Flying Stars

「Hey!!KEISUKE!!」
スタジオで練習をする「空翔宿星」を見ていた夕城プロにそんな言葉がかけられた
「Oh!Mr.MICHEAL!!」
夕城プロは、声をかけてきたマイケルという音楽プロデューサーと片言の外国語で言葉を交わした
「Are they your management group?(彼らが、君の指揮するグループかい?)』
「いえーす、いえすいえす!!いえす、ぜいあー!!」
それから、次は通訳に外国語を任せる事になるのだった・・・

「あれが、ベース兼ボーカルの翼宿でぇ~・・・あれが、ドラムの鬼宿!!んで、キーボードの柳宿!!」
『ほぅ・・・。翼宿は、随分いい歌声をするね』
「そりゃあ!!うちの会社きっての最終兵器だからね!!彼は!!」
早速、名産品を褒められて、夕城プロは上機嫌だった

「お疲れ様でしたぁ!!」
3時間の練習を終えた3人
「いやいや!「空翔宿星」!!USAに来て、更なる飛躍を遂げたようだね!!」
「夕城プロ・・・外国語駄目っすね」
「気にしなぁい!!鬼宿君!!」
「ねぇねぇ!!柳宿!!」
そこで、柳宿と仲良しの女性スタッフの愛瞳が声をかけてきた
「ワシントン通りに、すっごい服が可愛いお店があったんだぁ!!この後、行ってみない???」
「本当に!?ねぇねぇ、夕城プロ!!行ってきてもいい!?」
「しょっ、しょうがないなぁ~・・・夕食までには、帰るんだぞ!!」
柳宿も、男だらけのグループなので、何かと女だけの時間が持てないだろうと思い、夕城プロは渋々了解した

「あ~あ。あんなにはしゃいじゃって・・・大丈夫か?柳宿」
翼宿の部屋に来ていた鬼宿は、窓から愛瞳とはしゃいでホテルを出て行く柳宿を見ていた
「まぁ、数少ないお休みさかいな」
翼宿も苦笑いで、煙草を吸う
鬼宿は、気になっていた
翼宿は、今、柳宿の事をどう思っているのか
過去の彼の恋愛の遍歴も特には聞いていないし
これから、どう2人が発展していくのかが何よりも見ものだった
「なぁ、翼宿」
「ん?」
「あの・・・さ。お前・・・、柳宿の事・・・」
その言葉で、翼宿はすぐに気づいたようだ
「何や。あいつ、言うとったん?」
ちょっと、照れ笑い
「ごめんな・・・。俺がわりぃんだ。あいつ・・・行動が分かりやすいっていうか・・・、よくからかってて」
「別に。気にしてへん」
「・・・それでさ、お前、どうするんだよ?」
「まだ、考えとらんなぁ」
翼宿の煙草の煙が立ち昇る
「あいつの事・・・、女として見た事あるか?」
「ん~・・・。難しい質問やな」
2人にとって、柳宿は妹だった
勿論、鬼宿も、柳宿をそう考えろというと中々難しい
それほど、身近にあった
だからこそ、翼宿だって、「女」にするのは難しい筈だ
「だけど、あいつは、お前に匹敵する女の力、持ってるかもしれないって・・・思った事はある」
「へぇ。そら、俺には分からんけど」
「とりあえず・・・、このツアーが終わったら・・・返事するんだろ?」
「そのつもりやけどな。せやけど、どんな形であれ、お前や夕城プロには迷惑かけんから、心配すな」
それは、YESなのか、NOなのか?
さすがの鬼宿も、翼宿のこの時の気持ちなど分かる筈はなかった

「はぁ~~~」
「どうしたの?柳宿!!恋?」
「分かる?愛瞳~」
一通り、買い物を終えた二人は、カフェで一休み
「分かるわよ。あんた、分かりやすいもん」
「そっかぁ・・・告白しちゃったんだよねぇ」
「まっぢ!!??」
愛瞳は、派手に珈琲カップを机にたたきつけた
「で!?」
「まだ、返事待ち~」
「そっかぁ・・・。だよね。普通は、そうだよね」
まだ、ツアーも始まってないのだ
「でもさぁ、よかったじゃん?海外に、こうして彼と来れてさ!!」
「しかも、相部屋・・・」
「そうなの!?もうバッチリじゃ~ん★」
「それでも、嫌がらないで一緒にいてくれるトコが・・・いいトコなんだけど」
「そこが好きなんでしょv」
唐突な質問に、黙って頷く
「また、彼をどこぞの会社に持ってかれないように、気をつけないとね」
「そうだけど・・・、いずれはさ・・・、来るんじゃないかな。そういう時が」
「え・・・?」
「あたし、分かってたよ。今日、来てた音楽会社の人たちも、みんな翼宿ばっかり見てた」
「・・・・・・」
「また、お声がかかる日も、近いんじゃないかなぁって事よ」
「でも・・・、そうなったら、あんた・・・」
「その時は、応援するしかないわよ。しょうがないじゃない?」
恋愛より、仕事優先
恐らく、これからもその考えは変わらないだろう
彼と結ばれたとしたって、普通のカップルのように暮らせる訳ではない
それは、告白したときから、誰よりも柳宿が分かっていた

日が傾きかけた頃、2人はカフェを出た
「あれ?夕城プロから、着信かかってる」
「嘘?」
「まだ、夕飯前じゃない!!まぁ、無理もないか・・・。ちょっと待ってて?電波入りにくいから、裏でかけてくるわ」
「うん」
そのまま、愛瞳は、柳宿の傍から離れた

Pllllllll
「何だよ、愛瞳~?さっき、電話受けただろ?悪かったって。俺も心配になって・・・」
「違うの、夕城プロ!!柳宿が・・・・・・・・・柳宿が、いないの!!!!!!!」
「え・・・?」

夕城プロへ、愛瞳からの2度目の着信
それは、柳宿の行方不明を知らせる着信だった
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