Trick or Treat?

「いつまで隠れてるつもりや・・・?」
「・・・・・」
「さっさと出てきたらどうや?男やのにみっともないと思わへんのか?」
「さすがだな・・・。悪魔としての勘はまだ残っているようだな・・・」
物陰から出てきたフィアナと互い背中を向けて話した
「・・・フィアナ。えぇ加減俺の元から消えてくれ・・・。俺はお前との契約は切る・・・」
「まさかお前あの女子を性懲りも無く好きになったのでは無いのか?」
「・・・・」
「止めろ。また裏切られるぞ。それこそお前の心の傷が深くなる・・・」
「黙れ。裏切られてもお前らに尽くす方がよっぽどお断りや」
「そこまで正気を保てるか。ならば・・・」
二人が一斉に振り向いた

「死ぬがいい」

ゴロゴロピカーッ
雷鳴がすぐ近くで鳴り響いた
「きゃああああ」
「先生!俺達はあの雷を止める魔法は使えないのかよ!!」
「いけません・・・。自然に逆らう事は魔法を使ってでも不可能なのです・・・」
魔法学校の教室でもざわめきが止まなかった
「どうしたんだろうね。さっきまで良い天気だったのに・・・」
「何だか嫌な予感がするわよね・・・」
ヌリコとホウキも心配そうに窓越しから空を見上げる
「はいはい!皆さん静かにして!今は自習の時間でしょう?」
「はーい・・・」
ヌリコも仕方なく黒板に目を向けようとして
凍りついた
その雷雲にはあのフィアナが浮かんでいたのだ

『タスキは我が責任を持って処分する・・・。お前も来たくば来い・・・』

そう口が告げた
「フィアナ・・・!!」
ヌリコは急いで椅子から立ち上がると横に立てかけていた箒を取った
「ヌリコさん?何処へ・・・!?」
豪雨が叩きつける街の空をヌリコは一気に飛び上がった

「来るぞ・・・。あの女も相当馬鹿だ。殺されにやってくるとは・・・」
フィアナの呟きが上空に響いてた

「タスキ!!」
ヌリコが扉を勢いよく開けた
その教会は森の一部の様にどす黒く変色していて、辿り着くのに苦労した
やはり内部も一面真っ黒だった
「タスキ!!返事して!!」
一歩踏み込んだ途端背後の扉が勢いよく閉ざされた
途端に中心がぼうっと明るくなった
そこにはあの憎きフィアナと
蔓に全身を絡めとられぐったりしているタスキ
「タスキ!!あんたタスキに何したのよ!!」
「何ってちょっと電磁波を五発程お見舞いしてやったのさ。今までのお仕置きの為にね・・・」
「五発・・・!!」
普通の人間ならば一発でも死んでしまうのに、全身ほぼ黒焦げ状態のタスキに思わずヌリコは口を押さえた
「酷い・・・!!」
「これも全てお前の責任だ。タスキを神の道へと引きずり込んだお前の責任なんだよ・・・」
「・・・こうしてママとパパも殺したのね・・・」
鮮やかに蘇る幼少の記憶
「ほう。あの小娘がお前だったのか?」
「こんな事して何の得が有るのよ!!有能な人間を殺して無能な人間だけ生き残るこんなやり方の何処が・・・!!」
「ヌリ・・・コ・・・」
そこに微力ながら息があったタスキが目覚めた
「タスキ!!!」
「逃げ・・・ろ・・・。俺は・・・、えぇから・・・」
「何言ってるのよ!!あんたを護るって約束したでしょ!?」
懐から杖を取り出し構えると
「こいつを倒さないとこれからもたくさんの人々が泣くわ!!あたしと同じように!!」
と、フィアナを睨みつけた
「ほう?そんなおもちゃで何が出来ると言うのだね?」
「うっさいわね!!こんな物でも役立つのよ!!」
そう言うとヌリコは杖を頭上に掲げた

『カミヨ、ワレニヒノチカラヲアタエヨ。コノヨニワザワイヲモタラスモノヲケシサリタマエ・・・』

呪文にフィアナの唇の端が持ち上がったのをタスキは見た
「ヌリコ!!止めろ!!」
『火(ホ)!!』
もう呪文は唱え終わっていた
フィアナは持っていた鎌でその炎を全て吹き飛ばしてヌリコに千倍にして返した
「ヌリコ!!!」
避け切れない
怖くて足が動かない
ゴオオオオオオオッ
それは一瞬の出来事だった
自分の上に覆い被さる大きな真っ黒な身体
小さい頃からずっと側に居た
頼りないけどとても大きくて優しい存在
静かに自分の上に倒れこんだ
周りには炎がメラメラとヌリコとその人物を小さく取り囲んでいた
フィアナもタスキも呆気に取られていた
「兄・・・貴・・・」
その名前を呼んだ
「ヌリコ・・・。大丈夫かい・・・?」
「何言って・・・」
「よかった・・・。君に・・・、いつか詫びたかった・・・。こうして・・・、詫びれて・・・、嬉しいよ・・・」
「兄貴!!駄目!!喋っちゃ駄目!!」
大きな身体を横たえた
「両親を護れなかったのもお前が死にそうな思いをしたのも・・・、全部僕のせいだった・・・。だから・・・今度こそ大切な妹を・・・護りたかった・・・」
「兄貴・・・」
ロコウの大きな手が妹の頬を伝う涙を拭った
「これからはばあやを護ってくれな・・・。そして・・・、タスキ君と・・・幸せに・・・」

ボクハイツモキミノソバニイルカラ

そう声が響かない口が動いた様な気がした
「兄貴・・・?」
安らかな寝顔
「兄貴・・・」
何度も名前を呼んだ
動かない人形を揺さぶって
「兄貴!!嫌だよ!!あたしを一人にしないで!!兄貴!!」
頼りなかったけど、その優しさが大好きだった
いつも甘えていられた
大好きだった自分の兄貴
タタカッテクレ
兄貴の声が天から聞こえたような気がした
導かれるようにヌリコは涙を拭いた
そして立ち上がった
そして相手に告げた

「あたしは・・・、あんたを倒す・・・」

その瞳には限りない勇者の輝き
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