Flying Stars

「よぉぉし!!!「空翔宿星」!!最高だぁぁぁ!!明日のツアーは、もうばっちりだなぁ!!!鬼宿ぇ!!今夜は、前祝い行くぞぉ!!」
「夕城プロ・・・。張り切りすぎですよぉ!!明日、バンバン付き合いますから!!」
ツアー前最後のリハが終了した
先日の柳宿誘拐騒動も無事に収まり、心配していた柳宿の調子にも支障はなかった

「遂に明日だね!!全米ツアー!!あぁ~・・・、緊張する!!」
柳宿が、ホテルまでの道程の車の中でそう叫んだ
「まぁまぁ!!みんなで楽しくやれれば問題なし!!明日は、思いっきり叫んじゃおうぜ!!な!!翼宿!!」
「・・・・・・・」
「翼宿?」
「ん?あぁ・・・。すまん」
「何だよぉ?何か、元気なくないか?」
「どうしたの?翼宿・・・」
「や。何でも」
翼宿は、無理に笑顔を作った

『是非、このままアメリカに残って、私の元で音楽活動をしてくれないだろうか?』

「ねぇ・・・翼宿?どうしたの?疲れた?」
部屋の中で、柳宿は、翼宿に声をかける
「いや。緊張してんねん。今・・・、偉い俺」
嘘をつく
柳宿は、それでも翼宿の顔をじっと見る
「っっっ何やねん!!お前はぁ~・・・、心配性やなぁ」
すると、柳宿は翼宿の腕をいきなり引っ張り、ベッドに強引に座らせ、布団をかけた
「柳宿?」
「疲れたら、早めに寝る!!10時間でも20時間でもたくさん寝て!!明日、3時間を超える大ライヴだよ?」
こんな風に、グループの健康を考え、秩序を保つのも柳宿の仕事だった
「へいへい」
翼宿は、そんな柳宿に少し心の緊張が取れ、大人しく横になる
「なぁ。柳宿」
「何?」
枕もとで、柳宿に問い掛ける
「お前の夢って・・・、何や?」
「あたしの夢?」
「うん」
「そうだなぁ・・・。「空翔宿星」でビッグになる事!!今は、それしか考えられないなぁ~」
「そか・・・」
「本当に今・・・、幸せだよ?こうやって、翼宿とたまと3人で、ここまで来られて。今なら何だって出来ちゃう気がする!!入りたてのあたしからは、想像出来なかったよねぇ~」
3年前の自分は、女優の道を周りに強要されっぱなしで、自分の事を自分で決められなかった
あの雨の日、翼宿に声をかけられるまでは
「本当、感謝してる・・・。あんたにも・・・、会えたしね?」
「阿呆」
照れ笑いなのか、翼宿は顔を背ける
「夢・・・か」
「何?」
「いや」
言わなければいけない
彼らに、今日

『今夜20時に、ホテルロビーに来てくれ』
鬼宿に届いた翼宿からの一通のメール
隣の部屋にいた鬼宿にだ
「何だぁ?改まって」

夕食は、前祝という事で、スタッフの手で盛大に行われた
夕城プロは酒をがっつり飲みまくり、大はしゃぎ
鬼宿は、この後の翼宿の大事な話の為に、酒は控えていた
どうせ、後で部屋で、夕城プロに浴びるほど飲まされるのだ
翼宿は、横でいつも通り変わらぬ笑顔を向けていた

「翼宿」
20時
鬼宿が、ロビーに現れた
一足早く来た翼宿は、煙草を吸っていた
「悪いな」
「どうしたんだよ?別にここに呼びださなくても、部屋に呼んでくれれば行くのに」
「いや。ここで聞いて欲しいんや」

「♪♪♪」
柳宿は、一足湯浴みを済ませて部屋に戻る途中だった
明日は、いよいよツアー本番という事もあり、夕食のテンションが抜け切らなかったのだ
翼宿とまた演奏が出来る。これからもずっとこれからも・・・

「俺、ここに残るわ」

そんな言葉が、ロビーから聞こえてきた
(翼宿?どうしたんだろう?たままで)
まだ、その言葉の意味が分からずに、気さくに声をかけようとした

「こっちの会社で・・・歌ってみようと思う」

足が止まる
聞いていた鬼宿も唖然としているようだ
「残るって・・・。お前・・・、一緒に帰らないのか?日本に・・・」
(何?何、言ってんの?だって・・・、このツアーが終わったら、あたし達また一緒に日本に帰って・・・)

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・明日で、抜けたい」

ガタガタッ
湯浴みの道具が落ちた
「・・・・!!!!」
「柳宿・・・!?」
二人とも、こちらに気づいた
「嘘・・・でしょ?」
翼宿に問い掛ける
「冗談・・・だよね?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「答えてよ・・・!!!ねぇ・・・!!!!!」
柳宿は、翼宿に掴みかかる
「柳宿!!落ち着け!!」
「馬鹿言わないでよ・・・!!だって・・・、だって・・・あたしの夢は・・・」
これからも3人で
翼宿と・・・一緒に。
その瞬間
意識が飛んだ
「柳宿!?」
そのまま、柳宿は倒れた

信じない・・・信じない。
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