Flying Stars
「翼宿!!鬼宿!!」
愛瞳が、涙声でホテルのロビーに駆け込んできた
「どうしよう・・・柳宿が!!」
「落ち着いて。何処でいなくなった?」
鬼宿が、冷静に尋ねた
「[LUNA]って喫茶店の前で・・・あたしが、夕城プロに電話しようと思って、その場離れた隙に・・・」
「駄目だ。出ねぇよ」
夕城プロは、さっきから柳宿の携帯に電話をしているようだが、彼女は出ない
「くそ・・・俺たちじゃ、右も左も分からねぇ・・・」
「[LUNA]て、喫茶店やな?愛瞳」
「え・・・えぇ」
「こっから、そう遠くない筈や。そこら探してみるしかあらへんやろ」
地図を確認して、翼宿は鬼宿に言う
「・・・危険や。こんなトコで、チンピラなんぞに捕まったりしたら」
その表情には確かに焦りが見える事が、鬼宿にはすぐ分かった
『翼宿が寝ないんだったら、あたしも寝ない!!』
いつもいつも甘えてくるあの妹の顔が咄嗟に浮かんだ
「チッ!!」
翼宿は、駆け出した
「翼宿!!・・・しょうがない。俺も探します!!夕城プロ!!何か分かったら、すぐに教えてください!!」
続いて、鬼宿も駆け出した
ピチャーン
冷たい雫が、柳宿の頬に落ちた
その冷たさに、柳宿は目を覚ました
(ここは・・・?)
見に覚えのない地下室
(どうしたんだっけ)
記憶にあるのは、後ろから誰かに口を塞がれて、それから覚えていない
(これって・・・、誘拐・・・?)
柳宿の頭が混乱した
(どうしよう・・・ここ、アメリカよね・・・?携帯も圏外だし・・・繋がらないよ。明後日は、ツアー本番なのに)
柳宿の中に、不安が生まれる
その時、何やら奥の部屋で話し声が聞こえる
外国人の英語
何を言っているのか、聞き取れない
『Your call is not accept...』
「くそっ!!」
相変わらず流れてくる外国人のアナウンスに、翼宿は乱暴に携帯の通話ボタンを切った
(こんなトコで、無駄に動き回っても無駄や・・・。何か手がかりがあれば・・・)
「すみません・・・」
突如、後ろから声をかけられた
振り返ると、丁度自分と同い年くらいの男女2人組だった
「あの・・・。もしかして、「空翔宿星」の翼宿さんじゃないですか?」
「せやけど・・・」
「やっぱり・・・。あの、私たち、そこの[LUNA]って喫茶店でお茶してたんですけど・・・、同じメンバーの柳宿さんが来てたんですよ。それで・・・何だか喫茶店の外で誰かに連れて行かれたのを見た気がして・・・」
「ホンマか!?どっち、行ったんや!?」
「確か・・・。あっちです。私たち、アメリカで暮らしてるんですけど・・・、最近日本人女性を誘拐するグループがいるってニュースが出回っていて・・・、もし本人だったら、心配で・・・」
「おおきに!!助かったわ!!」
情報を知っているのが、日本人でよかった
翼宿は、喫茶店[LUNA]の前を通り過ぎて、犯人グループが向かったであろう方向へと走った
「--------------------」
さすがに現場外国人の英語の速さに、柳宿の耳が追いつく筈もなく
一体、何が話し合われているのかまったく柳宿には理解が出来なかった
(あたし、殺されるのかしら・・・?嫌よぉ・・・。こんな見ず知らずの国で殺されるなんて・・・。大体、まだ・・・)
『その言葉、「空翔宿星」が成功したら、もう一回聞かせてくれや』
(まだ、返事貰ってないじゃない・・・)
柳宿の瞳の端に、涙が滲んだ
その時
バン
扉が開いて、外国人数名がこちらを見て笑っていた
翼宿が、辿り着いたそこは、バーやらクラブが並んだ小さな下町のような場所だった
夕闇に包まれて、そこだけが不気味に暗い
(この中の・・・何処に柳宿が・・・)
こうしている間にも、柳宿は・・・
「くそっ!!」
翼宿は、拳を壁にたたきつけた
「柳宿っ・・・」
何処にいるんだ
「Excuse me?」
顔をあげると外国人
「Your partner is...」
続きは聞かないで、翼宿はその外人の指差す地下道への階段を駆け下りた
「She is very beautiful. I want her.」
「Stop. I found her first. I should go.」
何となく
何となくだが、分かる
彼らが何を言っているのか
恐らく、自分はこれから・・・
壁に追い詰められた
3人の嫌らしい男達が、こちらに向かってくる
(ちょっとぉ・・・、冗談じゃないわよ・・・)
言葉も通じない
電話も通じない
なす術もない
一人に、手首を掴まれた
(翼宿ぃ・・・)
バン
音のした方向に、皆が振り返る
柳宿も、ゆっくりと目を開けた
「柳宿を・・・、離せ・・・」
汗びっしょりで、息切れをしている翼宿
「たすき・・・」
「Who is he?」
「I don't know. But, I hate man who prevent us.」
男の中の一人が、ナイフを持って翼宿を睨みつける
「Kill you!!!!」
「翼宿!!」
翼宿は、そのナイフをかわすと、相手の腹に一発お見舞いした
続けて、襲ってきた男の頬を殴り、そして、最後の男には蹴りをお見舞いした
あっという間に、男達は倒れた
「翼宿・・・翼宿!!」
「お前・・・、行けるか!?」
翼宿は、すぐさま柳宿に駆け寄った
「翼宿!!腕・・・血が!!」
かわせなかったようだ
翼宿の右腕が血で滲んでいる
「馬鹿!!無茶・・・しないでよぉ・・・」
翼宿は、柳宿を抱きしめた
「よかった・・・。無事で・・・」
「翼宿・・・」
知らない町を駆けずり回って、自分を探してくれたのか
翼宿の優しさに、また涙が溢れた
「警察には、連絡した。もうじき、来る筈や」
「ツアーは、予定通り・・・?」
「あぁ。決行だ」
「ツアー当日じゃなくて、本当よかったすねぇ」
ホテルのロビーで、スタッフがミーティングをしていた
無事に、翼宿と柳宿を保護し、ほっと一息ついたところだ
「どうやら、見知らぬ外人が翼宿に柳宿の場所を教えてくれたらしい。メディア網が広くて、本当助かったよ」
夕城プロは、安堵しながら珈琲をすする
USAのあちこちには、今回の空翔宿星のツアーの宣伝ポスターが貼ってあった
それを見て、翼宿や柳宿の容姿に見に覚えがある人が多かったのだろう
翼宿と柳宿の部屋の中
2人は、いた
翼宿は、変わらぬ表情で煙草を吸っている
「腕・・・、平気?」
柳宿が向かい合って座り、恐る恐る問い掛ける
「こんくらい、平気や」
「本当、危ない・・・。USAの街って・・・、何が起こるか分からないね」
「あぁ。ナメてかかっとったなぁ」
それでも、景色はこんなに綺麗で
「気をつけろや。その・・・、一人になる時は」
「え?」
「もう少し、自分の顔、鏡で見てみぃや」
「へ???」
「綺麗・・・なんやからな」
!?
今、彼は何と言った?
自分の事を・・・「綺麗」って?
たちまち、柳宿の顔は真っ赤になった
それに気づいたのか、翼宿もほんのり頬を染める
その場に、沈黙が流れる
「あの・・・」
「何でやろな」
「え・・・?」
「お前にいなくなられる思たら・・・、頭真っ白になって」
「・・・・・・」
「気づけば、必死で探しとって」
「・・・翼宿」
(何?何なの?何が言いたいの?翼宿・・・)
「ねぇ・・・」
「ん?」
「今、聞いちゃ・・・駄目?」
「何を?」
「返事・・・」
その言葉に、翼宿はハッとした
その瞬間、部屋の中は時計の秒針の音だけになった
(今なら、聞ける・・・?)
トントン
静寂を破った音は、ノックをする音
「翼宿?」
夕城プロの声だった
「Mr.MICHEALから、話があるそうだ」
2人は、顔を見合わせた
トントン
『入りなさい』
英語で、返事が聞こえ、翼宿は恐る恐る中へ入った
『やぁ、翼宿。初めまして。[GROBAL MUSIC]のMICHEALです』
隣にいた通訳が、日本語に変え、マイケルは握手を求めた
渋々、右手を差し出す
『まぁ、座りなさい』
ソファを勧められ、腰をかける
『今回は・・・、柳宿君の事で、色々大変だったね』
「・・・はい。でも、もう大丈夫です。ご心配、おかけしました」
通訳が、翼宿の日本語を英語に変えて、マイケルに伝える
『明後日のツアーに支障が出なくて、安心したよ。私も、とても楽しみにしているよ』
「ありがとうございます・・・」
『君だけ、突然に呼び出して悪かったね。実は・・・、君に折り入って提案があってね』
「はい・・・?」
『是非、このままアメリカに残って、私の元で音楽活動をしてくれないだろうか?』
夢が叶う言葉
しかし
仲間との別れを意味する
その言葉
愛瞳が、涙声でホテルのロビーに駆け込んできた
「どうしよう・・・柳宿が!!」
「落ち着いて。何処でいなくなった?」
鬼宿が、冷静に尋ねた
「[LUNA]って喫茶店の前で・・・あたしが、夕城プロに電話しようと思って、その場離れた隙に・・・」
「駄目だ。出ねぇよ」
夕城プロは、さっきから柳宿の携帯に電話をしているようだが、彼女は出ない
「くそ・・・俺たちじゃ、右も左も分からねぇ・・・」
「[LUNA]て、喫茶店やな?愛瞳」
「え・・・えぇ」
「こっから、そう遠くない筈や。そこら探してみるしかあらへんやろ」
地図を確認して、翼宿は鬼宿に言う
「・・・危険や。こんなトコで、チンピラなんぞに捕まったりしたら」
その表情には確かに焦りが見える事が、鬼宿にはすぐ分かった
『翼宿が寝ないんだったら、あたしも寝ない!!』
いつもいつも甘えてくるあの妹の顔が咄嗟に浮かんだ
「チッ!!」
翼宿は、駆け出した
「翼宿!!・・・しょうがない。俺も探します!!夕城プロ!!何か分かったら、すぐに教えてください!!」
続いて、鬼宿も駆け出した
ピチャーン
冷たい雫が、柳宿の頬に落ちた
その冷たさに、柳宿は目を覚ました
(ここは・・・?)
見に覚えのない地下室
(どうしたんだっけ)
記憶にあるのは、後ろから誰かに口を塞がれて、それから覚えていない
(これって・・・、誘拐・・・?)
柳宿の頭が混乱した
(どうしよう・・・ここ、アメリカよね・・・?携帯も圏外だし・・・繋がらないよ。明後日は、ツアー本番なのに)
柳宿の中に、不安が生まれる
その時、何やら奥の部屋で話し声が聞こえる
外国人の英語
何を言っているのか、聞き取れない
『Your call is not accept...』
「くそっ!!」
相変わらず流れてくる外国人のアナウンスに、翼宿は乱暴に携帯の通話ボタンを切った
(こんなトコで、無駄に動き回っても無駄や・・・。何か手がかりがあれば・・・)
「すみません・・・」
突如、後ろから声をかけられた
振り返ると、丁度自分と同い年くらいの男女2人組だった
「あの・・・。もしかして、「空翔宿星」の翼宿さんじゃないですか?」
「せやけど・・・」
「やっぱり・・・。あの、私たち、そこの[LUNA]って喫茶店でお茶してたんですけど・・・、同じメンバーの柳宿さんが来てたんですよ。それで・・・何だか喫茶店の外で誰かに連れて行かれたのを見た気がして・・・」
「ホンマか!?どっち、行ったんや!?」
「確か・・・。あっちです。私たち、アメリカで暮らしてるんですけど・・・、最近日本人女性を誘拐するグループがいるってニュースが出回っていて・・・、もし本人だったら、心配で・・・」
「おおきに!!助かったわ!!」
情報を知っているのが、日本人でよかった
翼宿は、喫茶店[LUNA]の前を通り過ぎて、犯人グループが向かったであろう方向へと走った
「--------------------」
さすがに現場外国人の英語の速さに、柳宿の耳が追いつく筈もなく
一体、何が話し合われているのかまったく柳宿には理解が出来なかった
(あたし、殺されるのかしら・・・?嫌よぉ・・・。こんな見ず知らずの国で殺されるなんて・・・。大体、まだ・・・)
『その言葉、「空翔宿星」が成功したら、もう一回聞かせてくれや』
(まだ、返事貰ってないじゃない・・・)
柳宿の瞳の端に、涙が滲んだ
その時
バン
扉が開いて、外国人数名がこちらを見て笑っていた
翼宿が、辿り着いたそこは、バーやらクラブが並んだ小さな下町のような場所だった
夕闇に包まれて、そこだけが不気味に暗い
(この中の・・・何処に柳宿が・・・)
こうしている間にも、柳宿は・・・
「くそっ!!」
翼宿は、拳を壁にたたきつけた
「柳宿っ・・・」
何処にいるんだ
「Excuse me?」
顔をあげると外国人
「Your partner is...」
続きは聞かないで、翼宿はその外人の指差す地下道への階段を駆け下りた
「She is very beautiful. I want her.」
「Stop. I found her first. I should go.」
何となく
何となくだが、分かる
彼らが何を言っているのか
恐らく、自分はこれから・・・
壁に追い詰められた
3人の嫌らしい男達が、こちらに向かってくる
(ちょっとぉ・・・、冗談じゃないわよ・・・)
言葉も通じない
電話も通じない
なす術もない
一人に、手首を掴まれた
(翼宿ぃ・・・)
バン
音のした方向に、皆が振り返る
柳宿も、ゆっくりと目を開けた
「柳宿を・・・、離せ・・・」
汗びっしょりで、息切れをしている翼宿
「たすき・・・」
「Who is he?」
「I don't know. But, I hate man who prevent us.」
男の中の一人が、ナイフを持って翼宿を睨みつける
「Kill you!!!!」
「翼宿!!」
翼宿は、そのナイフをかわすと、相手の腹に一発お見舞いした
続けて、襲ってきた男の頬を殴り、そして、最後の男には蹴りをお見舞いした
あっという間に、男達は倒れた
「翼宿・・・翼宿!!」
「お前・・・、行けるか!?」
翼宿は、すぐさま柳宿に駆け寄った
「翼宿!!腕・・・血が!!」
かわせなかったようだ
翼宿の右腕が血で滲んでいる
「馬鹿!!無茶・・・しないでよぉ・・・」
翼宿は、柳宿を抱きしめた
「よかった・・・。無事で・・・」
「翼宿・・・」
知らない町を駆けずり回って、自分を探してくれたのか
翼宿の優しさに、また涙が溢れた
「警察には、連絡した。もうじき、来る筈や」
「ツアーは、予定通り・・・?」
「あぁ。決行だ」
「ツアー当日じゃなくて、本当よかったすねぇ」
ホテルのロビーで、スタッフがミーティングをしていた
無事に、翼宿と柳宿を保護し、ほっと一息ついたところだ
「どうやら、見知らぬ外人が翼宿に柳宿の場所を教えてくれたらしい。メディア網が広くて、本当助かったよ」
夕城プロは、安堵しながら珈琲をすする
USAのあちこちには、今回の空翔宿星のツアーの宣伝ポスターが貼ってあった
それを見て、翼宿や柳宿の容姿に見に覚えがある人が多かったのだろう
翼宿と柳宿の部屋の中
2人は、いた
翼宿は、変わらぬ表情で煙草を吸っている
「腕・・・、平気?」
柳宿が向かい合って座り、恐る恐る問い掛ける
「こんくらい、平気や」
「本当、危ない・・・。USAの街って・・・、何が起こるか分からないね」
「あぁ。ナメてかかっとったなぁ」
それでも、景色はこんなに綺麗で
「気をつけろや。その・・・、一人になる時は」
「え?」
「もう少し、自分の顔、鏡で見てみぃや」
「へ???」
「綺麗・・・なんやからな」
!?
今、彼は何と言った?
自分の事を・・・「綺麗」って?
たちまち、柳宿の顔は真っ赤になった
それに気づいたのか、翼宿もほんのり頬を染める
その場に、沈黙が流れる
「あの・・・」
「何でやろな」
「え・・・?」
「お前にいなくなられる思たら・・・、頭真っ白になって」
「・・・・・・」
「気づけば、必死で探しとって」
「・・・翼宿」
(何?何なの?何が言いたいの?翼宿・・・)
「ねぇ・・・」
「ん?」
「今、聞いちゃ・・・駄目?」
「何を?」
「返事・・・」
その言葉に、翼宿はハッとした
その瞬間、部屋の中は時計の秒針の音だけになった
(今なら、聞ける・・・?)
トントン
静寂を破った音は、ノックをする音
「翼宿?」
夕城プロの声だった
「Mr.MICHEALから、話があるそうだ」
2人は、顔を見合わせた
トントン
『入りなさい』
英語で、返事が聞こえ、翼宿は恐る恐る中へ入った
『やぁ、翼宿。初めまして。[GROBAL MUSIC]のMICHEALです』
隣にいた通訳が、日本語に変え、マイケルは握手を求めた
渋々、右手を差し出す
『まぁ、座りなさい』
ソファを勧められ、腰をかける
『今回は・・・、柳宿君の事で、色々大変だったね』
「・・・はい。でも、もう大丈夫です。ご心配、おかけしました」
通訳が、翼宿の日本語を英語に変えて、マイケルに伝える
『明後日のツアーに支障が出なくて、安心したよ。私も、とても楽しみにしているよ』
「ありがとうございます・・・」
『君だけ、突然に呼び出して悪かったね。実は・・・、君に折り入って提案があってね』
「はい・・・?」
『是非、このままアメリカに残って、私の元で音楽活動をしてくれないだろうか?』
夢が叶う言葉
しかし
仲間との別れを意味する
その言葉