオでセッションしようや」
そう言って、微笑む翼宿
これで、最後じゃない
そう言い聞かせてくれているように
「頑張って・・・。応援してる」
「おおきに」
「TVとかにもたくさん出て、こっちのあたしを寂しがらせないようにしてよね?」
「まだ、日本のTVに映るには結構時間かかるやろけどなぁ~」

「そうしてくれないと・・・困る」

元気に振る舞いたかったけれど
本音はそうだ
後、何時間したら、自分は日本に帰るのだ
翼宿は、そっと柳宿の頭を撫でた
「お前らと演奏した事、絶対忘れへんから」
涙で、肩が揺れる
そのまま、頷く
「お前と出会った事も・・・、忘れない」
その言葉に、顔をあげる
「気分転換したいって、能天気に俺らの世界に飛び込んできた・・・お前をな」

『だって・・・お前、ホンマ変わってるな。ライヴに癒し求める奴なんぞ、相当あらへんぞ?』
『そうなの・・・?気分転換にって思って』

3年前に交わした会話
「ほんで・・・、雨の中・・・、子犬みたいに泣いて、俺を待ってたお前も」

『何しとんねん。お前』
『たす・・・きっ・・・あたし・・・なんで・・・』

人生が変わったあの雨の日を

「あたし・・・、女優になりたいなんて・・・、嘘だよ・・・。今だって・・・、ピアノが大好き・・・だもん」
昨夜、言ってしまった「女優になろうかな」なんて発言
あんなのは、みんな嘘
それは、「空翔宿星」を捨てる事なのだから

「お前の人生は・・・、お前が決めるんや」

いつだって、あたしの人生にはあんたがいた
だから・・・、今度は一人で頑張らなければいけない
どう進もうと、どう転ぼうと・・・、あたしの人生
それで、どんなにボロボロになったって・・・、いつかは、受け止めてくれるかな?
何年何十年かかるか、分からないけれど

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・好き・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

『「空翔宿星」が成功したら・・・もう一度聞かせてくれや・・・』

今なのかな?今なの?翼宿
翼宿に抱きつく
「好き・・・だよ・・・。翼宿・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
もう、返事はどうでもよかった
ただ、何度も繰り返し呟く
「好き」だと・・・
翼宿は、何も言わなかった



朝が来た
いつの間にか、眠ってしまっていた
隣には
「はよ」
愛しい橙頭
ずっと肩にもたれて眠っていたようだ
「翼宿・・・。あたし・・・、寝ちゃった・・・?」
「そら・・・、昨日あれだけ暴れれば、疲れるやろ」
「そっか・・・」
「さて、そろそろ、あいつらもホテルに戻ってくる頃やろ。準備するで」
ああ
今日で、帰るんだっけ
いつもと変わらない朝
いつもと変わらない笑顔がそこにある
「翼宿」
そこで、翼宿は振り向く

「ありがとう」

久々に笑う
最後は・・・、きっと笑顔で。
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